女嫌いの俺が女に転生した件。
262話 絶品料理
浴衣に着替えて部屋に帰ると、リグとイザナギは既に帰ってきていた。
「リグ達も浴衣なのか」
「ああ、服が無かったからな」
従業員さん達が皆綺麗にしてくれてるのだろう。魔王と友達だからってそこまでしてもらわなくてもいいのにな。有難いことだ。
帯は少しキツめに締めているので、落ちてしまう事はない。
しかし足元はヒラヒラしているので、しっかり抑えて座る。
「はぁ〜……なんかお腹空いたな」
「そうだね。そろそろ夕食かも」
「きっと豪華なお食事が来るんでしょうね……」
エリフォラが涎を拭きながら、夕食を妄想している。エリフォラなら妄想をオカズに米を食べれるかもしれないな。
──コンコン
「失礼します」
部屋の扉がノックされて、1人の従業員が現れた。
「夕食を持って参りました」
すると、背後から沢山の料理が乗った器を持って、数人の女性が入ってきた。
器の上を見ると、魚の切り身のようだ。醤油ではないが、何かの液体も小さな器に入っている。
それらを人数分テーブルの上に置いた後、従業員達は一礼をして部屋から出ていった。
「うわぁ〜……海鮮料理だ」
こんなに豪華な料理を食べるのは人生で初めてだ。本当にこんなのがタダ? セルフィリアに感謝しないとな。
「た、食べていいのかな……」
「良いんじゃないか? 食べよう」
リグが早速箸を手に取った。
それに続いて、エリフォラとアリスもすぐに箸を取った。
「アリスは……箸持てるよね」
「うん。食べよ?」
そ、そうだな。よし……何から手をつけていいか分からない。
とりあえず箸を持って、沢山並んだ料理を見渡す。
「僕が取り分けてあげようか?」
「ん、いや、大丈夫」
どうしよう。こんなに色んな料理があると、好き嫌いしないで全部食べなきゃいけないような気がしてならない。
あの緑のエビのような物は……不味そうだ。しかし、エリフォラは当たり前のように剥いて、中身をパクリと食べている。
俺も恐る恐る、緑のエビを手に取る。
硬いのか柔らかいのかよく分からない感触だが、思い切って剥くと、美味しそうな白い身が現れた。
「っ……あむっ」
醤油のような液体に少し漬けて、一口で食べる。
「っ! おいひい!」
「ですよね! 後1つしかありませんが、どうします!?」
食べたい……が、他の料理も美味しそうだ。ここはエリフォラに譲ろう。
「食べていいよ」
「やったぁっっ!!」
敬語を崩し、エリフォラはどんどん手を伸ばして食べていった。
「ね、クロア。これお酒だよ」
「あぁ……お酒苦手なんだよな」
サタナがお酒を酒器に注ぎながら、話しかけてきた。
「その酒は弱い酒だから大丈夫だぞ」
リグが言うなら大丈夫か。
「じゃあ少しだけ飲もうかな」
そうして、俺もお酒を飲むことにした。
◆◇◆◇◆
「まだある〜? ……あ〜あったぁ」
「あるよ〜」
弱いお酒だというのに、クロアとサタナはあっという間に酔っ払ってしまった。
俺とイザナギは全然大丈夫なのに、2人はお酒に弱すぎないか?
「あんまり飲みすぎるなよ。また気持ち悪いって言って吐くぞ」
「だいじょ〜ぶだよ〜、弱いお酒だもん」
どうやら自分が酔っ払っているという自覚が、クロアには無いらしい。
「はぁ……」
「相棒。この状況、最高だとは思わないか?」
「はぁ? お前はまた何を言い出すんだ」
イザナギの言葉を聞くとロクな事がない。俺はゆっくり食事を続けた。
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