女嫌いの俺が女に転生した件。
259話 老後の趣味
「なぁリグ、手握ってもいいか?」
「い、いいけど。珍しいな」
ただ単に手を温めるのが目的なんだけどな。たまにはこういうのも良いだろう。
右手をリグと繋いだ。
後ろでは、エリフォラとアリスが手を繋いで歩いていた。イザナギはサタナと一緒に歩いてきている。二人も手を繋げば良いのにな。
「リグの手暖かいな」
「まあ獣人族だしな」
獣は体温の調節が上手だからな。俺達人間と違って……。
左手で炎を生み出してみるが、小さなサイズを歩きながら出したところで温まるはずがない。
ちゃんと身体を温めるには立ち止まった方が良いようだ。
「はぁ……」
息で白い煙ができるのを見ながら、歩き続けた。
◆◇◆◇◆
気づけば、周りには建物が並び始めていた。
どうやら街に到着したらしい。
「もうすぐ到着?」
「だな。大丈夫か?」
いままで全然心配してこなかったのに、今更心配するのは遅いな。
「大丈夫だけど……左手だけ寒いから、手交代な」
俺はリグの右側に移動して、左手で手を繋ぐ。片手だけ繋いでいてももう片方は冷えてしまうからだ。
まだもう少し城まで距離がある。頑張ろう。
◆◇◆◇◆
そしてやっと、城の入り口が見えた。
中には何人かの人が待機しているようだ。
俺達は一直線に城の方へ向かい、メイドの人達と待っていたセルフィリアの元に到着した。
「お疲れ様〜、寒かったでしょ?」
「すっっごい寒かった」
「あはは、口に出すと余計に寒くなるよ」
俺はあっさりと罠にハメられてしまった……。
って、そんな事はどうでもいい。
「私達は何をしたらいいんだ?」
「今から、そこにある種を畑に埋めていく。それだけでいいよ」
メイドさん達が、結構な数の種を持っていた。
「私も手伝うから、皆で頑張ろうね」
セルフィリアも手伝うのなら、俺も頑張るしかないな。
気合を入れて作業に取り掛かることにした。
◆◇◆◇◆
種の入った袋を片手に、城の庭にある畑に種を埋めていく。
寒さで土が凍っている為、最初はなかなか大変な作業だった。が、慣れてくるとサクサクと進めることができた。
それに、基本的にしゃがんでの作業だ。近くに暖かい火を出せば身体を温めつつ作業ができる。
案外楽な仕事かもな。
「調子どう〜?」
サタナが正面にやってきた。
「意外と楽しくなってきたよ」
「あ、分かる。寒くて馬鹿になったのかな?」
それ……かなり失礼だと思うぞ。
しかし、こういう作業をしていると小学生の頃を思い出す。理科の授業で種を植えたりして、それを観察。
成長した花なんかを絵に描いて先生に見せる。
今考えても、あんな老後の趣味みたいな授業は役に立たない。いや、歳とって仕事が無くなったらああいうのもいいかもしれないけどな。
そんな事を考えながら、種を植え続ける。
◆◇◆◇◆
皆寒そうだ。
俺は獣人族だから、寒さには強い。他の皆の分まで頑張らないとな。
「よっ相棒」
「なんだ?」
イザナギが近くにやってきた。同じ場所にいでも効率悪そうだが。
「サタナちゃんとエリフォラちゃん見てみろよ。特にサタナ」
「ああ、見たけど……なんなんだ?」
「胸が邪魔で大変そうな顔してるの、凄く良いよな」
胸が邪魔で……確かに、膝に胸が当たって邪魔そうだけども……。
「作業に集中しろ」
「こういう目の御褒美も大事なんだって。ほら、セルフィリアのお尻見てみろよ」
「……」
集中しなければならないのに、ついつい目線がそっちに行ってしまう。
セルフィリアの小さなお尻が、しゃがんだ事によってハッキリ形が分かる。
「っ……集中するぞ」
「じゃあクロアは見なくていいのか?」
クロア……? クロアは胸がないけど、どうなんだ?
ちらりとクロアが居た方を見る。
「さっきから周りをチラチラ見てないで、集中しろエロ犬」
「あがっ」
いつの間にか背後に立っていたクロアに、頭を叩かれた。
「イザナギも。あまりリグに変な事させるな」
「ごめんよ〜」
つ、次こそはちゃんと集中するからな。
「クロア、一緒にあっちするか」
「そうだな」
クロアと共に、畑作業を続けていった。
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