女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

252話 祝杯をあげよう



 宝を抱えたまま野営地に転移した。


「……おおぉっ! 宝だ!」


 横になって怪我を治療している冒険者達と転移者達が宝に気づいた。


「クロアッ!」
「サ、サタナ!」


 元気そうなサタナが抱きしめてきたので、思わず両手から宝を落としてしまった。今俺の腕の中にも宝が居るんだけどな。


「よく倒せたねっ!」
「あ、ああ、2人の転移者が犠牲になって……ね。皆を回復させないといけないな」
「僕はもう大丈夫だから、しばらくゆっくりしていこうよ」


 とりあえず、傷付いた人達を回復してやった。


 治療する為に横になる敷布団のような物があるのだが、俺は疲れ果ててそこに倒れ込む。


「クロアさん! 本当にありがとう!」
「アンタには感謝しきれねぇよ」
「尊敬するよ」


 皆がやってきて、俺に感謝の言葉を述べたりしていた。が、俺がダンジョンのラスボスを倒せたのは仲間が居たからだ。皆のお陰と言っていい。


「帰ったら酒場でパァッとやらねぇか? クロアさんは酒は好きか?」
「ん、酒?」


 別に嫌いって事はないけど、男の人と酒飲むとろくな思い出がないからな……今回は信用できる人達だからいいけど、サタナはどうするのだろうか。


「僕も行くからさ、皆で乾杯しようよ!」
「うん、じゃあ私も行くよ」


 今日は皆で祝杯をあげよう。


◆◇◆◇◆


 それぞれに宝をあげた後、余った宝をどうにかして持って帰ろうとしたのだが、量が多すぎてとても持って帰れる量じゃない。
 少し残念だが、少しはここに置いて帰るとしよう。盗賊なんかが持って帰ってくれればいい。


 皆ギルドに帰っていて、残ったのは俺とサタナ。2人で少し話していると。


「よぉ、そこの姉ちゃん達。死にたくなけりゃその宝を寄越しな」


 まさに、今話していた盗賊達が姿を表した。なんて運が良いのだろうか。


「丁度良いところに来たな、じゃ私達は帰るか」
「そうだね」
「お、おい待て。宝はどうするんだ?」


 予想とは違うリアクションに、流石の盗賊達も驚いているようだ。


「宝はやるよ。じゃあな」


 俺達はそう言い残して、ギルドへ転移した。


◆◇◆◇◆


「あ、サタナさんとクロアさん! 早速凄い噂になってますよ!」


 ギルドに到着すると、すぐに受け付けの方に名前を呼ばれた。そのせいで更に注目が集まる。


「あれが戦姫を守る騎士クロアか」
「1人で戦ったんだってな」
「すげぇな……あの見た目からじゃ想像できねぇ」


 失礼な事をいう人もいるが、まあ見逃そう。


「おめでとうございます!」
「あ、ありがとうございます」
「僕は慣れっ子だけど、今日のダンジョンは難しかったなぁ」


 難しいというより、最後に突然現れたラスボスによる不意打ちでやられたもんな。あの時はビックリした。


「お宝はどうしました?」
「とりあえず持ってこれるだけ持ってきて、残りは盗賊にあげた」
「あ、あはは……まあいいです。お疲れ様でした」


 受け付けの女性は、深く頭を下げた。


◆◇◆◇◆


 その後、一時的にギルドに宝を預けた後。サタナと一緒に近くの酒場にやってきた。


「おっ、来た来た! 姫と騎士さん!」


 待ってましたとばかりに、冒険者と転移者達が椅子に座っていた。
 この世界では18歳から成人だが、転移者達はフルーツジュースを持っていた。


「クロア座ろ」
「ああ」


 空いていた席に座る。


「じゃあ1番強いお酒を二つ!」
「だ、大丈夫なのか……?」


 サタナが思い切った注文をして、目の前に匂いの強いお酒が運ばれてきた。サタナは酒が好きだからな。
 俺は大きなジョッキを持って、乾杯の準備をする。


「ダンジョン攻略を祝して! 今日は夜まで飲んで飲んで飲みまくるぞ〜っ!! 我らが戦姫と、最後まで戦い抜いた騎士の2人に乾杯!!」


 冒険者の1人が大声をあげて、長いお祭り騒ぎが始まった。

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