女嫌いの俺が女に転生した件。
238話 怖いお姉さん
皆がゆっくりと話せるタイミングになり、俺はクラウディアにべナードについて話し始めた……それもベリアストロに手を握られながら。
「うふふ」
「話しずらいなぁ……何から話したらいいんだ……?」
まず俺が死神の国の研究施設で監禁された事からか。
死神の国で経験した事や、べナードが殺された理由……いや、俺の手で殺した理由。ほとんどの事を、まずは分かりやすく話した。
「──って感じかな……」
「なるほど。べナードの本来の目的を消す代わりに、大罪者を国から消したということか」
クラウディアは、エリフォラを気づかって"本来の目的"と濁しながら話した。エリフォラとアリスは、難しい顔をして話を聞いている。
「……まあ、今回ばかりは相手が悪いな。死神は神の中でもかなり危険な存在だ。それが国を作っているとなると……そいつらが人類に敵意を持ち出した時、"大量の犠牲者"が出るだろう」
俺は思わず、ここにいる皆が死ぬことを想像してしまった。
「世界が滅びるよりはマシだ。これ以上深くは関わらない方が良いだろう」
「そう……か……」
クラウディアの雰囲気からして話はこれで終わりのようだ。
「で、こいつは誰なんだ? 知り合いか?」
クラウディアが、いつの間にか俺の後ろに座っていたイザナギを指した。
「イザナギだ。世界が滅びないようにゼウスが能力を封じてて、イザナミのお願いでこっちに来てる」
「ど、どうも。途中から来てました……」
イザナギはクラウディアに軽く挨拶をして、俺の耳に顔を近づけた。
「この怖いお姉さん誰……? 只者じゃないって事は分かるんだけど……」
「クラウディア。魔王だよ」
大勢の神様と契約を交わして異常な力を持ってるけど魔王だ。
「ま、魔王か……そか、ありがとう」
イザナギはクラウディアを見て頷いた後、真っ直ぐ姿勢を正した。
「魔王クラウディアよ。俺は偉い神様である」
「そうだな。それでどうかしたのか?」
「俺の手下になれ!」
「断る」
あっけなく断られた挙句、触れてもいないのにイザナギは風魔法でビンタを受けていた。
「ビンタなんて初めてされた……それも風で……」
頬を抑えながら悲しそうに呟くイザナギを無視して、俺は隣に座るベリアストロの方を向く。
「いつまで手を繋いでるんだ?」
「恥ずかしがらなくていいのよ。こうしてお互いに指を絡めて……ドキドキしない?」
ちょっと何言ってるか分からないけど、ベリアストロはいつも通り……って事でOKかな?
「皆、話すことが無くなったら俺から提案があるんだけど、話していいか?」
突然リグが手を挙げてそう言うと、他の皆は特に話すこともないのでリグの話を聞くことにした。
「提案というか、まあ思い出作りみたいな物なんだけど。ここにいる皆でさ、昼食も合わせて一緒に買い物に行かないか? 普段は買えないような物とか、お互いに服を買ったり……どうだ?」
皆で買い物か……悪くないんじゃないか? クラウディアとベリアストロも行くなら、それはそれで楽しい買い物になりそうだしな。
「俺は別に構わないぞ」
「私もクロアさんとデートができるのなら喜んで」
クラウディアとベリアストロからは了承が出て、買い物に行くことが決定した。
しかし、俺の両親のミリスとバルジは留守番をするらしい。楽しんでらっしゃい、だそうだ。
「アリスはどうする?」
「…………」
凄く考えている。今アリスの頭の中には、買い物をとるか睡眠をとるかの激しい葛藤が始まっているのだろう。
「……行く」
「よし、じゃあ皆と一緒に準備しよっか」
俺、リグ、アリス、サタナ、エリフォラ、イザナギ、クラウディア、ベリアストロ。合計8人で買い物に行くことになり、皆が準備を終わらせるまで少し時間が経った。
準備の出来た人からリビングに集まるのだが、基本的に準備は男がしている。リグとイザナギが荷物やお金を持つ為に大きなリュックなんかを持ってきている。
それに対し女子達は、護身用の剣を持つか持たないか。それだけだった。
リグとイザナギの役割は大変そうだし手伝ってやろうかと声をかけたのだが、男の意地で断られてしまった。
どうなっても知らないからな。
皆の準備が終わり、いよいよお店が多く並ぶ街の中心部に向かうことが決まる。
「迷子にならないようにちゃんと手を繋いで行くんだぞ。特にアリスとエリフォラ」
「ど、どうして私が入ってるんですか?」
エリフォラ迷子になりそうだもんな。
「クロア、出発の挨拶」
「えっ、私? あ、じゃあ……お買い物に……しゅっぱ〜つ」
突然リグに挨拶を頼まれたせいで、恥ずかしくなった。
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