女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

233話 戦姫サタナ



 サタナが作ったのは、野菜炒め。よく分からない液体がかけられていて、かなり美味しい。
 この液体が何なのか聞いてみたのだが、秘密だそうだ。サタナ特製ドレッシングのような物か。


「美味い……悔しい」


 女子力が欲しい。


「あぁっ!! なんで起こしてくれなかったんですか! 美味しい匂いがすると思ったら……」


 エリフォラが朝食の匂いに釣られてやってきた。


「ほら座って食べて。今からクロアに僕の自慢話を聞かせるんだから」
「サタナさんの自慢話は聞き飽きました」
「別にエリフォラに聞かせるためじゃないし〜!」


 サタナとエリフォラって仲悪いのか。……似たもの同士かな。


「聞かせて」
「何から話そうかな〜」


 すると、俺の隣に座るリグが。


「冒険者達と酒飲んで酔ったサタナが──」
「それは自慢できないっ!」
「ん? 気になる」


 酒飲んで酔ったサタナがどうなったのだろうか。サタナに笑顔を向けると、焦ったように手を動かして箸を落としたりしていた。


「ふふっ、無理に話さなくていいよ」
「あっ、ありがとうクロア」


 気になるけど、サタナがそこまで動揺するなら聞かない方が良いだろう。無理に聞いてもサタナが不快な思いをするだけだ。


「えっとね〜、他の冒険者に誘われて狩りを手伝った話からしようかな」
「え、サタナ1人で手伝ったのか?」
「うん。リグリフとエリフォラ役に立たないから」


 その言い方はないと思うけど……まあ、確かに神からするとリグは使えないよな。それと……エリフォラは今までべナードが戦っていたから、これからはエリフォラ自身の力で戦わないといけないし。


「その時は……確か6人男達と僕で、ダンジョンに潜ったんだ」
「ダンジョンって……」
「ダンジョンが作られる方法は分かってないんだけど、突然地下に続く穴ができるんだ。その奥にお金になる宝が沢山あるんだよ」


 へぇ〜……突然……ってことは、神か何者かによって作られてるんだろうけど、不思議で面白いな。


「それで、男6人を守りながら僕がズバズバッ! とダンジョンにいる魔物を倒して、最後にはお宝をほんの少し貰って帰る! カッコよくない?」
「きっとその6人の冒険者にとって、サタナは英雄だろうね」


 お宝が沢山あるって事は、そこに辿り着くまで大変なはず。それを簡単に進んでいって、最後の宝も沢山貰えるとなると最高に便利だ。


「それで僕、ギルドでは戦姫いくさひめサタナって呼ばれてるんだ」
「カッコイイなぁ……私なんて怪力のクロアだよ」


 今はもうそれすらも呼ばれないんだろうな。それの存在は忘れ去られている。


「でもな。サタナのやつ、ギルドでクロアの事を色々話してるんだよ」
「え? そうなの? ご馳走様」


 朝食を食べ終わって、サタナの話に集中する。


「クロアは僕よりも強いからね」
「サタナさんったら、「僕のご主人様はもっと強い」 って、手伝ってあげた冒険者達に言ってるんですよ」


 な、何か照れるなぁ……。


「戦姫様にそう言ってもらえて光栄です」
「今度クロアも一緒にさ、他の冒険者手伝おうよ。有名になれるよ」


 サタナは有名になる為に手伝っているのか。……でも、そんな生き方も楽しいかもしれないな。


「……そうだね。私もいつか冒険者として名を挙げて、有名になりたいな」
「おっ、クロアに目標ができた。ってことは、もう調子はバッチリみたいだな」


 そうだな。随分と余裕ができて先の事を考えれるようになった。


「でもしばらくはゆっくり休むとするよ」


 そして、食べ終わった皿を台所に持っていった後に寝室に戻る事にした。


「俺達は仕事に行くけど、1人で大丈夫か?」
「うん。お父さんとお母さんがいるから」
「じゃあおやすみ。遅くならない内に帰ってくる」


 リグ達はまだ朝食を食べているが、俺は寝室で眠りにつく。


 ああ、幸せだ。

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