女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

232話 平和な一日の始まり



 目を覚ました俺は、すぐに横で寝てるリグを起こしてアリスが生き返るのを喜びたいところだが、一旦起きて窓の外を見る。


 懐かしい街の景色。獣人も転移者も転生者も、仲良く暮らすこの国に、俺は帰ってきた。
 アリスが生き返ると知って余裕ができたのだろうか。どこか穏やかな気分だった。


 しかし、すぐにべナードを思い出してそんな気分も消え失せる。


「クロア……起きたのか……」
「おはよう」
「ああ、おはよう」


 目を覚ましたリグとおはようを言い合うと、サタナとエリフォラもモゾモゾしだした。そろそろ皆起きるか。


「リグ、夢でね……イザナミとイザナギに、アリスを生き返る事が出来るって言われた」
「っ……それ本当なのか?」
「うん。少し時間かかるっぽいんだけど、記憶のないアリスなら可能だって」


 そういうと、リグがゆっくり身体を起こしてニヤッと笑った。


「良かったじゃねぇか」


 そういいながら頭を撫でてくる。
 頭を撫でられると、自分はリグの物だ、っていう安心感でつい嬉しくなる。


「2人とも起きるの早いね〜……」


 サタナが眠そうに目を擦りながら、俺が使っていた枕を抱き寄せる。


「す〜〜〜っ……よし」
「よし、じゃないだろ……おはよう。今日はちょっと元気になったから、心配しなくていいからな」
「んふ〜、クロアが笑ってる。良かった良かった。じゃあ僕は朝食の準備してくるね」


 ん……? サタナが朝食の準備……?


「あ、驚いてるでしょ? 実はクロアが遠くに行ってる間に教えて貰ってたんだ」
「へ、へぇ〜……」


 この中で料理できないのって俺だけ……? それってちょっとまずくない?


「わ、私も……卵料理くらいなら……作れるからな、リグ」
「俺に言われても……でもまぁ、今度クロアのも食べてみたいな」
「ごめんなさい。目玉焼きしか作れません」


 意地貼ったことを素直に謝ると、リグとサタナが笑ってくれた。
 エリフォラがさっきから全然起きてこないのだが……大丈夫なのだろうか。


 サタナの隣、ベッドの一番端で壁側を向いて寝ているエリフォラ。ふと、嫌な予感がして身体を揺さぶる。


「エリフォラッ」
「ん〜……まだ眠いです……」
「……ほっ……」


 べナードが死んだんだから、エリフォラが死ぬ心配は無いんだ。俺は少し安心して、エリフォラをそのまま寝かせることにした。


 サタナが先にしたに降りて朝食を準備している間、俺はほんの少しだけ、久しぶりにリグに甘えることにした。甘えたい気分だった。


 寝ながらボーッとしているリグのお腹に、頭を乗せる。


「うっ……どうした?」
「……帰ってこれて嬉しい……」


 リグの匂いを感じながら、皆と平和な生活が送れることを幸せに思う。


「良かったな。俺もクロアが帰ってきてくれて嬉しい」
「撫でて」


 リグと会えない時間が長かった為、ついつい普段以上に甘えてしまう。でも、仕方ないよな? 愛する人には愛されたい。寂しい時こそ尚更だ。


「よし、起きるぞ」
「あっ……まあいいや」


 仕方なく俺も起きて、1階に降りた。エリフォラは寝せていても良いだろう。


「クロアおはよう」
「あ、お母さんとお父さんも早いね」
「クロアが帰ってきたんだもの。早起きは当然よ」


 サタナが1人で黙々と何かを焼いている。包丁もフライパンも自在に操れるようになったのか。凄いな。


「クロアは仕事、どうするんだ?」


 父親のバルジにそう言われて思い出す。そういえば、俺は冒険者として働いていたんだっけか。


「ごめん……数日はゆっくりしたいかも」
「大丈夫だ。サタナちゃんが優秀で、稼いだ金も余るくらいだからな」


 俺がいない間、ここを支えてくれていたのはサタナだったのか。


「サタナ、ありがとう」
「いいよいいよ」


 焼けた肌に、大きな胸。イヤらしい脚に完璧なボディを持つサタナ。学園でソフィの友人、ビリーに作ってもらったフェチ満載の身体。それからサタナが1人で生きた人間の体にしている。
 とても見た目からは想像できない程、高い女子力と優しさを持っている。それに僕っ子。異世界人達からは任期なのではないだろうか。


「サタナってギルドでの評判良いの?」
「ふふふ……朝食食べながら自慢話を聞かせるよ」


 ほぉ……それは楽しみだ。

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