女嫌いの俺が女に転生した件。
226話 あんた達はエスパーだよ
数日間放心状態だった俺は、1日1食しか食べずにボーッと過ごしていた。
そして今日、やっと精神を取り戻して1日2食食べれそうだ。
「次からは1人でするからな!」
「"分かったから怖い顔しないで"」
もう見られてもいいっていう気持ちが心の中に生まれてしまったせいで、トイレくらいならできるようになった。
昼食を食べた後、しばらく横になっていると研究員が入ってきた。
すぐに起き上がって警戒するが、手には謎の機械を持っている。頭に装着するような機械だ。
「これは……?」
「"脳の動き方だったり、思考パターン。他にも君の中身について詳しく知るような機械だよ"」
ほえぇ〜、前から思ってたけど死神界って随分と科学技術進んでるんだな。
「"今日からそれを使って色々するから。まずは記念すべき1回目だ"」
「も、もうこれ着けるのか?」
「"着けてごらん"」
好奇心にそそられて、研究員に渡された機械を頭に装着する。
目元まで隠れるようになっていて、装着すると重みで頭がグラグラと動く。
「電源入れるからね〜」
研究員が俺の頭を抑えて、どこかにあるボタンをカチッと押した。
──ブゥン
「おぉ……」
まるで脳が振動したような音がして、つい声が出る。
「"ブンという音が聞こえたら装着成功だ。聞こえたかな?"」
「あ、ああ聞こえた。周りには聞こえてないのか?」
「"脳に直接影響を与えてるから聞こえないよ"」
こりゃ面白い。真っ暗で何も見えないし、何か起きた様子もないけど、これを使えばVRゲームも進化するのではないだろうか。
「"じゃあ早速だけど、いくつか質問するよ"」
「ああ。答えられる範囲で答えていいよな」
「"皆と協力して一つの物事を達成しようとしている時、仲間との感情的なコミュニケーションが大切か、効率的に物事を終わらせる方が大切か。どっち"」
ん〜……この場合は後者だな。仲間とのコミュニケーションを大切にしていても、達成しなければならない物事が進まなければ意味が無い。
効率的に仕事を分担して、いち早く終わらせるな。
「効率的に物事を終わらせる方が大切」
「"……ほお"」
研究員は、興味深そうに声を上げた。
「どうした?」
「"いや、気にするな。質問を続けるよ"」
こうして質問に答えることで、研究員は俺について何か分かってきているのだろうか。気になる。
「"暗い夜の道、街灯の下で誰かが泣いている。その人はどんな理由で泣いている?"」
んなもん分かる訳ないだろ。エスパーじゃあるまいし、どんな理由で泣いてるのか答えようがない。
「"この質問に答えはない。ただ、君の答えによって分かってくる事がある。答えてくれ"」
「ん〜……」
そういう事なら……どうしようか。
暗い夜に街灯の下で、だろ? 普通外に出てまで泣く人はいない。つまり、どこにも行く宛のない人物?
「……火事で家と家族を失った?」
これは流石にないだろうけど。
「"ふむふむ"」
研究員は面白そうに声を出していた。これだけで何か分かるのなら、それこそエスパーだよあんた達は。
「"とりあえず、分かった事の一部を教えるよ"」
「ああ、気になる」
「"まず、君は基本的には男性的な思考だ。それなのに女性的な感情も持ち合わせていて、面白い考え方をしている"」
お、おぉ! 凄い!
「"ほら、今みたいに分かりやすく驚いているところなんかは女性的な感情だ。君はそれらが合わさって、自分に素直になれない時なんかもあったんじゃないか?"」
確かに素直になれない時はあったな。
リグを好きになった時、本来男だった俺が男と付き合うなんて。って思ったけど、どうしても好きという気持ちが強くて今じゃ結婚までしてる。
「当たってる当たってる。凄いね」
「"うんうん。試作段階の機械だけど、良い感じに使えたよ。ありがとう"」
「外すよ〜」
部屋にいた研究員に機械を外されて、また白い空間が目に入ってくる。
「今度はいつ使うんだ? これ」
きっと今の俺は目をキラキラさせているだろう。楽しすぎる。
「"しばらく今回の結果を元に調べていくから、数日はお休みかな"」
「そ、そうか。じゃあ今日他にする事は?」
「"今日はもう特にないね。こっちも忙しいし……あ、暇なら積み木でも送るからそれで遊んでてよ"」
子供じゃあるまいし、そんな玩具で暇が潰せるとでも? でもまあ仕方ない。
「分かった。じゃあ今日はゆっくりしてていい?」
「"ああ。お疲れさん"」
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