女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

214話 イザナミと協力



「ま、簡単にできる技術的な訓練はこれで終わりだ」
「ふぅ〜……なんか強くなった気がする」


 色んな役に立つ技術を教わったが、まだ難しい技術や魔法での技術も教える予定らしい。


「本当にありがとう」
「ま、まあ当然の事をしたまでよ。嫁になってもいいんだぞ」
「それは無いかな」


 家に戻りながら、いつものようにイザナギの露骨な誘いを受けるが綺麗に断る。
 それなりに身体を動かして、普段使わない部分の筋肉も鍛えられた。後の時間はゆっくり休もう。


「お茶飲む?」
「あ、頼む」
「私は上で寝てる」
「ああ、すぐに行くよ」


 アリスはお茶を飲まずに、すぐに二階の寝室へ向かった。
 二人分のお茶を用意して、椅子に座る。


「あぁ〜疲れた」
「どうだ? 休めそうか?」
「眠れば休めるよ」


 ……そうか。休みっていうのは忙しい時間があるから作れる訳で、何もしないで休むって事はできないんだ。
 少し前の俺は無理矢理休もうとしていたけど、訓練をした後の休みが一番大事なんだな。


「……イザナギってもしかして、意外と策士?」
「何が? 俺普段何も考えてないけど」


 まあそうだよな。


「知ってる」
「なんだよ〜俺が何かしたか〜?」
「良い事を気づかせてくれたよ」
「……?」


 イザナギはよく分からずに首を傾げた。
 俺はコップに残っていたお茶を一気に飲み干し、テーブルの上にトンと置いて立ち上がる。


「寝室で休むけど、イザナギはどうする?」
「ん〜、じゃあ一旦帰るとするか。折角の休みを邪魔する訳にもいかないしな」
「気使わなくていいのに。それじゃ、また明日?」
「ああ。明日も来るよ。またな」


 イザナギと別れて、すぐに寝室に向かった。


「休むぞ〜っ!!」


 アリスが寝ているベッドに飛び込む。


「クロア調子良い? もしかして、イザナギの事好き?」
「友達として好きだよ。イザナギは良い奴だし、技術だけじゃなく大事なことを教えてくれた」
「……良かった。クロアが元気じゃないと私も元気になれない」


 そうなのか……悪いな。
 アリスの頭を撫でて、天井を見上げる。
 この前壊した天井は未だに穴が開いたままだ。そろそろ修理しないとな。


「寝るか」
「うん」


 今からする事なんて特にないし、疲れた身体を癒す為に眠ることにした。


◆◇◆◇◆


「クロアちゃ〜ん!」


 ……この高い声は……イザナミか。


「お前のせいで寝ることが嫌になりそうだ」
「そんなこと言わないでぇ……っと、さっきお兄ちゃんも帰ってきて嬉しそうだったよ。何したの?」


 こ、怖い怖い。目が怖い。


「何って別に……訓練くらいしかしてないよ」
「ありがとうとか言ったでしょ。お兄ちゃんね、そういうの慣れてないからお礼言われるとすぐにドキッとしちゃうの。好感度上がっちゃうよ?」


 ん〜まあいいと思うけど。このままだとイザナミに恨まれて殺されそうだ。


「安心しろって。イザナミはイザナギにとって唯一無二、大事な妹だ。二人みたいに本心で話しながら喧嘩なんて憧れるよ」
「そ、そう……? えへへ……私お兄ちゃんの妹だもん、当たり前だよぉ」


 イザナミの顔が一気に優しくなる。扱いが難しいな……。


「あ、でもね……お兄ちゃんいつまでもこっちの世界にいる事はできないんだって」
「……そうなのか?」


 まあ……そうなるのか。


「ゼウス絶対に許さない……」
「で、いつまでこっちの世界に?」
「えっとね……それは聞いてない。でもお兄ちゃんが真面目に世界の平和を守るようになったら、ゼウスも考えてくれるって」


 いつか元の世界に戻ってしまうのは寂しいな。


「クロアちゃんからも説得してよ。仕事してって」
「その言い方だとイザナギがニート……いや、ニートか。分かった」


 どうにかしてイザナギに働く意思を持たせて、この世界に留めてもらえるようにしよう。


「これが言いたくて来たんだよ。じゃあ明日よろしくね」
「ああ。さっさと寝させてくれ」


 やっと眠れそうだ。

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