女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

212話 優しい友達



 次の日の朝、少し早く目が覚めた俺はリビングに降りた。


 暖かいお茶を飲んで意識をはっきりさせ、また寝室に戻ろうとした時に丁度家の玄関がノックされた。
 寝癖を整えてすぐにむかう。


「はい〜」
「よっ、来たぞ」


 イザナギだ。
 こんな朝早くだというのに、いつもと変わらず元気そうなイザナギを見て少し安心する。


「ちょっと早くないか?」
「来ていきなり訓練するわけじゃない。ゆっくりしていこうと思ってな」


 とりあえず家に入れてリビングのソファに座らせる。


「今日調子はどうだ?」
「まあ普通かな。イザナギのお陰でよく眠れたよ」
「それは嬉しいなぁ」


 と、少し照れながらソファに深く座り直した。


「でも訓練ってどうするんだ? イザナギは能力とか封じられてるんだろ?」
「能力が使えなくても技術がある。それに言葉で感覚を伝える事もできる」


 言葉で伝えるのがどれだけ難しい事か分かっているのだろうか。


「クロアの為に、俺様一肌脱いじゃうぜ!」
「まあ、期待しておくよ。お茶飲む?」
「あっ、飲む」


 その後、イザナギにお茶を飲ませながら2人で適当に時間を潰した。
 イザナギに対して恋愛感情は生まれないものの、友人としては良いかもな。凄く優しいし、これからもっと仲良くなりたい。


 そういえば、イザナギよりもうるさいイザナミは何をしているのだろうか。


「そういや、イザナミは今何してるんだ?」
「あぁ〜あいつ。なんか『私からお兄ちゃんを奪うつもりなのかな』とか言いながらお前を監視してた」


 なにそれ怖い。


「イ、イザナミ〜見てるか〜? 私はイザナギには何の感情もないし今後持つ予定もないから、安心してくれ」


 今もどこからかあのゲームで監視しているであろうイザナミに、声をかけた。
 きっと聞いているだろう。


「あいつの事だし、『お兄ちゃんに魅力がないって言いたいの?』なんて怒り出しそうだな」
「大丈夫。イザナギには元から魅力の欠片もないだろ」
「じょ、冗談だよな?」
「冗談だよ」


 優しいってところは認めてる。それ以外は特にないけどな。


「ん……クロア〜?」
「あ、まだ寝ててもいいんだぞ」


 アリスが目を擦りながらリビングにやってきた。とりあえず俺の飲みかけのお茶を飲ませる。


「お、竜神アリスか。懐かしいな」
「……? 誰?」


 そうだった。アリスも一応神様だったんだな。


「イザナギだ。よろしく」
「……知らない。よろしく」


 アリスも起きた事だし、訓練でも始めようかな。


「訓練はどこでするんだ?」
「ん、今日はすぐ外の庭でやろう。咄嗟に使える護身術とか武器の奪い方を教えてやる」


 おぉ、いきなり良い感じの訓練内容だな。


「アリスも外に出ないか?」
「うん。皆外に出るなら私も」


 よし決まりだ。
 俺は寝室から剣を持ってきて、訓練の為に心の準備をした。


◆◇◆◇◆


 3人とも庭に出てきて、イザナギはストレッチを始めた。


 改めてイザナギを見るが、本当に能力を封じられてるんだな。魔力が全くない。そこらへんの虫の方が強そうにも思える。


「よし、まずは俺の自慢の筋肉を見せてやろう」


 そう言いながら上の服を脱ぎ捨てたイザナギだが、それなりに筋肉はあるものの自慢できる程ではない。


「ふんっ! 〜〜〜〜〜っっどうだ!」


 元から少しあった腹筋が、力を入れた事で更に割れた。が、俺のデフォルトには敵わない。


「イザナギ、ほら」


 軽く服をめくって腹筋を見せる。


「ちょっ……っ!?」


 まあ、身体能力半減があるからこの筋肉も無意味なんだけどな。
 童貞らしい反応を見せるイザナギを笑いながら、俺は剣をイザナギに渡した。

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