女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

208話 兄妹喧嘩



「はぁ〜疲れた」


 かなりの時間、地下で体を鍛えていた。
 1人で訓練しなければならないというプレッシャーから、少し頑張りすぎているのかもしれない。全身の筋肉痛と疲労感に抗うことができず、そのままリビングの椅子に倒れ込む。


「はぁ……はぁ……」


 息を整えている内に段々と眠くなってきた俺は、寝室に行く前にその場で眠ってしまった。


◆◇◆◇◆


「だ・か・ら! 私はお兄ちゃんの妹だよ!?」
「分かってるって! うるせぇなぁ!!」


 う、うるさいな。純粋に心地よく夢を見たかったのだが、どうやらそれは無理なようだ。


 目の前でイザナミとイザナギが大喧嘩している。


「くそっ……能力封じられなかったら今頃この世界もぶっ壊してやったのによ!!」
「ダメに決まってるからね!? 馬鹿なの!?」
「お前がイラつかせるからだろうが!!」


 ……俺に気づく様子は無い。


「あの……」
「「あぁ!?」」


 声をかけると、2人は物凄い形相で睨んできた。が、相手が俺だと分かるとすぐに戻った。


「あっクロアちゃんいたんだ」
「おぉ……いたのか……」


 どうやら兄妹喧嘩っぽいな。この2人仲良さそうだと思ったんだが、意外と仲悪いんだな。


「あ、クロア。別にこの世界を破壊するつもりは無いからな」
「は? さっき能力が使えれば壊すって言ってたよね?」
「黙ってろチビ」


 面倒臭いなぁ……。


「仲直りしろよ?」
「悪いが今回ばかりは無理だ」
「いい加減お兄ちゃんに学習してほしいよ。嫁はできないって」
「分かんねぇだろ」


 こりゃ落ち着きそうにないな。これ以上喧嘩について触れるのはやめよう。
 それに、特にこの二人に要はないしな。


「2人がずっと喧嘩してるから、もう帰るよ」
「「待って」」


 ここで寝ようとすると、2人に腕を掴まれた。
 こうして見ると顔似てるな。


「何?」
「私はクロアちゃんと話したい」
「俺もクロアと2人きりで話したい」


 じゃあまずはいつも一緒にいるイザナミから話を聞くとするか。


「分かった分かった。イザナミから話を聞くよ」
「お兄ちゃんはどっか行ってて。話終わったら呼ぶから」
「チッ……」


 呼んでくれるだけありがたいじゃないか。


 イザナギを追い払うように手を動かしたイザナミが、改めて俺の方を向いた。


「お兄ちゃんに変な事されなかった?」
「まあされかけたよ」
「もう……迷惑かけてごめん。お兄ちゃんって、一つの事に集中すると周りが見えなくなるタイプだから」


 そ、そうなのか。
 意外とイザナギの事を理解してるんだな。良い妹だ。


「それで、最近困ってるんだって?」
「う、うんまあ……訓練に行き詰まったというか」


 俺は唯一の救いであるキマイラが死んでしまった事。1人での訓練での不安をイザナミに伝えた。


「うんうん……それってお兄ちゃんの部下のせいだよね」
「ツクヨミさん」
「また……本当にごめんね」


 イザナミが手を合わせて謝ってきた。


「別にイザナミが謝る必要は無いだろ?」
「兄妹だから」


 理由が兄妹だからってだけか。意外と良い仲なのかもしれないな。持ちつ持たれつ。


「ありがとな」
「ごめん……何もしてあげられなくて」
「何もって……訓練の事か? まあそれは今度誰かに頼むから、気にしないでいい」


 べナードかクラウディアが来た時に頼めば良いだろう。リグは……特に頼む事は無い。


「えっと、何かしてあげられるわけじゃないけど、相談くらいは乗れるから。なんでも相談してね」
「ああ、ありがとう」
「じゃ、お兄ちゃんに代わるね」


 良い妹だな。

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