女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

200話 アリスって何歳?



 やっとイザナミの長い話から解放され、俺は目を覚ました。眠った気はしないが疲れはしっかりと取れている。


「おはよう、クロア」


 ベッドに座ったアリスが、声をかけた


「あ、おはようアリス。よく眠れたか?」
「……クロアもここで寝ればいいのに」


 そういって横になるアリス。
 確かに椅子で寝ていたから背中が痛い。


「じゃあ……今度から起こしちゃうかもしれないよ?」
「いいよ。クロアが寝る時に起きれば一緒に寝れる」


 何ともまぁ嬉しい事を言ってくれる。
 最近は、アリスは俺に対して大きく心を開いてくれている。見た目相応に甘えてきたりと、可愛い一面もある物だな。


「そういえば、アリスって何歳? まさか兆越えてる?」


 ふと気になった質問をしてみる。


「……酷い。9歳だよ」
「えっ? あっ、え、そうなの?」


 この世界が生まれた時から封印されてるんだから、かなりの年齢を地下で暮らしたんだろうけど、それでも9歳なのか。
 いや、まさか女の子の意地で封印されていた間の時間を消し去って考えているのだろうか。


「ほら微妙な反応した」
「だって何億年も封印されてたんだろ?」
「されてた。けど、封印されてる間は逃げられないように成長を止める魔法もかかってた。だから9歳」


 あぁ成長を止める魔法……んじゃあ、数億年前から一切変わらずに生きてきたという事か。……可哀想に。


 まあ、9歳なら可愛い方だ。年相応の守ってあげたくなる雰囲気を持っている。


「そかそか、ありがとう」
「クロアは何歳?」
「え……えっとね〜……」


 不味い。自分の年齢が分からない……。
 魔力がカンストして誕生日が来ても分からないんだ。今の俺の年齢って……知らないし、知るのも怖い。


「分からないけど……もうおばさんだよ」
「そうなの?」
「いや、違うと思うけど……なんとなくね」


 この話をなんとなくで終わらせて、俺は椅子から立ち上がった。


「今日も訓練行くの?」
「訓練というか……まあ訓練か。ちょっと鍛えてって頼みに行くんだよ」


 何回死ぬかは分からないけど、べナードがそうしろって言ったしな。キマイラは受け入れてくれるだろうか……。


「本当に大丈夫?」
「アリスは気にしなくていいよ。じゃあ準備してくる」
「……うん」


 きっとアリスなりに心配しているんだろう。俺がしばらく落ち込んでいた時なんかは、いつもより積極的に話しかけてくれたからな。
 心配かけないようにしないとな。


 俺は剣と少しの果物をリビングのテーブルの上に置いて、1度寝室に戻る。


「それじゃあ行ってくるよ」
「うん。無理しないで」
「おう! 少し遅くなるけど、寂しくて泣いたりするなよ」
「しないよ」
「んじゃ!」


 笑ってくれたし、少しは心配も無くなっただろう。
 リビングの荷物を持って、ここから向かいにある山へ向かった。


◆◇◆◇◆


 昨日の場所にはいないようだ。巨大な狼の死体も、跡形もなく消え去っている。


「ん?」


 広い草原を歩いていると、足元に違和感を感じて下を見る。
 すると、ふくらはぎに噛み付く黒いヒルのような生き物がいた。白い牙が見えていて、目が無い。


「気持ち悪っ!!」


 すぐに雷魔法で麻痺させて落とす。
 どうやら血を吸われていたようだ。ここにはそういう生き物もいるのか……なるべく気をつけて歩いた方が良いな。
 今は何もされていないから良いものの、もし毒を持っている生き物が噛み付いてきたらひとたまりもない。


 常に足に電気を走らせ、触れた瞬間に動けなくなるようにして、再び山の方へ進む。

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