女嫌いの俺が女に転生した件。
190話 スキルの神セシル
いつもの訓練も終わり、俺はアリスをリビングに連れ出して話していた。
「布団の方が温かい」
「神様来るんだろ? ここで待ってた方が良いだろ」
スキルの神様が来たら、まず俺にスキルを与えてほしい。そうすればべナードと戦う時の良い戦力となるかもしれない。
「なぁ、アリス。この尻尾って何なんだ?」
「尻尾だよ。これが無いと立てない」
「え……? ちょっと立ってみてくれ」
「面倒くさい……」
そういいつつも、アリスは立ち上がった。
大きな竜の尻尾が地面にペタンと付いて、アリスの身体はそれに寄りかかるように傾いていた。
まさか……両足で立つことすら面倒臭いのか……?
「もういい……?」
「い、いいけど……へぇ〜便利」
前世で、校長先生の長い話なんかもこの尻尾があれば疲れないという事か。意外と尻尾って良いんだな。
気がつくと、部屋が暗くなっていた。どうやら外が暗くなったらしい。
「カーテン締め……」
カーテンを締めようと動いた時、窓の外に誰かがいるのが見えた。
長い神を風になびかせた女性が1人……。
「怖っ……」
「すみません。鍵を開けていただけないでしょうか」
なるほど、家に入れてほしいという事か。
「クロア、カーテン締めて」
「いやそれは流石にダメでしょ。よく見たら良い人っぽいし」
しかし、まずは様子見だ。
「何しに来たんですか?」
「あ、貴女がアリスさんを解放してくれたのですね。やっとアリスさんを見つけたので、謝りにきました」
ほらほら。やっぱり良い人だ。
アリスを見ると、二階の寝室に行こうとしていた。
「こらアリス、ちゃんと話さないとダメだろ?」
「うぅ……全部クロアに任せる。私は居るだけ」
すぐに捕まえて、スキルの神の前に行く。
「とりあえず鍵開けますね」
「ありがとうございます」
この神様は随分と穏やかでゆっくりとした口調だ。優しさが滲み出ている。なぜこんな人がアリスに 【破壊】 なんていうスキルを与えたのだろうか。
「あぁ温かい……」
「寒っ……」
窓が開いた時に入ってきた風で、外がどれほど寒いか分かった。
「す、すみません。温かい飲み物持ってきますね」
「そこまでしていただけるなんて……本当にありがとうございます。ここに座っても良いでしょうか」
「どうそどうぞ」
とりあえず神様を座らせて、三人分のホットミルクを用意した。
「どうぞ」
「丁寧なおもてなし、ありがとうございます。アリスさんはこんなに優しい方に解放してもらえたのですね……良かったです」
俺の横に座るアリスに目を向けて、優しく微笑んだ。
「あの、質問いいでしょうか」
「はい。色々と聞きたいこともあるでしょうし、どうぞ」
「お名前は? 私はクロアです」
「あっ、すっかり忘れていました。えっと……セシルと申します」
今自分の名前すら忘れていた気がする。
セシルさんか。
「じゃあ早速質問します」
まず疑問的として、なぜ優しそうなセシルさんがアリスに嫌われているのか。これについて質問をした。
「原因は分かります。私がアリスさんに【破壊】を解放させてしまった事ですね」
この雰囲気だから嫌われてる事すら知らなかった、と言い出しそうだったが良かった。知っていたのか。
「実はその事でアリスさんに直接話さなくてはならない事がありまして」
「ほらアリス、寝ない」
ウトウトしているアリスを起こして、セシルの話を聞かせる。
「その……私は、相手の隠れたスキル。潜在能力を引き出す程度の力しか持っていないのです」
「ん? それってどういう事ですか?」
「私は、アリスさんが元から持っているスキルを解放しただけに過ぎません。アリスさんの潜在能力、【破壊】 というスキルを引き出してしまったのが私です」
ん……つまり、セシルさんが意図的にアリスに 【破壊】 を与えた訳ではないという事か。
「じゃあなんで助けに来てくれなかったの」
珍しくアリスが声を出した。
「それは……アリスさんの居場所が分からなかったのです。それがまさか死神界に封印されてるなんて予想もしませんでした。
クロアさん。私の代わりに封印を解いてくださりありがとうございます。
そしてアリスさん、本当に申し訳ありませんでした……」
セシルは深く頭を下げて謝罪した。
この話はただの勘違いだったで終わってしまった。
「アリス、何か言いたい事とかある?」
「ない。満足」
どうやらアリスもセシルが謝った事で満足したらしい。
「良かった……」
「あっ! そうだ。私もスキルが欲しいんだけど」
「そうですね。クロアさんには感謝の意も込めてスキルを解放します」
っしゃ! 
ついに俺にスキルが手に入る。
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