女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

188話 神様って何?



「って事で、竜神のアリスについて色々と調べようと思う」
「クロアさんって神様だったんですか……」


 リビングにいるレンに、竜神アリスの事を伝えると関係ないところで驚かれた。


「ま、まあ神の端くれではあるけど……普通封印されるような存在が解放されたってところに驚かないか?」
「いえ、クロアさんが神様だという事にビックリしました」


 そうか、転生者は神様に会うけど転移者は神様に合わないからな……驚くのも無理はないか。


「とりあえずアリスは今、完全に回復するまで寝たいって言ってるから。起きたらここに連れてくるよ」
「分かりました。何か凄いですね……」


 レンは俺を見てそう言った。


「何が?」
「だって俺、2人の神様に会ってるんですよ。ワクワクします」


 ワクワク、ねぇ……。でも俺は神ではあるけど、ほぼ神じゃないような物だしな。


「神って意外と普通だよ」
「そうなんですか?」
「お兄ちゃんっ子の神様がいたり、ドMな神もいたり。憑依した肉体から出られなくなった神も。皆意外と仏だよ」
「それ普通っていうんですか……」


 あれ? あ、確かに最初以外は皆普通じゃないや。


「でも、神様ってそんな存在だよ。ちょっと大きな力を持ってるだけで皆と一緒。
 結局は、誰だって人より得意な事を平然とやってれば、神様って言われるもんだよ」
「得意な事……」


 レンは上を見上げて自分の得意な事を探し始めた。


「私にとって、レンは料理の神様だよ」
「料理の神様ですか……あははっ、悪くないですね」
「だろ?」


 神様なんてそんなもんだ。
 俺とレンは、しばらくの間一緒に話し続けた。


◆◇◆◇◆


「クロア、私はお腹が空いた」
「そういうと思って目玉焼き」


 練習がてらに作った目玉焼きを寝室に持っていくと、ちょうど目を覚ましたところだった。


「……美味しい。ありがとうクロア」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。まだ魔力は回復しないのか?」
「長い間魔法も封じられてたから、弱まってる。寝て回復する」


 食って寝ての生活だと、回復どころか余計に不健康になってしまう。


「ちょっと身体動かさないか?」
「……めんどくさい」
「え……?」
「正直な事を言うと、このまま寝てたい」


 アリスは、真剣な顔でそう言い放った。
 その時、俺はアリスに対しての心配心が無くなった。


「次からはリビングでしか食べさせないよ」
「え……それは無理。動くと体力を消耗してしまう」


 なんで一瞬悲しい顔になったんだ……。少しアリスの性格が分かった気がするぞ。


「なぁ、アリスって何でも壊すのか?」
「スキル 【破壊】 がある。これで何でも壊せるけど、面倒だから使わない」


 なるほど、それで生活リズムを壊したのか。……違うと思うけど。


「そっか……スキルってどうやったら貰えるの?」
「神様がいる」
「神様?」


 アリスの言葉に、俺は頭を傾けた。


「それって、スキルをくれる神様って事?」
「そう。生まれる時に 【破壊】 のスキルを貰った。そのせいで私はこんな身体になってしまった」


 自らの胸を見下ろして、辛そうな顔をした。


「クロアも酷いことを受けた?」
「失礼な! 私の胸はまだ成長する予定だ」
「……その胸はもう成長しない。一緒にその神様を懲らしめるなら外に出てもいい」


 ん〜? 最初の方が聞こえなかったな〜? まあ聞こえなくてもいいや。私には関係ない事だ。


 神様を懲らしめる為なら外に出るのか。じゃあアリスの目的に協力していればスキルを貰えるって事だな。


「分かった。協力するよ」
「っ! やっぱりクロアは優しい神様」


 俺の手を握り、目をキラキラとさせた。そのままアリスの手を握り返して、引っ張る。


「な、何をする!? 寒い! 布団!」
「リビングに行くよ。この家にはもう1人いるんだ」
「ここに連れてきたらいい! 私はここにいる!」


 必死にベッドの足の部分を握って抵抗する。
 確実に魔力で身体強化されている為、力で勝つことができない。もう完全に回復してるだろコイツ……。


「ワガママ言ってると協力しないよ」
「う……やっぱり貴女は悪い神様」
「悪くて結構。アリスの為だ」


 アリスは仕方なくベッドから手を離し、一緒にリビングまで降りた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品