女嫌いの俺が女に転生した件。
183話 森を探検しよう
森の中に入ると、可愛い小動物達が集まってきた。
「しっしっ! 臭いからあっちいけ!」
また病気になったら困る。剣で追い払いながら森を真っ直ぐ進んでいく。
緑の綺麗な森の地面には、水溜りや濡れた土なんかがよくある。死神界にも雨というのはあるらしい。
歩いていくと、土や水が跳ねてズボンが濡れていく。更には靴の中が湿ってきた。こうなると段々痛くなってくるのが辛い。
それでも森の奥に進んでいくと、大きな池が現れた。
「ほぉ〜でっかい」
でっかいと言っても、池の周りを一周走れる程度の大きさだ。
ここなら走ったり釣りしたり、泳ぎの練習なんかもできるだろう。……凶暴な魚とか気持ち悪い魚いないよな?
死神界だからセミの顔した魚がグ二グ二動いてないだろうな。
ゆっくりと池の中を覗き込む。
「……おぉ」
かなり綺麗な水で、池の底まで目視することができた。魚はもちろん、生物は存在していない。
「……ってことは危険な水とか?」
生き物がいないならいないで、水の安全性を疑ってしまう。
近くに落ちていた木の枝のさきっぽだけ池に付けてみる。
「……大丈夫……っぽいな」
多分大丈夫。多分……いや、もしかしたら身体には有害な毒があるかもしれないし、まだ触るのはやめておこう。
そう思いその場から離れようと立ち上がった時だった。
──ちゃぽちゃぽ
向かい側で、池の水を飲むキツネがいた。
「……大丈夫……なのか?」
俺はしばらく池の前で悩んでいた。
ーーーーー
ーーーーー
「うん……大丈夫! 飲んでみるか」
池の水を飲んでいたキツネも元気に去っていったし、有害な物は何も無いだろう。
軽く足を入れてみる。
「おぉ〜丁度良い冷たさ。泳げるかな」
後ろを振り返ると、動物達が俺を見ていた。
「一緒に泳ぐ?」
そういうと、尻尾を振って俺に擦り寄ってきた。もしかして言葉が分かるのか?
いや、ただ構ってもらえると思っているだけだろう。
「っしゃ、人泳ぎすっか」
結んでいた髪を下ろし、上着とズボンを脱いで下着だけになる。どうせなら全裸で泳ぎたいが、動物達に持ってかれたら困るからな。
リュックの中に服を入れて、池に飛び込む。
「ひゃっほ〜いっ!!」
──バシャンッ!
俺が飛び込むと、動物達も続いて池の中に飛び込んできた。やはりこの池は綺麗な池のようだな。
「結構深いな〜……」
足を常に動かしてないと沈んでしまいそうだ。
「潜ってみるか」
目に入れても大丈夫だよな。
目を開けたまま、ゆっくりと水の中に入っていく。
池の中はかなり綺麗だった。水中から上を見上げれば、透明のキラキラした天井がある。水の中を自由に泳ぎ回れる事が、こんなにも楽しいとは思わなかった。
「ぷはっ」
息継ぎをしに水面に上がり、荷物を確認する。
「うわぁっ! ごめんなさい!」
「……」
何故か 努力 と日本語で書かれたTシャツを着た若い男がこっちを見ていた。黒髪で中性的な顔をしている。日本人……? なんでここに?
「あっ、ご、ごめんなさい!」
池から上がると、男は手で目を隠した。
「君は誰だ? どこから来た」
「えっと……自分でもよく分からなくて……足元が光って気づいたら……」
転移者か……それも死神界にね。珍しい。
「多分、ここは君からすると異世界だ」
「い、異世界!? じゃ、じゃあ……本当だったんだ」
「本当?」
「はい。僕達の世界で、最近異世界についての話題が多いんです。原因不明の殺人事件だったり、謎の死、行方不明、事故。全て異世界の魔力のせいだってネットで話題で。
たまに異世界に通じる空間の歪みなんかが確認されたり……あっ、すみません! つい長く喋ってしまって……」
ふ〜ん。なんでも異世界の魔力のせいにするのは良くないけど、空間の歪みか……。
「あ、あの! 服を着てください!」
男は顔を真っ赤にしながらそういってきた。
「あぁごめんごめん。君名前は?」
リュックから服を取り出しながら、聞いた。
「れ、レンです」
「レン君か。私はクロア、よろしくな」
「クロアさん……よろしくって……どういう事です?」
背中で語ってくるレン君。ただ俺を見ないようにしてだけなのだが、大物感が凄い。
「ここは死神界。森の外には危険な魔物が沢山いるし、一人で勝手に行かせる訳にはいかないだろ?」
「え、もしかして……」
「泊めてやるよ」
「あ、ありがとうございます」
もしかすると、近々死神界にも転移者やら転生者が来るかもな。レン君だけここに転移したとも考えにくい。
人を見つけるまでは一緒にいてやった方が良い。見たところレン君は頼りないからな。
「私の家に案内する。来てくれ」
「も、もしかして一緒に家に住むんですか?」
「嫌なら野生の動物と糞まみれの生活をしてもらうぞ」
「嫌じゃないですけど……その、女性と一緒というのは……」
なんだ〜? こいつホモかぁ?
「女は嫌いか?」
「そ、そういう訳ではありません!」
「じゃあ行こう」
まあ分かるよ。ピュアな心を持ってると、女と一緒にいると気まずいよな。俺は他の女とは違うって事を見せてやる。
俺はレン君と一緒に生活する事にした。
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