女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

178話 新訓練の準備



 べナードから言われた死神界での一人暮らし。準備が出来たら連れていくらしいので、しっかりとリグに話す。


 寝室のベッドに体育座りで座っていると、リグが来た。


「リグ、しばらく訓練で出かけなきゃいけなくなった」
「俺も一緒に行く……っていうのは無理か」
「しばらくお互いに寂しくなっちゃうけど、浮気するなよ?」


 もし次浮気したら許さないからな。具体的に何するかは決めてないけど、とにかく許さない。


「クロアの方こそ浮気するなよ。一番寂しがり屋なのクロアだし」
「寂しがり屋じゃねぇし……んじゃ、準備するからサタナなエリフォラにはよろしく」
「ああ、任せろ」


 特にエリフォラにはべナードの存在が気づかれちゃダメだからな。良い感じの言い訳をしてくれる事を願う。


 べナードに聞いたところ、一人暮らしに持っていくのは何でも良いらしい。
 だからといって何をもっていけば良いのかさっぱりだ。


 俺は1人、部屋をウロチョロして持っていく物を探していた。
 とりあえず服は確定していて、それから暇潰しの本。


「あっ……」


 剣を持っていこうとして思い出した。オーガとの戦いで剣は折れてしまっている。新しく買わなければならないな。
 リビングで暇そうに机を叩いているべナードに超えをかける。


「べナード」
「終わったか?」
「お買い物に付き合って。剣を買いに行く」


 そう言うとべナードは、手の平からニョキニョキと大きな剣を生み出した。


「な、何それ……」


 何故に手の平から? それに剣も、まるで巨大なモンスターをハントするゲームに出てくる剣のように大きい。


「魔力を使わずにこれを持てるようになってほしいもんだ」
「いやいや……見た目的にかなり重そうだけど」


 魔力を使わずに、この部屋の天上を突き破りそうな程大きい剣を持てるはずがない。


 が、とりあえず挑戦してみる。
 べナードが片手で持っている持ち手の部分を手に取り、そのまま持ち上げようと力を入れる。


「ふぐぅっ!! これ何キロあるの?」


 ビクともしないから聞いてみた。


「100kg」
「バカじゃねぇの!? こんなん持てる訳ないって」
「うるせぇ耳が痛くなるから叫ぶな。それに安心しろ、死神界の空気は特別だ。その空気を吸いながら訓練すれば成長するだろ」


 耳を塞ぎながら説明するべナードに少しイラッとしたが、最後の言葉に俺は反応した。


「成長……?」
「ああ。何を期待してるかは知らんが、その胸も成長するだろうよ」
「っしゃあ! 本当だな! じゃあ決めた。巨乳になるまでそっちで訓練して、巨乳になったらリグに自慢してやる」


 絶対に巨乳になってやる。魅力を手に入れればリグだって浮気しなくなるだろう。


「ただ、もうお前の胸はそれ以上……いや、何でもない」
「お前……」


 人が傷つくことを簡単に言いやがって。まだ成長段階なんだよ。


「その剣が持てるようになるまでに使う剣を買いに行く。べナードは強制的に着いてくることになった」
「あぁ悪かったよ。さっさと行くぞ」


 面倒くさそうに椅子から立ち上がったべナード。なんだかんだ言って付き合ってくるのは優しいよな。


ーーーーー


ーーーーー


「準備完了!!」


 べナードと一緒に買った剣。特に店で一番高性能な剣を購入した。かなり金を使ったが、それも仕方ない。
 剣の見た目はシンプルだ。愛用していけるだろう。


 荷物をリュックにまとめた俺は、それを背負ってべナードの元に向かう。


「んじゃ、行くぞ。しばらくこっちには帰ってこれないからな?」
「そういうのは慣れてるから。でも……まあ寂しいな」


 一人暮らしか……ゲームがあれば1日中引き込もれるんだか、この世界じゃ働かないと死ぬからな。


「一人暮らししてもらう森には色んな動物がいる。そいつらと遊んでやれ」
「えぇ〜どうせ気持ち悪い見た目なんだろ?」
「フサフサの尻尾を持つキツネに囲まれて、頬や腕、足をペロペロ舐められると想像してみろ」


 それが可能なら喜んで行く。


「可能だ。森の中はキツネやらネコ、ウサギなんかもいる。危険なのは森の外だ。安心して住める」
「よし、すぐに行こう」


 とんでもない情報を手に入れた俺は、すぐにでも一人っきりで動物と戯れたい衝動に駆られた。

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