女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

170話 昼間からお楽しみ



 結局ソフィとワタルは、俺と一緒に行動する事になった。
 しばらく二人の生活について聞いていると、リグと女性と立ってどこかに向かい始めた。


 バレないように少し離れて尾行する。


「あっ」


 女性の手がリグの手に触れると、二人は手を繋いで歩き始めた。


「……」
「クロアちゃん怖い顔してる」
「うぅ〜ん……リグリフさんはどういうつもりなんだろう……」


 どういうつもりも何も、俺じゃ満足出来ないから浮気してるんだろうよ。許せないな。


 またしばらく尾行を続けていると、二人は少し大きめの宿屋に入っていった。


「こんな昼間から宿屋ってどういう事だ?」
「ベッドがあるからセッ〇スするんだよ」
「ソフィアは容赦ないなぁ……」


 セック〇……マジかよ。これはもうそろそろ、離婚が見えてきたぞ。
 もし俺がリグと離婚したらどうなる……? 夜は寂しいし、仕事も詰まらないし、ストレス発散道具が無くなって……。


「離婚したくない……」
「り、離婚なんて考えちゃダメだ」
「分かってるけど……私ってそんなにダメなのか……?」
「ダメじゃない!」


 向かいの料理店で二人に慰めてもらいながら、リグが宿屋から出てくるのを待つことにした。


「……なんでこんな思いしなくちゃならないんだ……」
「じゃあクロアちゃんも浮気して、リグ君に同じ思いをさせればいいと思う」


 俺も浮気……?


「無理無理……リグ以外に好きな人なんて出来ないし」
「いや。あくまでも演技として協力してもらうならいいんじゃないかな? 身近な人と付き合っている体で、リグリフさんの前に姿を表してみるとか」


 演技か……演技……苦手だなぁ。
 いや、ネガティブに考えちゃダメだ。とりあえず作戦でやってみよう。
 これでもし……リグがお互いに幸せな道を歩もうとか言って離婚してきたら……死のう。


「じゃあまずは、その相手を探さないとな」
「そ、そうだね。誰にする? 近くに男性の人って」
「良さそうなのいないかなぁ〜……」


 そもそも俺って恋愛しにくい体質だからな。女は嫌いだし、だからって男と付き合うとホモって以前は悩んでいた。
 いや、今も悩んでるんだけどリグに対してなら吹っ切れたというか。もう俺の中でリグは大好きな人なんだ。ホモとかそんなんじゃない。


 リグ目線で考えてみよう。


 クロアは元々男だ。少なくとも女に対する恋愛感情は生まれるはず。クラウディアなんかどうだ……女の見た目に男の性格。まさにクロアが好みそうな人だ。


「よし、決めた」
「だっ、誰に決めたの?」
「なんでワタルテンション高いの?」


 まさか自分が選ばれるとでも思ったのだろうか。残念だが、妻を持っている人は無理だ。
 クラウディアは1人だし、事情を説明したら分かってくれそうだから早速頼みに行くか。


「ちょっとクラウディア呼んでくるから、ここでリグ監視してて」
「あ、うん」


 軽く地面をコンと蹴ってクラウディアの城に転移する。
 魔力に意思を持たせて魔法を使う場合、自分派何らかのキッカケとなる行動をしなければならない。だが、たとえば子供の遊びのように指を組んで 「バリア!」 と叫べばバリアが出る。
 かめはめ〇の動きをすればかめは〇波が出る。そういう物だ。


「さて……クラウディアはどこにいるかな〜?」


 あっさり城の中に入れた俺は、クラウディアを探す為にポチの元に向かった。


「ポチ〜」


 城の裏側でぼ〜っと眠そうに目を半開きにさせたポチが、俺に気づいた瞬間頭をこちらに出してきた。


「おぉ〜よしよし……可愛いなぁポチは」
「キュルルル」


 ん? 可愛い……。そうか、この場合はギャップ萌えという可愛さがあるのか。
 ドラゴンは怖いイメージが強いが、人に慣れたドラゴンは可愛く甘えてくる。


 俺もギャップを見せた方が良いな。


「クロアか。ってことはエリフォラも来てるのか?」
「あれ? いつからそこに?」


 いつの間にか、俺の横にクラウディアが立っていた。


「ん〜いや、まだベナードから話は来てないんだけど、今日は悩み事と手伝ってほしい事があるんだ」
「悩み相談か。良いだろう、何でも聞いてやる」


 やっぱり美人の見た目で男のように頼れるクラウディアは俺の理想だな。
 少しの風で揺れる黒くて長い髪は、まるでどこかの女優かと思えるほど綺麗に整ってあり、枝毛はゼロ。指通りもかなり良さそうだ。
 対して俺の髪は……あ、意外と綺麗だけど枝毛が気になる。


「なんだ? 髪の悩みか?」
「ち、違うから……あのさ、リグに浮気されてるんだけど」
「浮気だと……!? いますぐ懲らしめてやろう」
「だから! 話を最後まで聞いてくれ!」
「あ、あぁすまない」


 俺は今のリグとの関係と、手伝ってほしい内容を伝えた。


「なるほどな。まあ俺もいつも暇だから、手伝ってやらない事はない」
「ほ、本当に……!?」
「ああ。だが、もしそうするなら徹底的に付き合うぞ」


 徹底的に付き合う……? いったいどうするつもりなんだ。

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