女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

162話 気持ちの良い寝起き



 どうやら俺は、昨日の疲れからか昼過ぎまで眠っていたようだ。
 目を覚ますと、抱いて枕にしていたリグが布団にすり変わっており、カーテンの隙間からは眩しい光が差し込んできている。


「んっ……んん〜……」


 なんとか身体を起こそうとするが、眠くて眠くて起きれない。
 このまま暖かくてポカポカする場所で寝ていたい……。


──ガチャッ


 リグが部屋に入ってきたので、寝ているふりをする。


「よぉ寝てんなぁ」


 どうやら鎧に着替えているようだ。仕事にでも行くのだろう。


「おぉ〜い。仕事の時間だぞ〜」


 頬をツンツンとつつかれるが、俺はまだ眠いのだ。


「……まあいいか。気持ちよく寝てるところを邪魔する訳にはいかんしな」


 すると、今度は頬にキスをされた。リグの口は獣人族の口だからすぐに分かるのだ。


「リグリフ〜! クロア起きた〜?」


 その時、下からサタナの呼ぶ声が聞こえた。


「気持ちよく寝てる〜!」


 リグはそう叫んで、部屋から出ていこうとした。
 が、俺がリグの手を掴んで引き止める。


「……起きてるのか?」
「おはぉ……」
「呂律が回ってないぞ。もう昼だ」
「わぁってる……おこして」


 リグが手を引っ張って起こしてくれた。


「どうする? 疲れてるみたいだし、今日は休むか?」
「んにゃ……頑張る」
「んにゃって……」
「あっクロア起きたじゃ〜ん。おっは〜!」
「クロアちゃんおはようございます!」


 サタナとエリフォラが部屋に入ってきて、少しだけ目が覚めてきた。
 皆ギルドの支給品の鎧を着て準備をしていたようだ。


 俺は魔法ですぐに鎧装備できるし、急ぐことは無い……いや、昼だから急いだ方が良いのか。


「クロアちゃんは今日は休んでてもいいですよ」
「ん〜皆が働きに行ってる間寝てるなんて悪いよ……」
「寝る前提なのか……」


 昨日クラウディアとべナードに訓練してもらって疲れが溜まっているとはいえ、仕事を休む訳にはいかない。日本の社畜文化を思い出すが……そういうのではない。


 少しだけ魔力の流れを早めて、眠気を吹き飛ばす。


「よしっ! 私もすぐに準備するから待っててくれ」
「分かった」


 3人を下で待たせて、俺はすぐに準備をする。
 鏡を見ながら寝癖を整えて後ろの高い位置で結ぶポニーテールにし、服装も整えた後に鎧を装備。鞘に入った剣を片手に下に降りる。


「あら、クロアおはよう」
「よく寝てたな」


 ミリスとバルジがのんびり座っていて、玄関の方に三人はいた。


「あっ、じゃあ行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
「頑張れよ」


 すぐに玄関で待つ三人の元に行って、靴を履く。


「そう急がなくてもいいぞ」
「玄関で待ってるんだから急ぐに決まってる」


 そうして俺達はいつものように、仕事に向かった。


ーーーーー


ーーーーー


 外に出ると、眩しい太陽光で目が痛くなり、つい目を細めてしまう。


 ギルドに到着すると、周りの冒険者達が俺を見てきた。
 なんだ?


「怪力のクロアだ」
「おぉ、怪力のクロアさん」


 あぁそうだ……俺そんな風に呼ばれてたんだっけ。


「何か良い依頼は来てないかな〜っと」


 視線を気にしつつも、俺達は依頼が貼ってある掲示板の前に来て確認する。


「あっ、これなんかいいんじゃな〜い?」


 サタナが見つけたのはオーガの角を2本持ってくるだけの依頼。
 オーガというのは、オークと似たような名前だが全く違う魔物で、鬼のように鋭い角を持つ。体格はオークと似ている。


「オーガってここらへん来てる?」
「さぁ……」
「そこが問題ですよね」


 俺達が悩んでいると、冒険者達の中から声が聞こえた。


「怪力のクロア! オーガなら鉱山周辺にいるぞ〜!」
「鉱山近くにいる」
「この前見た。逃げたけどな!」


 鉱山周辺か。


「ありがとう!」


 俺が振り返って礼を言うと、冒険者達が皆ニコニコしていた。
 前世じゃ有り得ない対応……やはり女になった事でイージーモードになったか。やはり女は許せん。


「よっしゃ。オーガ狩り尽くしてやる」
「おっ、やる気だな」


 俺達は気分を高めつつ、依頼を受けた。

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