女嫌いの俺が女に転生した件。
158話 訓練を受けに行こう
城に到着すると、メイドの人がすぐにクラウディアを連れてきた。
「よぉ……待たせたな」
眠そうな顔で、まだ寝癖のある髪を手で直しながらやってきているクラウディア。
何も知らない人が見ればただの美少女。そんなクラウディアが無防備にパジャマ姿だ。
「着替えないのか?」
「ん……? ……ああ……面倒臭いし」
眠くて頭が上手く回っていないようだ。
「とりあえずクロア来てくれ」
「分かった。エリフォラちゃんちょっと待ってて」
「はい」
クラウディアに耳を貸すように言われて、俺は話を聞いた。
「ちょっと無理矢理だけど、エリフォラの中の人格を呼び出す」
「よ、呼び出す……? それで?」
「そいつと死神界に行って、そこで訓練をすれば鍛えられると思ってな」
死神界に行く……? 死神でもない俺達が人格だけの死神と一緒に行けるのだろうか。
「死神界にはここの魔物とは比べ物にならない程恐ろしい生き物がいるからな。そいつで訓練すればこっちの魔物は赤ん坊よ」
「そ、そうか……分かった」
話を終えて、エリフォラの横に戻る。
そしてクラウディアは、すぐに本題を切り出した。
「エリフォラ」
「はい。なんでしょう」
「ちょっとだけ記憶が飛ぶかもしれないが、慣れてるよな?」
慣れてるよな? は流石にないだろう。もうちょっと気の利いた言葉は思い浮かばなかったのだろうか。
エリフォラは少し頭を傾けて考えた後、まだ疑問が残っているような顔で。
「クラウディアがそういうならいいですよ。何をするのか知りませんけど」
「ありがとう」
「んぐっ!? んっ! んぐぁ〜〜゛〜っっ!!」
突然、クラウディアはエリフォラの首を締め始めた。片手で首を掴み、エリフォラは足が地面につかない高さまで持ち上げられ、必死に足をバタバタさせている。
「おい何してるんだよっ!!」
「まあ見てろ」
ついにエリフォラは、口から泡を吹きながら白目を向いて意識を失った。
「お、おい……」
エリフォラが死なないようにする為に俺は訓練しにきたのに……訓練する前に死ぬのか……?
その時だった。力のない腕がピクリと動き、気づけば右足がクラウディアの顔を蹴っていた。
「あっぶね。やっときたか」
なんとか開いていた手で顔をガードしているクラウディアだが、その顔には少しの汗が出ていた。
「テメェ……俺がこいつを守ってんの知っててやりやがったな……」
「まあまあ。目的はお前と一緒だ」
「エリフォラを殺すのか!?」
「違う。クロアを鍛えるんだ」
「……ああそう。降ろせ」
べナードは不機嫌そうに俺の方に歩いてきて、胸ぐらを掴んできた。
「おい……なんでアイツと一緒にいる」
「だってお前が訓練サボってるから……クラウディアに頼もうと思って……」
「……サボって悪かった」
あれ、意外と素直だ。
「っていうか、クラウディアとべナードってどっちが強いんだ?」
「べナードだ」
「俺だ」
でも、さっき普通にべナードの攻撃を受け止めていたぞ? それとは別なのか。
「さっきのは攻撃が来ると分かっていたから防げたが、実際の戦いでのこいつの技術は俺でも理解できない」
「お前んとこのサタナキアよりも技術では上だな」
なるほど。力ではクラウディアが勝っているけど、技術的にべナードが勝っているから勝てないのか。
そう考えると、クラウディアも技術的な面を訓練すればべナードに勝てるって事だよな。
「クラウディア。私の代わりにべナードを倒してくれ」
「それは無理だ」
即答だった……。
「クロアとべナードの約束だ。俺は手伝うことしかできん」
ケチだなぁ……まあ確かに俺はべナードと約束したよ。でもエリフォラを救う為なら最も確率の高いクラウディアに戦わせるべきだと思うのだが。
「さっさと鍛えるぞ。さっさと終わらせて、さっさと俺は寝る」
「じゃあ俺とクロアを死神界まで頼む」
「お前から呼び出しといてまた戻るのかよ……」
意外とクラウディアとべナードって仲良し……っぽいな。
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