女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

157話 怪力のクロアちゃん



 ポチがいる場所に着くと、クラウディアはポチの背中に乗っていた。


「ようクロア達! 久しぶりだな!」


 クラウディアはすぐにこちらに気付くと、笑顔で手を振った。


「リョウタって奴を部隊に入れれば良いんだな?」
「ん? 話聞いてたのか?」
「まあな。魔法を使えば聞こえる。ようリョウタ」
「は、初めまして……クラウディアさん」
「クラウディアでいい」


 クラウディアは珍しくラフな格好をしている。
 ショートパンツに薄い下着のみ。最近暑いからだろうが、それだと露出が凄いことになっていて、リョウタがどこを見れば良いのか戸惑っている。


「キュルルルル」
「おっ、ポチがクロアに頭撫でられたいってよ」


 ポチは俺の前に頭を出してきた。


「よしよし」
「キュ〜……」


 はぁ可愛い。心の奥から暖かくなってくるな。


「あっちょっ、ポチ! 気持ち良いからって身体震わせるな!」
「キュ〜……」
「んんっ……くそっ」


 クラウディアが背中から降りて、俺達の方にやってきた。
 若干顔が赤いが大丈夫か。


「それでリョウタの件なんだけど」
「戦闘経験も全くないんだろ? 実は異世界人用の部隊を作ってな、そこに入ればすぐに慣れるだろう。適当に訓練させてればすぐに上達する」


 おお! 異世界人用の部隊。つまりほぼ日本の合宿と変わらないな。


「異世界人用っていうと……僕のように日本人がいるのですか?」
「ああ。飛び回って集めたからな〜……100人近くいるんじゃないか?」


 エグイな。


「この世界でも日本食やら日本の文化で遊べて楽しくやってる。リョウタもその舞台に入るといい」
「ありがとうございます!!」


 リョウタはその部隊が一番だろうな。
 じゃあそろそろ暗くなるし、俺達はギルドに素材渡して帰らないとな。


「じゃあクラウディア。後はよろしく」
「ああ任せろ。それと大事な話があるんだろ? 俺に鍛えてほしいって?」
「あぁうん。出来ればクラウディアより強く……無理だと思うけど」


 そういうと、クラウディアはエリフォラを1度見てこっちを向いた。


「事情は分かっているが、あまり人の運命に手を出すのはやめた方が良い」
「っ……そう言われても……」
「ああ。クロアなら助けたいって思うだろうな。良いだろう、だが俺より強くなるという事はお前は世界から消滅する可能性だってあるんだ」


 世界から消滅……? 何故だ?


「俺より強くなるという事は、何人もの神と契約を結ばなければならない。いや、結ばなくてもベリアストロのように何百年も生きれば強くなれるだろうがな。
 ただ、もし神と契約したとしてイザナミにいいように使われたら……おしまいだ」


 ああそうか……神を身体に取り入れれば、その文イザナギを呼ぶ器が完成に近づく。そこをチャンスとイザナミが俺を利用したら……俺そのもの、魂が消滅する。


「まあそこら辺は俺に考えがあるし、明日から城に来い。俺が鍛えてやる。ついでにエリフォラもな」
「えっ、わだ……ゴホゴホッ……私もですか?」


 エリフォラがしばらく喋っていなかったせいか、いきなり声を出して喉が詰まっていた。


「事情は話せないが、とりあえずクロアと一緒に来い」
「分かりました。クロアちゃんと一緒……ふふ」


 嬉しそうに空を見上げているが、本人は残りの寿命が9年だという事は知らないんだ。それを見ていると、なんだか目元が熱くなってくる。


「じゃあまた明日来いよ!」
「ああ。また」


ーーーーー


ーーーーー


 クラウディアとリョウタと別れて、俺達はギルドにやってきた。
 魔物の素材を、リグが背中にあるバッグをテーブルの上に置いた。


「はい。確認しま……」


 受け付けのエルフの女性が、バッグの中を見て言葉を失った。


「これ……オークの牙……ですよね?」
「ああ。森に沢山いて人を襲っていたからな」
「これ……全部?」


 女性はバッグの中にあるオークの牙を、全てテーブルの上に置いた。他の素材もバッグの中にあるのだが、オークの牙だけを取り出した。


「全部で……57頭?」
「いや、もっと多かったんだよ〜? クロアが皆頭を切り落とすから牙まで切れちゃって売り物にならないんだよ」
「クロアさんは綺麗に殺すという事が出来ないんですよ」


 ……まずい。周りの冒険者が俺を見ている。


「貴女が……全部これを?」
「え、えぇ……まあ一応私が……」
「す、凄いです!! オークは普通冒険者が5人係でやっと倒せるような魔物。それを何頭も……貴女一体何者ですか!?」


ーーーーー


 翌日の朝、俺とエリフォラがクラウディアの元に向かっている途中。周りの人達から 【怪力のクロア】 と呼ばれる事になった。
 ちなみに昨日の儲けは金貨57枚。オーク1頭が金貨1枚と高価な為、57万の儲けを1日で叩き出したのは、あのギルドでは俺が初めてらしい。


「ふふふ、怪力のクロアちゃんは有名人ですね」
「怪力じゃないんだけどな……」


 身体能力半減というのがあるのに、何故怪力と呼ばれるのかというと。オークは魔法が効かない。硬い肌は魔法すらでも傷がつかないで、剣で攻撃してもほとんどは刃がボロボロになって戦えない。
 俺は、光の速さで斬った事でオークを簡単に切断出来ただけだ。別に怪力だから斬れた訳じゃないのに、周りが勝手にそう勘違いしている。


「怪力のクロアちゃんっ!」
「何回も呼ぶな恥ずかしい……」


 エリフォラが楽しそうに名前を呼んで、ルンルンスキップしている。恥ずかしいのに強く言い返せない俺の心の弱さを誰か責めてくれ。

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