女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

148話 別れと始まり



 次の日、朝から学園の男の先生がやってきた。
 寝ていたルイスを起こして、準備をさせているのだが……もうすぐルイスがいなくなってしまう、と考えると辛くなる。
 ルイスと一緒に居るのが当たり前だった。家に帰れば、ルイスがすぐに来てくれた。ルイスといると、とても安心して落ち着いた。


 自立する為の学校だというのに、俺が子供に依存してては恥ずかしいな。


 ルイスが先生と手を繋いで、靴を履いた。


「ルイス……」


 自然と口から声が漏れた。言ってほしくない。まだ一緒にいたい。
 目尻が熱くなる。


「お母さん、俺頑張るよ。心配しなくても大丈夫」
「っ……元気で……いるんだぞ……?」
「うん。お母さんこそ」


 リグが俺の肩に手を乗せて、優しく叩いた。


「お母さんの事は俺に任せろ。お前もいつか、守ってやりたいっていう人を見つけるんだぞ」
「お父さんみたいに頼れる男になるよ。それじゃ」


 ルイスが手を振った。


「っ! ルイスッッ」
「おっ、お母さん」


 俺は最後にルイスに抱きついた。


「困った事があったら先生に頼るんだよ。それと……アノス、ルイスと一緒に行ってあげて」
「キュッ?」
『それは……どうしてですか?』
「もしルイスの身に何かあったら、真っ先に私に知らせに来ること。極力ルイスの事を守って。お願い」


 そういうと、アノスは「分かった」とだけ言ってアノスの頭の上に乗った。


「ルイス……頑張るんだよ」
「……うん。ありがとう、お母さん。それじゃあ」


 今までずっと耐えていたのだろうか。ルイスの目元が赤くなっていた。すぐに背を向けて、先生と歩き出した。


 自然とルイスの方に手が伸びていってしまう。


「クロア、ルイスは今から新しい生活が始まるんだ。ただの別れじゃない。俺達だって、仕事を始めなきゃならないだろ?」
「……ふぅ〜〜っ……」


 ルイスの姿が見えなくなるまで手を振り、俺は一度深呼吸をする。


 この家に残っているのは、俺、リグ、サタナ、エリフォラ、ミリス、バルジ。俺とリグとサタナとエリフォラで仕事をしなければならない。


「……いつ行くんだ」
「いつだっていいさ。しばらく休むか?」
「僕ちょっとだけクロアに釣られちゃって泣いちゃった」
「まあ、サタナさんは愛を知っているのですね」


 どうするか。まだ朝だし、昼食を食べてから行ってもいいな。


「じゃあ昼まで……休もう」
「朝食を作りましょうか?」
「ん〜いや、食欲ないし」


 俺は少し足早に寝室に向かっていった。少し冷たい対応だっただろうか。
 でも、ちょっと気を緩めたらまた泣き出してしまいそうだったから、先に布団に潜って涙を拭いた。
 すると次々と涙が溢れてきた。一気に胸が苦しくなり、ルイスの暖かい身体を抱きしめたくなった。


「クロア、泣くな」
「っ……リ……グ」


 顔まで被った布団を剥がされて、リグが横に寝てきた。


「ルイスがいた頃を思い出すより、今からの事を考えた方が良いんじゃないか」
「……少し抱きついてもいい……?」
「ああ……ちょっ、力強っ……」


 リグに抱きつくと、涙が収まって胸が暖かくなった。このまま眠れそうだ。


「可愛い笑顔しやがって……」
「何か言った?」
「……少しは元気でたか」
「ああ、ありがと」


 リグを抱きしめながら、そのまま眠りについた。


ーーーーー


ーーーーー


 昼になり、俺達4人は珍しく一緒の話題について話していた。
 俺、リグ、サタナ、エリフォラは一緒に冒険者の仕事をするからだ。経験のあるリグの話だと、鎧や剣はギルドから支給されるらしい。が、性能はイマイチ。


 自分の持ってる剣を使った方が良さそうだ。


「ちなみに、冒険者は最大8人のパーティを組める」
「おお、パーティ」


 リグの話しを、残りの3人は熱心に聞いた。近くにいるミリスとバルジは、そんな4人を微笑ましげに眺めている。


「まず、冒険者には階級が存在する。そしてそれを確認する証となるのが、このカードだ」


 リグがポケットから白いカードを取り出した。


「これは冒険者カードといって、表面には何も書かれていないんだが、中に冒険者の情報が詰まってたりする。
 依頼をこなしていくと、ギルドから報酬と貢献ポイントが手に入り、そのポイントが一定数溜まると階級が上がる。するとカードの色はより豪華な物になっていく」


 なるほど。ハ〇ターランクのような物か……やはりゲームっぽい。


「パーティを組めば、貢献ポイントと報酬は人数分平等に分けられる。一人一人の報酬は少なくなるが、その分依頼も楽に手っ取り早く終わらせられる」


 周回プレイ可能……っと。


「まあ後はギルドに着いて実践形式で説明した方が良いだろう」
「ごちそうさまっ!」


 俺は昼食を食べ終えて、食器を台所に運ぶ。


 やる気が出てきたぞ。

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