女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

140話 デートです



 次の日の朝、目を覚ますとエリフォラが先に起きていた。


「随分と早いな……」
「一緒にお散歩に行けると考えたら、早起きしてしまいました」


 俺はまだ眠いからこのまま二度寝したいのだが、エリフォラを待たせる訳にも行かないし起きるか。


「〜〜っっっ……はぁ……」


 身体を起こして背伸びをした後、力を抜いてまた横になる……。
 はっ、二度寝しようとしていた。


「よし、起きる……」


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 お互いに準備を済ませ、朝からホットミルクを飲んでいた。
 冷える朝こそ体の芯から温かくならないとな。


「ふ〜っ……ふ〜っ」


 ふとエリフォラを見ると、ホットミルクを両手で持って必死に息で冷やしていた。


「そこまで熱くはないぞ」
「そ、そうですか。……ぷぁッ!!」


 どうやらエリフォラは猫舌のようだ。


 そんな平和なひと時を過ごしていると、扉がノックされた。


「魔王様、クロア様、失礼します」
「どうぞ〜」


 そうして部屋に入ってきたのは、メイドの女性と昨日の少年。


「お前……何しに来た」
「クロア様落ち着いてください。この方は謝りに来たそうです」


 謝りに……? 殺人未遂やらが謝って済むような問題ではないだろう。


「っ……ずみまぜんでじたっ!」
「本当に反省してるのか?」
「はいっ!」
「じゃあ、そこに両膝つけろ」
「……? は、はい」


 少年は命令通り、両膝をついた。


「両手を前に置け」
「はい……」
「頭を地面まで下げろ」
「……はい」
「そのままもう一度誤れ」
「すみま……せんでした」


 まあこのくらいで許してやろう。殺人未遂を土下座程度で許してもらえなんだから感謝してほしい。
 メイドに目で終わったと伝えると、そのまま少年を連れてさっさと部屋から出ていった。


「ふぅ……エリフォ……」


 力を抜いてエリフォラの方を見ると、口を開けてボーッとしていた。いや、口から魂が抜けようとしていた。


「お〜いエリフォラ」
「はっ! す、すみませんつい」
「ついってどういう事……」
「クロアちゃんが怖かったので」


 そ、そんなに怖いか……?


「声だけで人を殺すような物です」
「そこまで言わないでくれ……」


 怒ると男の自分が出るんだ。普段なるべく女のような高さで喋るようにしているが、男となると自然と低い声で喋ってしまう。


「でも私の為にそこまで怒ってくれるなんて……凄くカッコいいです」
「そ、そうか。ありがとう」


 何照れてるんだ俺は! カッコよさは女には必要ないだろう。


「では、そろそろ街にデートをしに行きましょう」
「で、デートとは違うけど、行こうか」


 俺達は軽く準備した荷物を持って、城の外に出た。


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 街に到着し、改めて文化の違いを知らされた。
 この国の建物は大きな木の柱を支柱に骨組みが作られていて、壁も木の板。その割にはかなり大きい建物が並んでいる。建築技術はかなりあるようだ。
 しかし、どこの国も城だけは鉄やガラス等。あまり見ない素材で作られている。不思議だ。


「私が色んなところを紹介するので、旅行感覚で着いてきてください」
「分かった。……いや、大勢の人に注目されながら旅行感覚は分からない」


 住宅街を歩いているのだが、周りにいる獣人やエルフなんかがエリフォラを見て驚いている。


「私、普段外に出ないんですよ」
「あぁ……だから驚かれてるのか」


 まあ俺も前世じゃインドア派だったし、無理矢理外に連れ出す人間じゃない。だが、俺がきっかけで外に出るようになったら嬉しい。


「それで、紹介する場所なんかは分かるのか?」
「はい! たまに外に出る時に行く場所を紹介します」


 ほぉ、エリフォラが必ず向かう場所か。気になるな。
 そのままエリフォラの後ろについていくと、一つの大きな建物の前にやってきた。
 とても分かりやすく、建物の前には沢山の本が置かれている。


「本屋さんです」
「私この国の文字読めないんだけど」
「大丈夫ですよ。私が読んであげますから」


 エリフォラが本屋の中に入っていったので、仕方なく俺も入ることにした。


 当然、沢山並んでいる本の中に俺が読めるような本は無い。


「私、このシリーズの本が好きなんです」


 エリフォラが取った本の表紙には、ハートの中に女性と女性とシルエットがある。


「なんて名前の本なんだ?」
「えっとそれは……」


 ああ、エリフォラの趣味か。なるほどなるほど、レズか……はぁ……。どうして俺の周りには女好きが多いんだ。

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