女嫌いの俺が女に転生した件。
139話 お説教タイムと神の悩み
俺が少年にお説教したいと言うと、エリフォラは受け入れてくれた。
その後、少年が目を覚ましたと聞いた俺はすぐに少年のいる部屋に向かった。
エリフォラは特に気にしていないようだが、これは流石に説教程度で終わる話じゃない。前世じゃ犯罪として扱われているんだ。
部屋の前にやってきて、扉をノックする。
「入るぞ」
「……」
返事は無い。だが、俺はそのまま扉を開けて入る。
「なっ……」
「うわぁっ! み、見るなぁぁぁっっ!!」
少年は下半身を露出させて、本能のままに手を動かしていた。
それを見た俺に向かって、炎魔法を使ってきた。
「やっやばい! どうしよう! 殺しちゃったっ!!」
「生きてる……勝手に人を殺すなガキ」
「よかった……って、あっ!! あの女の人っ……」
俺が誰か気づいた時には既に手遅れ。俺の中にはイライラメーターがマックスに到着している。
「とりあえず座れ」
「はい……」
少年と向かい合うように座った。
「おいガキ、ここがどこだか知ってて入ってきたのか?」
「……知りませんでした……」
「嘘つくんじゃねぇよ。城だって一目見りゃ分かるよな? お前は覗きにきたんだろ? それも魔王が入っている時間を狙って」
「ご、ごべんっ……なさい……っ」
少年は鼻水と涙を流しながら謝っている。が、その程度じゃ許されない罪を重ねた。
「この部屋に入ってきた時魔法を使ったよな。あれ俺か魔王じゃなきゃ死んでたからな?」
「はい……」
「人を殺したら、次死ぬのはお前だぞ?」
「……はい」
はいはいばっかり……本当に理解してるのだろうか。
「お前、俺の裸見て気絶した後ここで何してた」
「……」
「言えよガキ」
「……」
「おい?」
「……」
顔を覗き込むと、白目を向いて失神していた。
「はぁ……クソ……」
久しぶりにこんなに怒ってしまった。こんな奴は放っといて寝るか。
少年の部屋から出て、エリフォラの部屋に戻った。
ーーーーー
ーーーーー
「あの子はどうなりました?」
部屋に戻ると、人形を抱えたエリフォラが早速聞いてきた。
「説教してたら気絶したっぽい」
「ど、どれだけ怖いのでしょうか……私もクロアちゃんに怒られないようにしないと……」
「怒らないって。犯罪起こさない限り」
俺って怒ると無意識に一人称が『俺』になるっていうのは良い経験になったな。まだ俺にも男の心が残っていたという事だ。
「疲れたし寝よう」
「そうですね。一緒に寝ましょう」
エリフォラがベッドに寝ると、横をポンポンと叩いて 「どうぞ」 と言ってきた。
「私はペット?」
「違います、友達ですよ。一緒に寝ましょう」
横に寝ると、エリフォラが抱きついてきた。
「エリフォラ……?」
「はっ、すみません! ついいつもの癖で……い、いえ! いつも人形を抱きしめて寝てるとか、そんなんじゃないですよ!?」
「そんな事は言ってないけど……うん。別に抱きついてもいいけど、寝るからな?」
「っ……はいっ!」
エリフォラは身体を丸めて俺に抱きついてきた。
かなり寝にくくなったが、今日一日で疲れが溜まっているせいであっさりと眠れてしまった。
ーーーーー
「やっほ〜」
「あ、イザナミ」
久しぶりにイザナミの元にやってきた。
「なんか元気ないな?」
「そんな事ないよ。それよりルイス君について質問あるんでしょ?」
「あ、あぁ。ルイスが天使になったんだけど、天使になったメリットは?」
今日はいつものように長い話がないな。やはりイザナミの元気がない。もしかして、イザナギに会える方法が尽きて悩んでるんだろう。
神様も大変だな。
「天使になると、武器と防具なら何でも生み出せるようになるよ。そこまでは知ってると思うけど、実は凄い能力があるんだよ」
「教えてくれ」
ルイスの凄い能力か……気になるな。
「天界っていう世界があるんだけど、そこにいる下級天使を呼び出せるんだ〜」
「下級天使を……?」
「そ。天界の扉を空間に生み出すと、与えられた命令を忠実にこなす下級天使が、ルイス君の魔力量によって沢山呼べるんだ」
下級天使を沢山ねぇ……。
「あ、下級天使は魔物と同じで知性は全くないよ。ただ命令をこなすだけの機械みたいなもの。その代わりに一匹一匹の力は弱いけど、集まれば強い」
まあ使えない事は無いか。
「ありがとう」
「いえいえ」
「イザナミの悩みも聞くだけ聞いてやるよ」
「えっ」
いつもみたいに口うるさいイザナミじゃないから、何か寂しいしな。いつもの調子に戻ってほしい。
「何に悩んでるんだ?」
「実は…………いや、いいよ。神である私が何とかしなきゃいけない問題だし。君達は普通に過ごしてて問題ない」
「そ、そうか? 早く元気出せよ?」
「大丈夫! なんたって私は偉い神様なんだから! 頑張るよ! じゃあね」
そして俺の意識は遠くに離れていった。
イザナミの最後の表情は、とても苦しそうな顔をしていた。きっと大きなどうしようもない悩みを抱えてるのだろう。
それを意地でも自分でなんとかしようと、1人で抱え込んでいる。
今度あった時は、もっと色々と話してやろう。
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