女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

128話 クロア、唯一無二の愛



 噴水広場に到着すると、丁度ミリスとバルジが歩いてきていた。どうやら同じタイミングに帰ってきたようだ。


「お〜い」


 2人に手を振ると、すぐに駆け寄ってきた。


「待たせてごめんね〜」
「いや、私達も今来たところだ」


 バルジの両手には何かが沢山入った袋がある。ほとんどが食材やオモチャ、お菓子なんかだ。
 もっと自分の欲しい物を買ってくれば良かったのに。俺なんて自分の気になる本とルイスの本の計3冊程度しか買ってないからな。


「僕が荷物全部持つよ〜?」
「そういうのは男だけでいいのよ。ね? バルジ?」
「ああ、俺とリグリフは荷物持ちだ! 女は背中を追いかけろ!」


 普段は皆のお荷物なのに、今日は荷物を持ってくれるバルジが大きく見える。


「そろそろ帰る? 日も沈んできたわ」
「そうだな。帰って夕食食べよう!」


 二人共元気だな。久しぶりのデートでテンションが上がったのだろう。


ーーーーー


 家に帰って、俺達は椅子に座ってミリスとサタナが料理を作るのを待機。
 この間、ルイスには買った本を読ませている。


「ママこれなんて読むの?」
「かみさまって読むんだよ」
「かみさま……? ママもかみさま!」
「ま、まあそうだな」


 ルイスには見えてるんだろうな。宙に浮かぶ文字が。


「リグ、お前もたまにはルイスと遊んでやれよ」
「いやぁ〜……ルイス頭良いからさ、クロアと勉強してた方が楽しいんじゃないか? なぁ、ルイス」
「うん。僕ママとおべんきょうしてた方が楽しい」
「ふふふ〜ん」


 嬉しいな〜……必要とされるってこんなにも幸せな事なのか。


「よしよし」


 俺がルイスの頭を撫でると、身体を俺に預けてきた。やっぱり可愛い。


 その後、夕食も食べてルイスを寝かせつけた後。俺はリグと庭に出て椅子に座った。
 特に話すことは無いのだが、星を見上げたい気分だ。


「決めたぞクロア」
「何が?」
「今度2人きりでデートしよう」
「ふ、2人きり……? バカ?」


 ルイスはどうするんだ。


「バ、バカってキツイなぁ……。いやほら、たまには2人きりの時間ってのも良いじゃん?」
「今2人っきりだけど?」
「どう説明したら……」
「はぁ……2人で思い出作ろうって事だろ? ルイスはサタナに預けて、2人で旅行とか?」
「分かってるのかよ……」


 リグと2人で旅行……に行くとしたら、普通にルイスも連れて行きたいよな。でも2人きりのデート……か。なら近場が良い。


「じゃあこの国の綺麗な場所巡りでもするか?」
「綺麗な場所か……いいな。まだこの国のほとんどを見てないもんな」


 小さい頃にティライと行った川の流れる坂にも行きたいしな……懐かしいな。あそこで俺は細かい魔力コントロールのコツを掴んだんだっけな。
 いや……でもそこに行くならルイスも連れていきたい。


「なぁリグ。ルイスを連れていかない理由って何だ?」
「そりゃあ、クロアを独り占めしたいからに決まってる。最近ずっとルイスに構ってて俺も寂しいんだ」


 なるほどね。


「じゃあ今度デートだな。ルイスはサタナと私の両親に任せる」
「楽しみだなぁ……一緒に美味しいもん食べような!」
「尻尾暴れすぎ」


 リグは感情がすぐ表に出るから可愛いな。男のくせに俺より女子力高いような……それでたまに頼れるギャップ。


「……やっぱり、私はリグが一番好きだな」
「ほぁ……?」
「この先、どんな人物が現れようと恋愛的に好きになるのはお前しかいない。だからリグも私だけを好きになれよ」
「っ…………」


 リグの目が大きく開いて、口をパクパクさせている。


「……あほ」
「んぐっ!?」


 ワニ捕獲のように、リグの口と鼻を片手で掴んで塞ぎ、そのまま鼻先にキスして部屋に戻る。


 うん。これが俺が出せる精一杯の愛情表現だ。


「あれれ〜? クロア顔が赤いよ〜?」
「キュ〜キュキュ」
「あらあら、ふふ」
「俺の娘に何をしたあの男……」


 そんなに顔が赤いか。
 後ろを振り返ると、リグは座ったまま固まっていた。


 俺の愛情は伝わっただろうか。
 前世を含め、俺が心の底から恋愛的感情を抱いたのはリグが初めてだ。リグに対する愛は誰よりも大きいぞ。


「サタナ。今度リグとデートするから、ルイスは任せたよ」
「えぇ〜? 僕もクロアの飼い犬になりたいよ〜」
「サタナの言う飼い犬と意味は違うけど、もうそのポジションはリグで確定してる」
「分かったよ……楽しんできてね〜」
「キュッ!」
『サタナが変な事をしないように見張ります!』


 アノスが頭の上に乗って鳴いた。
 いつかきっと、この家庭に成長したルイスが混ざって会話出来るんだろうな。
 その時まで楽しみに生きていよう。

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