女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

121話 リグリフの必要性

 俺が20歳になって後日のルイス1歳の誕生日。いつもより栄養のあって美味しい物を食べさせた。


「ルイスは食べるの上手だな〜」
「そうね〜……」


 ミリスとバルジが些細な事でも褒めるようになっている。俺も褒めた方が良いのだろうか。
 人を褒める事が苦手な俺は、どこを褒めたら良いのか分からずに結局食べる事に集中した。


「ママは食べるのじょうず」
「っ……あ、ありがとう」


 ルイスに褒められてしまった……。
 子供に先を行かれたような気がして、嬉しさと悲しさがやってきた。


「ルイスはママが大好きだもんな〜」
「リグ変なこと言うな」
「だいすきママ」
「……う、うん」


 なんだこれは!? 俺は家族達の前で何を期待されてるんだ? 新手の拷問か? 俺がデレるのを待ってるとでも言うのか?
 皆を見ると、俺とルイスを見てニヤニヤしていた。


「母親なら愛を受け止めてやれ」
「ど、どど、どうやって……?」
「大好き〜って言って抱きしめてやるんだよ」
「そっそんな! 女々しい事できるかッ!」
「クロアらしいなぁ〜」


 ただどうやったら愛を受け止められるのか……。恥ずかしくない範囲で……。


「わ、私も……大好きだからな」


 そう言って頭を撫でてやるくらいだった。
 撫でているとルイスが笑顔になったので、釣られて俺も笑ってしまった。


「女々しい事は嫌がるのに、女々しいよな」
「何言ってるか分からない。食べたらさっさと後ろのキッチンに置いてきて」
「最近俺に当たりきつくねぇか……」


 リグは俺の夫になったんだから、気なんて使う必要ないだろ? 家族っていうのはそういうもんだ。


ーーーーー


 そんな何気ない日常のような誕生日も終わり、数日が経過した。
 ルイスは自主的に魔法を練習していて、今のペースじゃ俺を超えてしまいそうな勢いだ。それに謎の能力によって、空中に浮かんだ剣がグルグルと回っている事もある。
 危ないから注意すると、剣はゆっくり元の場所に戻されたりと。基本的に謎の能力はルイスの意思で動いている。


 そして今日は、ミリスとバルジは出掛けていて、俺とリグとサタナとアノスでルイスを庭に出して遊ばせる事にした。


「ここからお父さんのとこにまで歩いてごらん」
「嫌だ。ママのとこがいい」


 しかしルイスは俺から離れない。ずっと足に抱きついたり、腕に抱きついたりしている。


「どうして僕やリグには懐かないんだろ〜ね〜?」
「それだけクロアの母性が強いんじゃないか?」
「何言ってんだか……私の方が頼れるから来てるんじゃない?」


 ルイスはずっと俺に抱きついたまま離れない。まるでコアラのようだ。


「じゃあ一緒に散歩しようか」
「さんぽ?」
「うん。一緒に庭を歩こう」
「わかった」


 ぬぁぁぁぁぁあ俺の言うことをなんでも聞いてくれる可愛い生物がここにっ!! どうして俺は我が子に弱いんだ!


 俺がゆっくり歩くと、俺のズボンの裾を掴んだルイスも歩き出す。……可愛い。


「なんだこの可愛い行進は」
「二人共可愛いからね〜」
「うるさいな〜二人共何かしてやったらどうなんだ?」
「出来ないよ〜クロアに懐いてるもん」


 二人共使えないなぁ……邪神ならもっと凄いところを見せてほしい。
 ……いや、下手したら洗脳して懐かせたりする可能性があるからやめた方が良いな。


 しばらく歩いていると、ルイスが地べたに座った。


「どうした?」
「つかれた」
「疲れたか〜よしよし」


 疲れても可愛いなぁルイスは。何言ってるか分からないけど。
 俺はルイスを抱っこして、微笑ましそうに見ていた二人の元に行く。


「私は見世物じゃない」
「俺に何かしてやれる事ないかって探してたんだけどよ」
「うん」
「クロアとサタナがいれば、殆どの事教えれるんじゃないか?」


 ……まあ、そうだな。確かに俺とサタナさえいれば剣術も魔術も教えれるし。数学も教えれる。


「おしっこの方法とか教えてあげなよ。そろそろオムツ終わりにして」
「そ、それはまだいい。それ以外に俺に出来ることってなんだ?」
「まあ……家族を守ってやるくらいだろ?」


 それも俺とサタナがいれば大丈夫なんだけど、リグがいる事が大事だ。
 それにリグが笑うと怖いからな。


「ほら、誘拐事件とか。もしもの話だけど、ルイスが誘拐された時は匂いで犯人探せるし」
「俺は警察犬かな……?」
「あっ! 後モフモフできるよね!」
「あぁ、それで床掃除できる」
「酷くないか!?」


 冗談は置いといて、リグは嗅覚聴覚が優れている。それに狼だから集団行動のリーダーに向いている。
 もしもの事態には、率先してリーダーになってくれるだろう。


「とにかくさ、リグは一緒に居てくれるだけでいいんだよ」
「そうか……」
「クロアはリグリフがいなくなったら寂しくて泣いちゃうもんね〜?」
「よしサタナ。部屋の掃除頼む」
「ごめんなしゃい」
「ママとパパとこの人おもしろい」


 ルイスに "この人" って呼ばれてるぞ。良かったなサタナ。


「あは♡ 名前覚えられてないってちょっと良いかも」


 そうだ。サタナはドMだったんだ。

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