女嫌いの俺が女に転生した件。
114話 転移者達とお話
夕食を食べてしばらくゴロゴロしていると、ベリアストロが帰ってきた。
「あ、おかえり」
「ただいま。見慣れない服装の人を3人ほど見つけたから、説明して戦闘部隊に入れたわ」
セ、戦闘部隊に入れた? 元日本人がいきなり戦闘の世界に入ってきても大丈夫なのか?
クラウディアがコップに水を入れて、椅子に座って一息をついた後。話を再開した。
「かなりはしゃいでるみたいよ。いきなりゴブリンを50匹以上殺してたもの、訓練を受ければかなりの戦力になるわ」
「それで、戦闘部隊のどこに?」
「第3部隊。ここの隣ね」
いきなり第3部隊か。やはり転移者は優遇されるんだな。
ベッドから起き上がって、リグの方を見る。
「挨拶、しに行った方がいいか……?」
「さぁ……どうなんだ? ベリアストロさん」
「まあ、挨拶程度ならあちらからしに来るでしょうし、クロアさん達は部屋でゆっくりしてていいわ」
そうか。
改めてベッドに横になって目を閉じる。
「明日も朝から転移者達の捜索に取り掛かって、食事の時には帰ってくるわ」
「ああ、クロアやソフィアは俺に任せてくれ」
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次の日から、クラウディアとベリアストロはほとんどいない毎日が始まった。
俺とソフィは基本的に部屋でゴロゴロ。たまに外をゆっくり散歩している。
大体20日くらい経っただろうか。国に転移者が100人以上集まってきている。
窓から見た時は、学生服を着た集団が笑いながら歩いていた様子があった。集団転移とかもあったのだろう。
その時から、俺の身体に変化が現れ始めた。腹部違和感、そして何もしていないのに疲れて眠くなる事が多くなった。
ベリアストロが作ってくれる食事を残さずに食べ、その後は寝て。
それでも1日がかなり長く感じられた。
そして今日、部屋に転移者が訪ねてきた。
「初めまして。今日から第二戦闘部隊に入ることになっケンジです」
「あ、初めまして」
日本人らしい顔に、茶髪。筋肉も程よくついてモテそうな青年だ。
いきなり第二部隊。他は第三部隊なのに、この人だけ第二という事は何か特別な事情があるのだろう。
ケンジがしばらく俺の目を見つめると。
「妊娠してらっしゃるんですか?」
「……はい。まだ4週間くらいですけど」
「大変でしょうけど、頑張ってください。では失礼します」
ケンジがニコッと微笑んだ後、去っていった。
意外と転移者って異世界慣れしてるんだな……。
「クロア、なんだった?」
リビングに戻れば、早速リグが聞いてきた。
「転移者のケンジ。多分高校生くらいかな、いきなり第二戦闘部隊に入ったって」
「第二戦闘部隊にねぇ……」
「あ、それと、いきなり私が妊娠してる事に気づいてきやがった。どんな能力だ」
「いや、それは雰囲気で分かると思うぞ」
雰囲気? 俺が妊娠しているような雰囲気を出していると?
「良い感じにエロい人妻感出てる」
「それお前の妄想だろ。エロくない」
「まあいい。とりあえずそうイライラしないで、ゆっくりしよう」
別にイライラはしてないんだけどな……俺そんなに顔怖いか。
ベッドに寝るとリグも横に寝た。温かい体温が伝わってくる。
「な、なぁリグ」
「ん?」
「もう発情期は終わったのか?」
「ああ……クロアを妊娠させたって意識すると、自然と発情期終わった」
何その役目を終えたからもう大丈夫だ。みたいな言い方。
「最近、私とのコミュニケーションが少ないように感じるんだけど?」
「それはいつも寝てるからだろ。俺だってクロアとイチャイチャしたいけど、いつも疲れてる顔してからさ、気使うんだよ」
別に疲れてはいないけどな。まあ腹がチクチクして集中できないってのはある。
「気使わなくていいよ」
「そうか?」
「ああ。ふあ〜〜っっ……とりあえず寝る」
大きな欠伸をした後、左にいるリグに体を向けて目を閉じる。
「おやすみ」
リグに頭を撫でられながら眠った。
ーーーーー
ーーーーー
それから数週間。気分の悪く、食欲の出ない毎日が続いた。お腹も少し大きくなった気がする。
基本的に、食事はバランスよく取れているが多くは食べれていない。
リグが心配してくるけど、その度にベリアストロが大丈夫だと言ってくるので、リグの何とも言えない表情を見るのが癖になった。
そして何故か、隣のレヴィアタンの部屋が転移者達の人気スポットになっていた。
女子が集まれば恋バナ。男が集まれば戦いの話。寝てる時も声が聞こえてきて、その話を聞いていて楽しい。
今は男女混じって雑談してるみたいだ。
「隣にクロアっていう女性がいるの知ってる?」
「知らな〜い」
「知ってる人は数名いるぞ」
「うそ〜?」
お、俺の話だ。
「その人妊娠しててね、今あんまり人に会えないんだ〜」
「妊婦さん!? 私後で挨拶しにいく!」
「人妻かよ! お前ら行こうぜ!」
「あっ、迷惑かけちゃダメだよ〜?」
何で、自分のことを話されていると嬉しいんだろうな。
「そのクロアって人、どんな人なの?」
それは俺も知りたい。普段レヴィがどう思っているのか。
「えっとね〜……とっても可愛くて、男よりも頼れる人だよ。でも基本的には怖がりで、か弱くて、恋愛に感じては奥手」
「強がりな女性か……俺の好みだ」
「お前きもっ」
「お前! 今日初対面の俺に言うか!?」
「「あははははは」」
随分と盛り上がってるなぁ。
俺は目を瞑りながら、更にその話に耳を傾けた。
「クロアちゃんは実は凄い人なんだよ。見た目や雰囲気は普通なんだけど、これ聞いたらビックリするかな〜」
「なになに〜!」
「教えてくれ!」
「2人の神様と契約していて、更にはクロアちゃん自身も神様になったの。それで上級の悪魔に致命傷も与えたんだよ」
「それって凄いことなんですか?」
やっぱり戦闘をまだ知らない子達には伝わらないよな。くぅ〜……俺もその部屋に入ってワイワイ話したい!
──ガチャッ
「すみませ〜ん、クロアさんいますか?」
「あ? あぁ、クロアなら寝てる。起きたら教えるよ」
どうやら俺の様子を見に来たようだ。
「わぁ〜! 綺麗な人!」
「美人だ……」
「貴方が夫さんですか?」
「夫さん……ま、まあクロアの夫になったリグリフだ。よろしくな」
「一緒に来て話しませんか!? 聞きたいことがあるので!」
「ああいいぞ」
リグが子供達に連れ去られてしまった。
その間、俺は眠気に耐えきれず起きる事が出来なかった……。
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