女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

111話 黒狼のリグ 〜発情期〜

「帰ってきた〜っ!!」


 レヴィの声が聞こえて馬車の外を見ると、魔物達が行き交う街の景色が広がっていた。
 こうしてこの国の街を見るのは初めてじゃないだろうか。


「こ、ここが魔王の国……」
「ここにいる魔物は皆頭が良いらしいので、警戒する必要は無いですよ」


 頭が良くなけりゃ武器なんて作らないし、料理を作ることもない。魔物以外に魔族なんかもいるが、そういうのはほとんど戦闘部隊に配属されている。


「魔物同士が仲良くしているのを見ると、なんだか別世界に来た気分になります」
「魔物は縄張り争いが凄いからね」


 まあこの知識も本で得ただけだが。


「このまま真っ直ぐ城に行くよ〜?」
「よろしく〜」


ーーーーー


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「おかえり。それで、そこにいるのは何だ?」
「この前来た王子マローンの執事のケイさん。この国で住みたいらしい」
「は、初めまして魔王様……」


 ケイは魔王を目の前に、ガチガチに固まっている。


「ああ俺の事はクラウディアと呼んでくれ。知ってると思うが、この国は元日本人の俺が作った。よろしくな」
「なるほど。だからどこか懐かしい景色だったのですね」


 それで、ケイはこの国に来て何をするのだろうか。


「ケイさんはこれからどうするんです?」
「もし良ければ、クロア様の執事として働かせてほしいと」
「私の執事……? 執事なら、クラウディアの執事をしたらいいのでは?」
「どうだ? 俺の身の回りの世話をしてくれないか?」


 それ魔王が言うセリフか?


「こんな美少女の俺を世話できるんだ。どうだ?」
「え、あ……えっと……分かり……ました」


 ケイは断れないタイプのようだ。


「では、これからよろしくお願いします。クラウディア様」
「うむ、よろしく。それじゃあ早速だが、お前の部屋を用意しよう」
「えっ!? 私やレヴィには!?」
「寮があるだろう? 俺の執事には特別だ」


 かぁ〜っ! 俺が執事になれば良かった! 一人部屋羨ましい!


「さぁ来い。それとクロア、早く彼氏に顔を見せてやれ。寂しがってるぞ」
「分かった」


 そんなに日数は経ってないのに、もう寂しがってるのか。飼い主が出かけると寂しそうにするもんな、犬って。


ーーーーー


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「リグただいまっ!」
「っ! クロアァァ〜ッッ!!」


 勢いよく部屋に入ると、リグが犬のように抱きついてきた。


「大丈夫だったか!? 寂しくなかったか!?」
「あ、ああうん……何も問題なかったよ」
「リグリフさん、クロアさんが引いてるわ」


 リグの尻尾がバタバタと暴れている。これは構ってやった方が良さそうだな。


「はいはい。構ってあげるから」


 俺がベッドに座ると押し倒された。


「知らない男の臭いがするぞ!?」
「ちょっ! この前の王子に会っただけだから」
「かなり密着した臭いがする……」
「あ、あぁそれは、ただ襲われそうになっただけで」
「何っ!? あのクソ野郎! 俺のクロアに手を出そうとしやがって!」


 めんどくさい……。
 ベリアストロに助けを求めようと目線を送るが。


「私のクロアさんに……どいつもこいつもクソ王子ばっかりね……」


 そうだった。ここでまともなのは俺だけだった。


「ちょっ、リグ! ヨダレ垂れてる!」
「あ、あぁ悪い。この身体になってから興奮すると抑えきれないんだ」
「本物の犬みたいだな」


 いつか発情期が来て襲われるんじゃないか? ……人間と獣人の子供ってどうなるんだろうか。
 もしかして、ラノベみたいに人間の耳が動物の耳に変わって尻尾が生えるだけとか? それもそれでいいな。


 って、なんで俺は自分の子供の事考えてるんだ。まだそこまで覚悟出来てない。


「そういえばクロアさん、服買ったのね」
「ああうん、前の服は露出が高かったから」
「ダメじゃない。もっと肌は見せないとダメよ?」


 何がダメなのか分からない。


「はぁ……ソフィは?」
「たまたまワタルさんが来てね、今一緒に遊んでるそうよ」
「ワタルがっ!?」
「クロアさんに会いに来たと言っていたわ。許せないわね」
「ああ、許せないな」


 ベリアストロとリグはどうして意気投合してるんだろうか。俺が旅行してる間に何かあったのか?


「訓練はどうだった?」
「順調よ。リグリフさんのお陰で言う事を聞いてくれるわ」
「言う事をって……リグは何してるんだ?」
「ベリアストロさんに言われた通り、常にこうやって……笑顔で立ってたり、たまに指示するだけだけど?」


 いや……その笑顔が威嚇してるようにしか見えないから皆がいうこと聞いてるんじゃないか。


「とりあえず鏡見てこい」
「そんな酷い顔してる? 最高の笑顔って言われたんだけど」
「他の人からしたら恐怖だよ」
「み、見てくるっ!」


 犬のように走り去っていった。


「リグリフさんはクロアさんがいなくて寂しそうにしてたわ。ずっと玄関の方を眺めたり、窓の外を見たりしてるもの」
「そうなのか……しっかり構ってあげた方がいいか?」
「今日丁度2人きりの時間が出来そうだし、1発すればいいじゃない」


 なんてこと考えてるんだこの人は。


「そのまま子供が出来て、めでたく結婚したら派手に祝うわ」
「いやいい……子供とかそういうのは、育てる自信が無いから」


 そもそも、出産って凄い痛いんだよな。元男の俺が耐えられるかも分からないんだし、子供なんてまだ早い。


「それじゃ私は少し散歩してくるわ。その隙に済ませてなさい」
「しないからな?」


 ベリアストロはニコニコしながら部屋から出ていった。


「確かにあれは笑顔じゃな……ベリアストロさんは?」
「散歩してくるって」
「そうか。それでクロア、ちょっとお願いがあるんだけど」
「ん? 出来ることなら手伝うよ?」


 リグが俺にお願いしてくるってかなり珍しいよな。寂しい思いをさせたんだし、今日くらいはな。


「その……性欲がさ……我慢出来ないんだ」
「…………」
「ベリアストロさん曰く、発情期らしい……だからその……本番はしなくていいから、抜いてくれないか?」


 性欲が溜まりすぎて頭でもおかしくなったのだろう。


「1人で出来るだろ」
「いや、クロアじゃないとダメなんだ……」
「なんで」
「好きだから……ほら、また……」


 股間に大きなテントを張っている。恥ずかしそうに顔を隠すリグが何故か面白く感じて、少しだけ虐めたくなった。


「そんなに性欲溜まってるんだ?」
「ああ……だから頼む……最近全然してくれないじゃないか」
「女になってからそういうの忘れちゃってさ、踏めばいいのか?」
「あ゛っ…………」


 テントの先を踏んだだけで、ドクドクと温かいものが足の裏に付いた。


「だから……やばいんだって……」
「なるほどね……」


 その臭い匂いに、思わず俺も興奮してしまった。


「じゃあ、性欲が収まるまで好きなだけして」
「良い……のか?」
「ほら、股開けば飛びついてくるんだろ?」
「っ!!」


ーーーーー


ーーー


「今日は遊んでくれてありがとう!」
「いいよいいよ。そろそろ部屋に帰って手洗おう」
「うん! クロアちゃん帰ってきてるかなぁ?」
「ん〜俺が来た時はいなかったし、きっとまだかな」


ーーー


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「ただい……ま」
「ひゃっ!?」
「どうしたっ……くっ……」
「いやっ! 見られっ、見られてるっ! 止めて!」
「やばいっ……一気にキツくっ……あ゛あ゛っ」
(何が起きているのかは敢えて書きません。想像した人は変態)


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ーーーーー


──バタン


「ソフィアちゃん、俺達は何も見てないよね」
「うん。まだ遊ぶ?」
「そうだね。今度は探検しようか!」
「分かった! ごー!!」


ーーーーー


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「すまなかった……」
「なんで人が来たのに気づかないんだよ……」
「夢中だったから……というか……中に出したけど、大丈夫なのか……?」
「妊娠したら責任とれよ」


 これはもう……ソフィにもワタルにも、顔を向けることができない。あんな恥ずかしい姿を見られて、いつも通り接することなんて出来ない。


「あと1回してくれるか……?」
「お前、バカ?」
「ごめん」

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