女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

89話 クロア達は第2戦闘部隊配属



「まあ改めて自己紹介といこう。俺はクラウディア、魔王やってるけど王らしい事は何一つしてない。よろろしく」


 人柄の良さが滲み出ている。こんな人が魔王やってるのかって思うくらい優しそうな表情だ。


「いい加減に口調どうにかならないの?」
「これが1番喋りやすいんだ。仕方ないだろ?」
「はぁ……私の事は知ってるから飛ばすけど、紹介するわね。
 学園に入ってすぐ魔力コントロールの授業を完璧にこなした生徒のクロアさん。
 そしてその恋人であり元不良、現冒険者のリグリフさん。
 最後に、クロアさんと共に学園を過ごしたソフィア」


 俺以外は随分と雑な説明だな。でもほとんど合ってるから何も言えない。


「俺はクロアがいいな」
「でしょう? クロアさんは入学当初から目をつけていたの」
「な、何の話だ?」
「好みの話よ」


 あぁ……そうか。クラウディアも元男だから普通に女が好きなのか。
 どうして俺の周りにはレズか集まってくるんだろうか……。


「でも胸だけを見ればソフィアがいい」
「私はクロアちゃんの物だもんっ!」


 ソフィが腕にしがみついてきた。


「でもやっぱり、俺はベリアストロだなぁ」
「やめなさい。私はクロアさんだけと決めたの」
「冗談だよ。で、今日は仲間になりに来たんだよな」
「ええ」


 やっと本題に戻ったようだ。


「経緯は分かった。が、本当に人類の敵となってもいいんだな?」
「ええ。世界が滅ぼされないにはそれしかないわ」


 事情を皆に説明したところで、魔王軍の仲間になるなんて言ったら怒られそうだし、皆にバレないようにしないといけない。


「アーガスにバレたら……どうなるか分からないけれど、私達はクラウディアに協力するわ」
「そうか、俺としても嬉しいよ。で、具体的にする事は決めてるのか?」
「それは魔王である貴方が指示する事でしょう?」
「……良いのか?」
「魔王軍に入った以上、魔王に従うのが必然よ。勿論ゴミのような扱いを受けたらタダじゃ済まないわよ」
「こえっ……」


 クラウディアとベリアストロはどちらが強いのだろうか。魔王って勇者より強いんだろ? でもベリアストロは……分からないな。
 ただ、今のところベリアストロの方が強そうだ。


「そうだな……じゃあ戦闘部隊達の訓練をしてくれ」
「それだけ?」
「ああ。ちなみに戦闘部隊にはアイツらもいるからな」
「大変そうね……まあ頑張るわ。私とクロアさんに任せて」
「クロアちゃん、君は戦闘経験はあるかい?」
「無い……けど神と契約してるから戦うことはできる」
「神と契約? もうしてるのか?」


 ん? 言ってなかったか。


「サタナキアとクロノスを、こことここに」


 契約の証がある場所を大体で指さした。


「クロノスはいいとしてサタナキアか……」
「何か問題が?」
「サタナキアって邪神だよな? だとすると、今俺の戦闘部隊にいる神とは仲良くできそうにないんだ」
「戦闘部隊にいる神って……どのくらいいるんだ?」
「イザナミの道具にされないように集めてるからな、ざっと数えて20人くらいか」
「えぇ……」


 20人も神がいるのなら魔王軍は最強だな。もし全員で国を攻めたら対抗する手段は無い……というか、普通に世界を滅ぼせる。


「ほら」
「うわっ……」


 クラウディアがロングドレスのスカートを捲ると、その足には大量の契約の証があった。


「クラウディアの身体にイザナギ呼ばれるんじゃ……」
「ああ大丈夫だ。俺は無敵だからな」
「そ、そうなのか」


 しかしおぞましい程の契約の量だ。脳内がうるさくて鬱にならないのか。


「まあとりあえず、皆は第2戦闘部隊に入れる」
「あら、第1じゃないのね」
「第1は忙しいからな。2くらいが丁度良い」


 第2戦闘部隊か。言葉の響きはカッコイイな。


「んじゃ、4人とも同じ部屋で良いか?」
「皆、それでいいわね?」
「えぇっと……よく分からないんで、それで良い」
「俺も大丈夫」
「クロアちゃんと同じ部屋なら」


 一応部屋も用意されてるんだな。良かった。


「部隊ごとに寮みたいなのを作ってあるから、同じ部隊の仲間と仲良くするんだぞ」
「言われなくても分かってるわよ」
「はいはい。じゃあ鍵渡すから行ってこい」
「はぁ……雑なんだから」


 ベリアストロが珍しくため息を吐いている。


「ベリアストロとクラウディアってどっちが強いんだ?」
「クラウディアよ」
「ふっ……俺は世界を支配する為に生まれた存在なんだ。尊敬してもいいぞ」


 ベリアストロより強い……!? な、なんか感覚が麻痺してきた。ベリアストロは王国騎士団の幹部だったんだよな? それよりも強いってことは……アーガスより強い?


「契約した神を使えば、もっと強いがな」


 もう魔王だけで全てを解決できそうだ。


『僕より強いからね〜ヤバいよ』
『同じ転生者で良かったですね、クロア様』


 サタナキアやクロノスよりも強いってことは、つまり魔王に逆らえないって事だ。勿論逆らうつもりなんて全く無いけど、あまりに強すぎて感覚が麻痺してきそうだ。


「じゃあ行くわよ」
「あ、ああ」


 学園長に肩を触れられて、俺達4人は第2戦闘部隊の寮まで転移した。


「一番左端の部屋。覚えるのよ」
「あっ! ベリアストロさんじゃないですか!」
「あら、レヴィアタン」
「ティラッ……!」


 ティライの姿で手を振りながら近づいてきたから、本当にティライかと思った。


「あ、こんにちは〜レヴィアタンです」
「どうも……クロア……です」
「皆の事は記憶にあるよ! しっかり覚えてるから」
「……え?」
「死んでも脳はそのままだから記憶持ってるんだよ。クロアちゃん久しぶり!」
「えっと……久しぶり……」


 あれ、この人はティライじゃないのに涙が出てきた。凄く懐かしい雰囲気で、涙が止まらない。


「でも私はレヴィアタン。魔王様の第2戦闘部隊のリーダーとしてここに住んでるから、たまに遊びに来るね」
「あまりクロアさんを苦しめないでね」
「ごめんね……ティライの身体勝手に使っちゃって」
「いやっ……いい……。1度だけ……抱きついてもいいかな……?」
「いいよ! おいで!」


 俺はレヴィアタン──ティライの身体に抱きついた。懐かしい匂い、1歳の時から一緒に過ごしてきた人の身体がここにある。中身は違っても、ティライという器はここにあるんだ。


「っ……ありがどうございまず……」
「ふふふ、懐かしい身体に会えて良かったね」


 敵としてではなく、味方として会えて良かった。


「たまに遊びに来てもいいかな?」
「はい……いつでも歓迎します」
「良かった。それじゃあ私はこれで、またね!」
「緊張は解せたみたいね。レヴィアタン、迷惑はかけないように」
「分かってるって! じゃ!」


 そういって隣の部屋に入っていった。
 え……? 隣人なの? ちょっと離れた部屋かと思ったら、まさかの隣と部屋だったとは……少しだけ嬉しい。


「今のティライじゃないの?」
「違うんだよ」
「良かったなクロア」
「うん……」
「それじゃあ部屋に入るわよ」


 鍵を開けて部屋の中に入ると、前世でよくあるような部屋があった。


「魔王の部屋って不思議なセンスなのよね……どうしたの?」
「あっいや」


 思わず俺とリグは立ち止まってしまった。
 でもこれが普通なのだろう。元日本人なら畳が好きで、漫画もあって、寝室もあって、カーペットもある。
 元日本人が王になれば、その国は日本語になる。そういう事だろう。


「日本語の勉強しなきゃね……」
「私とリグは大丈夫だ」
「あら? どうして?」
「えっと……図書室で勉強してたので」
「魔族語を?」
「ああ。だから読めない時は任せてくれ。な、リグ」
「あ、ああ」


 まさかこの世界で日本語を見るとは思わなかった。少し懐かしい気分だ。


 1冊漫画を手に取ってみる。
 絵もそこそこ上手だし、ストーリーはギャグ。でも日本人らしいマンガで馴染みやすい。


「流石魔王だな……」


 後でクラウディアに感謝しないとな。

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