女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

86話 卒業、そして帰宅



 18歳になり、俺はついにフロンガード学園を卒業する事になった。
 いままで指導してきた生徒達や、先生、俺のファン(?)等が俺の部屋の前にに集まってきた。


 だが、その前にする事がある。


「ソフィ」
「ん? どうしたの?」
「私は卒業して、1度家に帰ったら魔王のところに行こうと思う?」
「……? どうして?」
「事情は上手く説明出来ないけど、私の命の為なんだ。それで、ソフィはどうする?」
「私も行く!」
「……分かった。後で学園長に話してもらうよう頼む」


 今日は学園長の引き継ぎ式でもある。最終的に校門に集合して帰る予定だ。


 荷物を持って部屋の外に出ると、大勢の生徒が泣きながら俺の周りを囲んだ。


「クロア先輩〜……」
「また会いましょうね!」
「前から好きでした!!」
「先輩頑張ってください」


 花やネックレス等の様々なアクセサリーを俺に渡してきた。きっと思い入れのあるものを俺にプレゼントしているのだろう。
 ……もうすぐ俺がこの人達の敵になるなんて言えない。本当に。


「み、皆ありがとう」
「皆〜! そんなに集まってるとクロア先輩が動けないよ〜!!」


 他の女子生徒の指示もあって、なんとか学園の外まで出ることが出来た。


「学園長とリグを待とう」
「うん!」


 ソフィも18歳になったし、自分の生き方で進んでいってもいいと思うのだが、やっぱり俺に着いてくるみたいだ。
 昔の監禁事件で依存させすぎてしまったのかもしれない。恋人のように俺と腕を組んでいる。


「待たせたわね」
「準備完了だ」


 学園長とリグが転移でやってきた。


「じゃあ、皆に手を振って別れましょう」
「そうだな……」


 俺達4人は、いままで共に過ごしてきた生徒や、学園、教室、庭、全てに対し手を振った。


『物に命なんてないのにね』
『物を大事にする人の心があるんですよ。ね? クロア様』
『ん、ん〜……まあ物に感謝するってのは……うぅん……』


 神直々に物に命は無いって言われると、何も言えなくなる。
 校舎も喜んでるよ。って言いたかった。


「で、これからこの4人はどうするんだ?」
「私はクロアさんの家まで行くわ」
「私は1度家に帰る!」
「俺はクロアに付いていくが……ソフィはどうする?」
「転移でまたクロアちゃんに会いに行って、そのまま一緒に着いていく」


 ってことは、誰か転移の使える人が迎えに行った方がいいな。


 学園長が、俺がなぜ魔王に会いに行くのか理由を説明したが、それでも意見は変わらないようだ。


「じゃあ私はソフィアさんの家に着いていくから、二人共いってらっしゃい」
「ありがとう」


ーーーーー


ーーーーー


 俺は久しぶりに自分の家の外観を見た。


「ふぅ……緊張する」
「家族だろ。ノックしてただいま〜で大丈夫だ」


 玄関の扉をノックした。


「は〜い」


 家の中から懐かしい声が聞こえて、少しだけ息が苦しくなる。緊張する。


ガチャッ「どちら様……で……」


 扉が開いて、母ミリスと目が合った。


「……ただいま」
「ば、バルジ! クロアが帰ってきたわ!!」
「来たか!!」
「クロア〜っっ!! 愛しの娘……おかえり……」
「苦しっ……」


 早速抱きしめられた。


「こんなに大きくなって……もう大人の女性ね」
「おぉっ!! クロアァァァァァ!!」
「えふっ……」


 2人に抱きしめられて、苦しくなる。


「さっ! 家に入りなさい!」
「隣の人は……あぁリグリフさん」
「ど、どうも。お世話になってます」
「どうぞ家に上がってください」


 家に上がって、俺とリグは隣同士の椅子に座った。父と母とは向かい合うように座り、ニヤニヤと笑いながら俺とリグを見ている。


「もう大人ねぇ……おかえり」
「おかえりクロア」
「ただいま……お父さんお母さん」


 久しぶりに会う家族ほど気まずい空間はない。


「それで……二人共付き合ってるんでしょう? 早速どこまでいったの?」
「娘は渡さんって思ってたけど、リグリフさんなら安心だ」
「え、えぇっ!? どこまでって……」


 俺はリグの方を向いた。


「自分で言えよ」


 小さい声でそう言われてしまった……。


「えっと……一応しました」
「まあ!」
「なんだと!?」


 顔が熱い。自分の手で顔に風をやる。


「あらあら……それで感想は?」
「か、感想まで聞くのか!?」
「うふふ、冗談よ」


 エロい目をしやがって。


「帰ってきていきなりで悪いけど、学園のこと聞かせてくれる?」
「う、うん」


 俺はクロアと一緒に、いままで学園で過ごしてきた思い出を話した。
 たまにクロアが俺の恥ずかしい思い出を話したりするものだから、俺を監禁したことを言おうとするとすぐに謝ってくる。


ーーーーー


ーーーーー


──コンコン
「あら? 誰かしら」
「あっ、学園長かも」
「学園長さん? どうしてかしら」
「学園長辞めたって」
「えぇっ!?」


 ミリスが玄関に向かって、学園長とソフィを連れて家にやってきた。
 家の中にこの2人が来ると新鮮な感覚だ。


「元学園長のベリアストロです」
「これはこれは……いつもクロアがお世話に」
「そんなに畏まらなくてもいいですよ。私はもう学園長ではないので」
「いえですが、感謝するべき人にはそれなりの敬意を」
「バルジ……顔が赤いわよ」


 へこへこしたバルジを見るのも久しぶりだなぁ。


「今日は話があって来ました。クロアさん、リグリフさん、ソフィアさんは別の場所で待っていてね」
「あ、分かった。行こう二人共」


 魔王軍とかなんやらについて話すんだろうな。
 俺はリグとソフィをつれて、俺の部屋にやってきた、


「綺麗なまんまだ……」
「クロアちゃんの部屋だぁ〜」
「始めてきたな」


 5歳までしか使っていなかったのに、未だに綺麗なままの部屋。昔の思い出が蘇るな。
 とりあえずベッドの横に荷物を置いて座る。


「ソフィは親の許可貰ったのか?」
「うん! クロアさんのお陰で良い子に育ったって言ってたから」
「どうやらソフィの親はクロアを頼ってるみたいだな」


 そこまで信頼されても困るんだがな。


「リグは親とかって……」
「あ〜一応いるけど、怖いからな」
「そっか。会いに行かなくて大丈夫?」
「問題ない」


 じゃあ今日1日はここでゆっくりできるのか。


「はぁ〜っっ……疲れた〜……帰ってきたぁ……」


 ベッドの上で体を伸ばす。ゴロゴロ、ゴロゴロ。


「子供みたいだな」
「なんかこの部屋に来ると5歳の時に戻った感じがするんだよな」


 懐かしいな〜……ここでティライと魔法の練習したり……。魔王軍にティライの姿の神がいるんだよな。会ってみたい。


「お、おい。足を曲げるな。見える」
「あ、でも何回も見たことあるんだし今更だろ」
「いや……ベッドの上でそのポーズはやばいんだって」


 スカートなんて履いてなかったらリラックス出来るのに、なんでスカートってこうも面倒なのだろうか。
 ズボン欲しいな。


『僕はスカートのまま踏まれるのが好きだけどね』
『……あれ? そういやサタナ、身体は?』
『持ってきてるよ。いつでも出せる』


 あぁ〜体内の魔力に入れてるのか。


『クロア様、私も身体が欲しいです』
『ダメって学園長に言われたでしょ。それにイザナミの計画喋ったんだから反省の意も込めて』
『でも喋ったことでクロア様は得……なんでもないです』


 きっと明日には魔王に会いに行くんだろうなぁ……まだ家族と穏やかな日常を過ごしたい気持ちもあるけど、忙しい。


「んじゃリグ、学園長が来るまで話そ」


 それから学園長が来るまでは、それほど長くなかった。

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