女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

79話 王国騎士団に依頼が来た



 卒業までそれほど時間は残されていない。その間に、俺はこの学園生活を満喫しなければならない。


 学園生活といったら何がある……青春、恋、夢……この数日はリグにどんどん甘えてみようか。


「リグ〜!」
「ん? 今日も元気だな」


 俺は部屋で寝ているリグの横に入った。


「卒業までもう少しだし、何かしようよ」
「何かしようよって言われてもなぁ……」
『やっちゃえやっちゃえ』
『静かに』


 サタナがいると俺の中の雰囲気が壊れそうだ。


「ねぇ、リグはさ……私が卒業したらどうするつもり?」
「クロアが卒業かぁ……俺はクロアと一緒に住みたいって思ってる。結婚してからな」
「歳の差とか気にしてない?」
「今更歳の差なんて気にしてられるかよ」
「良かった〜」
『うわぁ〜いつものクロアが甘えてる……』
『理想とちがうからって引くな』


 確かに、後で自分の様子を見たら恥ずかしくて絶句しそうだ。でも、だからこそこんな俺はリグの前でしか出せない。


「クロアって、本当に変わったよなぁ……正直嬉しい」
「でも、昔みたいに戻ってほしいって思ったりしない?」
「たま〜に寂しくなる。でも、お前と一緒にいたら色んな表情が見れるから寂しくないよ」
「えへへ」


 頭を撫でられて嬉しさが声となって出てしまった。


「そういう可愛い事をどこで覚えたんだか……」
「偶然だし。ほれほれ〜」
「やめっ! おまっ、胸大きくなったな?」
「揉むな!」


 胸押し付けたのは俺だけどよ、そんな興味津々に揉まれると恥ずかしくて嫌なんだよ。


「んだよ〜ほら」
「んっ……ちょっ! やめろ!」
「あら〜……随分と楽しそうなことしてるのね〜」
「「っっ!?!?」」


 いつの間にか学園長が部屋に入ってきていた。
 くっ……リグのせいで変なところを見られてしまった。


ーーーーー


「で、今日は話があって来たのよ」
「いつも話あるよな学園長って」
「情報が沢山入ってくるから、王国騎士団の貴女に伝えなきゃと思ってね」


 俺とリグは服を整えて、学園長と向き合うように座っている。


「2人はフロンガード王国の隣に別の国がある事はしってるかしら?」
「あぁ〜本で読んだことはある」
「昔に1度だけ行ったことがある」
「誰と?」
「冒険者仲間とだよ」
「女?」
「男」
「……話続けるわよ」


 おっと、つい気になったことを聞いてしまった。今は学園長の話を優先しないとな。


「魔王軍の件で、となりの国から国王と勇者が王城に来るの」
「ま、また大きな話だな」


 国王と勇者……って。


「隣の国にも勇者がいるのか?」
「勇者は一つの国に一人は必要よ」
「そ、そうなのか」


 ってことは、サトウみたいな人が他にもいるっていう訳で……皆日本人で……。


「会いたいんだけど」
「それは後の話よ。今回の件で、王国騎士団に依頼が入ったの」
「おっ、仕事」
「良かったな」


 ついに王国騎士団の仕事かぁ……初めてだな。


「国王と勇者が王城に訪問している間、王城の周りの警備を頼まれたの」
「警備? 私戦闘経験ないけど?」
「クロアさんは千里眼を持っているのよね? それで皆の目になってもらうわ」
「あぁそっか」


 じゃあ基本的に俺は皆に守られる立場か。でも、意外と大変そうな役目を任せられたな。


「緊張するな。クロアならきっとできる」
「ありがとう……」
『僕も手伝うよ〜!』
「あっ、学園長。サタナも手伝うみたいだ」
「そう。じゃあさっさと出てきなさいって伝えて」
「はい来ました!」


 本当に一瞬で現れるな。体から何かが付ける感覚とほぼ同じタイミングで人形が現れるぞ。


「でもサタナはクロアさんの体の中に居てもらうわ」
「そだね〜僕王国騎士団じゃないもん」
「サタナの役目は……そうね。もしもの時にクロアさんの体で戦ってもらおうかしら」
「おぉ! それなら私も役に立てる。サタナ、いいか?」
「いいけど、僕が戦うと邪神ってバレる可能性もあるよ?」
「王国騎士団には伝えてあるから大丈夫よ」
「うっげ……」


 サタナが苦い顔をした。でも、王国騎士団よりサタナの方が強いんだから特に問題はなさそうだけどな。


「それで、いつ国王が来るんだ?」
「3日後よ。その日になったら私が呼びに来るから、あまり緊張しなくて大丈夫」
「早いな……分かった。リグ、3日後私いなくなるけど寂しくて死んだりしないでね」
「俺は兎か……」


 3日後は隣の国の国王と勇者の命を背負った仕事。そして俺の初仕事でもある。絶対役にたってみせるぞ。


『隣の国の勇者、イケメンらしいよ』
『知らない。顔じゃなくて中身が大事だ』


ーーーーー


ーーーーー


 それから仕事の日まで、なるべく仕事の事を考えないように過ごしていった。
 考えていると緊張してロクに生活できなくなってしまう。そんな時にリグと話していると、緊張も解れて楽になる。そんな感じで過ごしていた。


 そしてついに、仕事の日がやってきた。


「鎧と剣は持ったわね」
「持った」


 剣は緊急時の時にサタナが使う武器だ。


「王城に転移したら、まずは国王様と勇者に挨拶するわよ」
「うっ……緊張する」
「私がいるから安心して。話を聞いているだけでいいわ」
「分かった」


 学園長が俺の肩に触れた。ついに仕事だ。


 浮遊感と共に視界が切り替わる。ここは王城の中庭だろう。前に勇者召喚の時に来たことがある、あのクソ王子のせいでな。


「おぉ! クロアだ!」
「クロア〜っ!!」
「邪神と契約したんだって〜? やるなぁ!」


 仲間の2人が死んでいるというのに、いつものように元気な姿を見せる団員達。全員が俺と同じ鎧を着ていて、実力も俺とは桁違いだ。


「クロアちゃん! 俺のこと覚えてるっすか?」
「ジェイスッス」
「ジェイス! っす」
「状態で言っただけだ。覚えてる」
「良かった〜! 忘れられてたら消えるところだったよ〜!」


 そんな大袈裟な……。
 しかし、こうして元気な団員達を見ると、自然と俺の緊張も解れていった。


「国王と勇者は少し遅れてるようだから、好きな事して待ってていいわ」
「じゃあクロアちゃん! 俺と遊ぶっす!」
「何して?」
「砂遊びするっすか?」
「子供じゃないから……」
『あそこに立ってる人、あれ強いね』
『アーガス?』


 皆と笑いながら話しているアーガス。やはり邪神の目から見ても強いのだろうか。


「お〜い! どうしたんっすか〜?」
「あっ、いやどうもしてない。今日はよろしく」
「よろしくっす!!」


 俺とジェイスは握手をして、次にアーガスの元に向かった。

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コメント

  • 紫園

    最後から24番目の文の状態は冗談のことですか?

    0
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