女嫌いの俺が女に転生した件。
74話 邪神サタナキアの新たな器
次の日の朝。早速ビリーに呼ばれて、俺とリグとソフィでビリーの部屋に向かった。どうやら今日は同居人もいるようだ。
「まずは紹介しますね。同じ部屋に住んでいるベリー、妹です」
「は、初めまして先輩方……いつも兄がお世話になってます」
随分と見た目がそっくりな妹だ。妹の方は少し人見知りかな?
「ベリーはいつも人形制作を手伝ってくれてます」
「兄弟で人形制作かぁ……俺も妹が欲しかったな」
一緒に何が出来る存在っていうのは本当に大事だな。
「今回依頼された人形は、妹の手によって更にアップグレードされています」
「ほぉ。その人形はどこに?」
「ベリー、持ってきて」
「うん」
ベリーがベッドの裏側へ向かった。
「じゃあ僕が合図したら取り出すんだよ」
「うん」
「すぅ……僕達2人のフェチを詰め込んだ最強のドール! 健康的にほんのり黒く日焼けした肌はまるで生きているかのよう! セクシーなボディを持ち、耐久性も魔力によって強化可能! 細かい部分まで完璧に再現した! ……人形です!!」
最後が上手く決まらなかったけど、ベリーによって出された人形は本物の人間のようだった。
「おぉ!」
「リアルだな」
「凄い……」
『凄いねぇ……器を作る神なのかな?』
『人間だよ』
確かに、人間を作ったとしか思えない。
「この口の部分もしっかりと、喉奥まで完璧」
「と、とりあえず憑依させるぞ」
「ああ頼む」
「楽しみ〜」
『行ってきま〜す!』
俺の身体から何かが抜ける感覚。サタナキアが人形の方に入ったのだろう。
しばらくして、人形がピクリと動いた。
「おぉ」
「……」
ビリーとベリーは緊張した眼差しで人形を眺めている。
そしてついに、人形が口を開いた。
「凄いよ! とても動かしやすい! それに瞬きまであるし、重さも一般的。これは……筋肉みたいなのがあるぞ? おぉ! ちょっと確認! ……」
サタナキアが急にパンツの中を確認し出した。手まで使って確認している。
「おぉ……入るんだ」
「それに、スカートとニーソの間の絶対領域! ここはこだわりましたよ!」
「確かに! 程よい弾力が性欲を掻き立てる!」
「でしょう!? そこに更にガーターベルトを付けることによって、その絶対領域にくい込んでいく!」
「君は……神様なのか……?」
「僕は今日ここに! 新たなフェチの生命を生み出した! 神と呼べ!」
「神様ぁ!!」
「神様〜!」
ビリーとベリーと新たな身体のサタナキアが大興奮している。女嫌いの俺でも、あの身体はちょっとエロすぎると思う……。
「なんだろう……クロアの上位互換のような──」
「リグッ!」
「あぁっ! 俺はなんて事を……違う、あれは邪神サタナキア。俺にはクロアしかいないんだ」
「ふははははは……僕はついに、理想の身体を手に入れた。神様、ここからは僕が改良に改良を重ねていって、本物にしてみせよう……」
「は、はい頑張ってください邪神様……」
興奮していたビリーが落ち着いてきたところで、俺は話を始める。
「まずは学園長に報告しよう」
「僕の身体を見て嫉妬しそうだねぇ」
「ふぅ……刺激が強すぎる」
「ほれほれ」
「やめろ……」
サタナキアがスカートを捲ってリグを誘惑している。
「サタナキア……リグに手を出すな」
「はい」
「怖っ」
ーーーーー
「まあ……こんな可愛い体を……アナタにはもったいないわね」
「どうだい? クロアの上位互換と呼ばれた体だぞ」
「ふっ、大事なのは身体じゃないのよ。中身が腐っていれば不良品も同然、クロアに対する気持ちは変わらないわ」
おぉ流石学園長。200年生きているだけあって、芯が通っている。
「でも、ちょっとだけ揉ませてくれない?」
「いいよ」
あ、ダメだ。
「サタナキア。その身体のベースは私だから、あまり好き勝手使うなよ」
「分かってるって、ビリーさんが作ってくれたこの器を大事に扱うのは当然」
サタナキアの中でビリーの順位が上がっているようだ。
「学園長、サタナキアも一応はこの学園の生徒として扱えるか?」
「問題ないわ。すぐにサンプルじゃなくて本物の制服を用意するから。部屋はクロアさんの部屋でいいわよね?」
「クロアに任せる」
「別に問題ない」
「じゃあサタナキア、こっちに来てくれる? あ、一言でも喋ったら殴るから」
「っ……」
喋らなければ可愛いって奴だろう。学園長も厳しいなぁ。
ーーーーー
「おっほほ……これは凄いなぁ」
目の前でサタナキアがクルクルと回っている。たまに見える白いパンツがエロいな。
「これをビリーさんとベリーさんが作ったのね……」
「この姿だと、いくら邪神だと分かってても殴れないよな」
「そうね。でも、私クロアさん以外は容赦しないって決めたの」
「なんだそれ……」
学園長も不思議な決意を持つ人だな。
「あっ! そうそう! 身体が手に入ったから、クロアの魔力増えてると思うよ!」
「自分でもよく分からないから微量なんだろうね」
「少しずつ増やしてこ!僕を沢山罵ってね!」
まあ性格が駄目駄目な事に慣れれば、どんどん罵れるな。
「生徒として学園に加わったのだから、今日はサタナキアはサタナと呼んだ方が良いわね」
「確か神様……じゃなくてイザナミもそう呼んでたな」
サタナか。確かにその見た目で、サタナキアなんて呼ぶと違和感が大きいな。
「サタナ、少し落ち着いて。椅子に座れ」
「椅子になれ? 喜んで!!」
何故か四つん這いになったので、そのまま放置する事にした。
「放置プレイぞくぞくするよ〜……」
エロい身体の美人だけど僕っ子ドMキャラか。随分と濃いな。
「それじゃあ学園長、私達はそろそ──」
──ドクンッ
「あれっ」
──ドクンッ
「お、おいクロアどうした」
──ドクンッ
「サタナ、何したのかしら?」
──バクンッ
「ぼ、僕何もしてないよ!?」
──ドッドッドッドッドッ
苦しい。心臓が締め付けられるような……あ……目の前が青い……揺れてる。
あれ、俺今倒れてる? 横に壁が…………。
「──アッ! ─う──!?」
リグが叫んでるけどよく聞こえないな。何が起きているんだろうか……普通ならここで意識を失いそうなんだけど、長々意識が飛ばないな。
ただ息をして、ボヤけてグルグルと回る視界を見つめるしかない。
「────!!」
あっ、頭がグランッて……リグに抱えられてる?
「──は───────?」
「────もしか──と────ね」
「な──ど、──あし──い──くても──に戻るのか」
「え──焦らなく──大丈夫よ」
段々と意識がハッキリしてきた。長い耳鳴りが続いているが、少しずつ平衡感覚がはっきりしてきている。俺は今ソファの上に座らされている。
「どんな──なんでしょうね」
「楽しみだな」
「ビックリしたけど、まだ能力も持ってなかったんだね」
「17歳だもの」
「のう……りょく?」
「あっ、クロア大丈夫か? 何か変わったところは?」
妙に冷静なリグと学園長とサタナ、ソフィは膝枕をしてくれているようだ。
とりあえず身体を起こして、頭を抑える。
「変わったところ……?」
「ああ、もしかすると今のタイミングでクロアの能力が現れたかもしれない」
能力……18歳に近づくと目覚めるやつか。
「ついに私に能力が……でも、何が変わったのか自分でもよく分からない」
能力が目覚めたのだろうけど、それを確認する方法が無い。
「僕が確認してみるよ」
そういうと、サタナの身体が急に力が抜けたようにダラんとして、俺の身体にサタナが入ってきた。
『ちょっと擽ったいけど我慢しててね。僕が探すから』
『うん』
「……んっ……」
「どうした?」
「サタナが能力を確認っ……してくれるんだけど……ふぁ……擽ったいんだ」
全身にコチョコチョされているような感覚だ。済から済まで、全てが擽ったい。
『これ凄いかもよ』
『どんな能力だ?』
『いま皆に伝える』
サタナの身体が動き始めた。
「クロアの能力が分かったよ」
どんな能力なのだろうか。リグや学園長、ソフィもサタナに目を向けた。
「物理的攻撃を防ぐ能力」
「お……」
「つまり、魔法以外の攻撃を防げるんだよ」
魔法以外の攻撃を防ぐ……それってつまり……。
「剣で斬られても切れないし、殴られても痛くも痒くもないって事?」
「合ってるけど万能ではないね。防ぐということは魔力で盾を張ることなんだ。どうやら1度に出せる盾は3つまで、1度に四方向から攻撃を受けたら……防げきれずに受ける」
なるほど。ってことは……能力的には強いけど、対策を練って戦われたらあっさり負けてしまう事もありえるのか。
「使い方次第ってところだな」
「それにベリアストロの能力の前には意味無いしね」
「そうね、対ジェイスには良い能力だけど……アーガスはどうなのかしら」
「アーガスにも勝てる可能性が?」
「私と組めば可能性は0じゃないわ。けど……どうかしらね」
そんなに強いのか……アーガスさんは。
「いいな……俺なんて足音消すだけだぜ」
「冒険者にとっては良い能力じゃない」
とにかく、ついに俺にも能力が手に入ったんだ。上手く扱えるようにならないとな。
「……あれ? サタナちゃんが死んでる」
「死んでるんじゃなくて私の体に戻ってるんだと思うよ」
ソフィは怖い表現をするな。
『なんかあの身体、魔力の消費量が多くて疲れやすいんだ』
『それって、魔力で耐久性を変えれるからじゃないのか? いつの間にか魔力使いすぎてたんだよ』
『あ、そっか。魔力回復したらもう1度身体に戻るね〜』
サタナはマイペースだな。邪神とは思えない程バカっぽい。
「じゃあ学園長、私達はこれで」
「先生の仕事忘れないようにね」
「あっそうだった! リグ早く! 人形も!」
「わ、分かった!」
すぐに転移で送ってもらって、俺は教室へと走り出した。
『先生してるんだね。急げ〜』
『黙ってろ! まだ間に合う』
邪神サタナキアと契約してから大変な事ばっかり起きてしまう……そろそろゆっくりしたい。
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