女嫌いの俺が女に転生した件。
68話 何も無いと思ったら盛り上がった
何も無い1日は図書室で静かに本を呼んでいるのが一番だ。
俺は図書室の隅の方に座って、適当に見つけた小説を読むことにした。
授業が無い日は、広い図書室が生徒達の遊び場となっている。別に周りが騒がしくても集中できるタイプなので問題は無いが、話しかけてこられると困る。
それなりに有名になっているので、仕方のない事だ。
俺の周りには生徒達が集まってしまっている。
俺が読んでいる本を後ろから覗いたり。近くに座って話し始めたり、新入生にはちょっかいまで出されてしまう。
「おばちゃん」
「こらっやめなさいっ! クロア先輩すみません……」
「い、いいよ……」
幼い子供は女性にちょっかいを出したくなる年頃だというのは理解している。子供の癖に、女へ対する欲求が強いのだ。だからすぐに触ったりしてくる。
その欲求がどういう物なのか分かっていない年齢なので、ただ見つめたり触ったりするだけで済んでいるが……たまに変な事をする人もいるから困る。
「こら皆! クロア先輩の迷惑になるから静かにしなさい」
「「えぇ〜」」
「えぇじゃないの。ほら、あっちで遊ぶよ」
「やだ〜」
「俺達ここで遊ぶ〜」
はぁ……これだから子供は嫌いなんだ。
「じゃあ私あっちに行くから……」
「そっ、そんな申し訳ないです!」
「大丈夫」
「じゃあ俺もあっち行こ〜!」
図書室は静かに出来ないようだ。
結局、俺は子供達に囲まれて読み聞かせをする事になった。膝の上に座る人が誰かで喧嘩したり、ちょっとした事で騒がしくなるから大変だ。
「──こうして騎士の愛人は命を落としたのでした。めでたしめでたし」
「めでたくないよ〜!」
「可哀想〜!」
「次これ読んで〜!」
「順番だよ。次はこの本」
はぁ大変だ。でも、いつか俺に子供が出来たらこんな風に育てる事になるのだろうか。
良い経験になるのかもな。
「っ?」
さっきから遠くから俺を見つめてくる新入生がいる。目が合う度にどこかへと走り去っていくんだけど、忘れた頃にはまたそこにいる。
「君もおいでよ。あっ……」
人が苦手なのだろう。気持ちは分かるので、とりあえず読み聞かせを続けた。
「──なんと、勇者の仲間が魔王だったのです。続く」
「続きは〜?」
「誰か続きもってきて〜」
段々と子供が増えてきた……。でもまだ時間あるし、ちょっと他のことして時間を潰すか。
「じゃあ皆、今から外に出て一緒に遊ぼっか」
「やった〜! オーガごっこ!」
「お化けオーガごっこ!」
オーガごっこというのは言葉通り鬼ごっこだ。お化けオーガごっこというのは、隠れ鬼ごっこ。
普通の鬼ごっこでも隠れれば隠れ鬼ごっこと同じなんだけど……何故か分けられているのは前世と変わらないらしい。
「皆でお外に行こうね〜」
子供達をぞろぞろに引き連れて、学園の敷地内のグラウンドに出る。
グラウンドにも生徒達が沢山いて、俺を見つけると集まってきた。
「何するの〜?」
「クロア先輩だ! かっこいい!」
「きゃ〜っっ!!」
「俺達も混ぜてくれ〜!」
かなりの人数が集まったのではないだろうか。いつの間にか、グラウンドにいた生徒達は全員俺の周りにいた。
「じゃあ皆、今からオーガごっこするからオーガを決めて」
「「クロア(先輩)(ちゃん)!!」」
「じゃ、じゃああと一人オーガ決めようか」
「はい!」
「はいはいはい!」
「は〜〜い!!」
多すぎる。多すぎてオーガ決めが大変だ。
「あっ! リグ!!」
「げっ……見つかった」
大勢の人の中からリグを見つけたので、リグをオーガにした。
「いるなら最初から言えよ〜」
「いや、なんか盛り上がってんなって思って見に来たらお前だったからさ」
「じゃあ皆! 30秒数えるからその間に逃げて!」
「「逃げろ〜!!」」
大勢の生徒達が一斉に走り去っていく。
その様子を、先生達も見にやって来ている。
「自分でもこんなに人が集まるなんて思わなかったわ」
「モテモテだな」
こんな人数で遊ぶなんて、人生初なんじゃないか? 前世も含めてこんなに人が集まったことないし。こんなにワクワクするなんて、ゲーム以外で初めてだ。
「楽しいな」
「お前もついにアウトドア派になったか?」
「こんなに遊ぶ人がいるならアウトドアもいいかもなぁ……」
前世は外に出てもすることが無かったから、ずっと引きこもってゲームとかしてたんだよな。少しずつ変わってきたな。
「よし。じゃあオーガと同じで魔力の使用は禁止で、行こうか」
「おう! 俺の脚力を見せてやる」
リグは狼だから人を捕まえるのは本能だろう。期待できそうだ。
「あら、オーガごっこ? 楽しそうね」
「あ、学園長も参加する?」
「着物じゃ走れないわ。見学するだけよ」
「じゃあリグ、行くか」
「おう」
先生達に見られながら、大規模なオーガごっこの始まりだ。
ーーーーー
ルールは簡単。校内以外の敷地内全てが逃走経路。
捕まった人からオーガになっていき、逃げる方はとにかく逃げまくる。
最後の1人になったら学園長が転移で皆を集めて終わりだ。
さっそく大勢の生徒達を見つけた。新入生と女子生徒が数名、そんなに集まっていると簡単に捕まるぞ。
「来た来た来た!!」
「きゃ〜!」
「逃げろ〜!!!」
リグは別方向にいる為、俺1人で捕まえるしかない。
魔法が使えない分ハンデは大きいが、身体能力でも負けない。
「捕まえた」
「あぁ〜っ!!」
「はい捕まえた」
「ちくしょ〜!」
新入生を狙ってあっという間にオーガが増える。
「皆、あの女の子を挟み撃ちで捕まえるよ!」
「分かった〜!!」
「っしゃ〜!!」
こうしてちびっ子軍団を指揮して、順調に生徒達を捕まえていく。
ーーーーー
省略
ーーーーー
「最後の1人は勇者サトウさんでした」
「あっははは」
大変だった。
俺が捕まえた生徒と、リグが捕まえた生徒で戦略的に追いかけたというのにどうしても勇者だけは捕まえれなかった。
全身を魔法に変換できるため、一瞬で逃げられてしまうのだ。それも無音。
かなりの時間走り回った為、汗びっしょり。
「皆〜水分補給しっかりして、手を洗ってから昼食食べるんだよ〜」
「「は〜い!!」」
勇者を捕まえられなかったのは悔しいが、お腹空いたので食堂に向かった。
食堂は歓迎会の時と同じように、大勢の生徒が集まってしまった。
二日目の歓迎会なんて聞いてないぞ。
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