女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

57話 守護七戦士のリーダーを連れてきたよ



「クロアさんにはメイドカフェをしてもらおうと思うの」
「嫌だ」


 新入生歓迎会でどうして俺がメイドカフェをしないとならないんだ、俺が5歳の頃は踊ったりするだけでそんな大袈裟な物は無かったぞ。


「なんでメイドカフェなんだ?」
「最近、歓迎会の出し物も過激になってきたのよ。そこで、可愛いクロアさんがメイドカフェを開いたら喜ぶと思うわ」
「それは学園長だけだから……とにかく私はメイドカフェなんてしない」


 メイドカフェって、「もえもえきゅん」だとか 「美味しくな〜れ」とか言わなきゃならないんだろ?
 前世のイメージだと本当に痛々しいイメージがあるんだが、この世界でのメイドというのがどんなのかは知らない。でも、俺はメイドカフェなんてやらない。


「じゃあ何カフェなら良いのかしら」
「カフェ自体嫌です」
「カフェは決定事項よ。そうね……騎士カフェなんてのはどうかしら?」


 決定事項って……。


「騎士カフェ?」


 俺はツッコむのをやめて、騎士カフェについて聞いた。


「クロアさんが騎士団の鎧を着てカフェを開くのよ。他にも生徒を集めて騎士団のコスプレさせて……うん、そういうのが好きな人は喜ぶと思うわ」
「それも学園長だけなんじゃ……」
「そんな事ないわ。皆、クロアさんが王国騎士団の鎧を着ている姿を見たがっているのよ」


 そうなのだろうか……確かに、あまりソフィやリグに見せた事はない。それに他の生徒には全く見せていない。それなのに俺の騎士団姿を見たい……そこまで興味があるのだろうか。


「別にカフェにしなくても見せればいいんじゃないか?」
「折角だから歓迎会で見せましょうって事よ。どうかしら」
「ん〜……まあその格好するだけなら大丈夫だ。けど、カフェはどうするんだ?」


 飲み物だとか食べ物を生徒に出すんだろ?


「誰が作ったり運んだりするんだ?」
「それは先生達が作るわ」
「運ぶのは?」
「勿論、騎士の格好をした生徒よ」


 まあ先生も協力してくれるんなら、心配は無さそうだな。


「分かった……じゃあ次の話をしよう」
「平和教の話とティライの話、どっちがいい?」
「ティライ誘拐については何の情報も無いし無視。平和教について聞きたい」


 平和教が本格的に俺を捕まえに来てる、という事はこれから先常に警戒しなければならない。ちょっと気を緩めた瞬間に連れ去られる可能性もある。


「もし私が捕まったらどうなる?」
「捕まる可能性はゼロと考えていいけど、捕まった場合あんな事やこんな事をされるわね。それで、もし邪神が復活されなかったら奴隷にして売られるかも」


 うわぁ……なんか酷そうだし詳しくは聞きたくない。


「対策してるのか?」
「学園の敷地には私が結界を張っているから、と言っても、風魔法なんだけれどね。そこに制服を着ていない人間の反応があったらすぐに分かるわ」
「……平和教が制服を着てきたら? 更には新入生の中に居たら?」
「考えすぎよ。5歳の子供が人を誘拐しに来るなんて話ないでしょう?」


 それもそうだけど警戒はした方が良い。もしとんでもない方法で俺を捕まえに来たとしたら……。


「例えばティライを誘拐した犯人が実は平和教で、ティライを人質に私を捕まえるとか」
「可能性はあるわ」
「おい……」
「でも大丈夫よ。ティライの探索は王国騎士団の中の2人がしてるから」


 2人も王国騎士団が……それなら頼れるな。


「ちなみにその2人は?」
「ノア、ダンテ」


 あぁあの仲が悪い男女か。頼れないな。


「心配しなくても実力はあるし、お互いの駄目なところをカバーし合ってる良いコンビよ」
「そうなのか」
「念の為、学園の警備を強化する為に守護七戦士のリーダーを呼んでいるわ」


 守護七戦士……? それって……あぁ、かなり昔にも話は聞いていたか。確か学園の中で学園長の次に権力を持つ部活動団体だっけ。
 まだこの学園にいるのか。


「こんにちは、クロアさん」
「……ん? デニート?」


 何故か現れたのはクソ王子の執事、デニートだった。


「名前を覚えていただき光栄です」
「生徒……?」
「生徒じゃないわ。先生に似た何かよ」
「似た何かって……デニートさんが守護七戦士のリーダー?」
「如何にも。ちなみに他の5人は卒業だと言って抜けてしまったので、現在は私とあと1人しかいません」


 それで七戦士を名乗ってるのか。


「頼れない……」
「大丈夫よ。これでも一国の王子に仕える執事よ、傭兵でも雇って警備してもらうわ」
「その傭兵に平和教がいたら?」
「可能性はゼロじゃない」


 警備ガバガバすぎるだろ。


「本当に大丈夫なのか……」
「何とかなるわ」
「ええ、お任せ下さい」


 任せられるかよ……。


ーーーーー


「あぁぁぁぁ……面倒くさいぃぃぃ……」
「クロアちゃんどうしたの〜?」


 俺が部屋で頭を抱えていると、人形を抱き抱えながらソフィが声を掛けてきた。


「……仕事が沢山……」
「給料も沢山!」
「その仕事じゃない……」
「タダ働き!?」
「そんな感じ」
「闇だ……」


 はぁ……なんでティライが誘拐されて、歓迎会始まって、平和教が動き出すタイミングが合うんだよ。絶対全部何かに関わってるだろ。


「明日から忙しくなるから……私はもう寝る」
「じゃあ私はクロアちゃんと遊んでるね!」
「人形の事を私の名前で呼ぶな」
「もっと私の名前呼んで〜! は〜い、クロアちゃ〜ん! わぁ嬉しい〜!」


 1人2役……ソフィって本当にアホだ。


「おやすみ」
「おやすみ!」


ーーーーー


ーーーーー


「久しぶりだね〜!!!」
「おっ、おぉ!! 神様!!」


 眠ったと思ったら、なんと久しぶりに神様にあった。
 10年間眠っていた間に2人の絆は大きな物に成長しているので、久しぶりに会えて嬉しい。


「最近頑張ってるね〜!!」
「まあな! そろそろ休みたいけど、なかなかゆっくりする時間が無くてなぁ……」
「働きすぎだね〜……でも、私の計画の為には着々と準備が進んでいるよ」


 それは良かった。


「そこで、頑張っているクロアちゃんに御褒美!」
「おっ! 今度はなんだ!?」


 以前は小さい頃に 『頭の回転が早くなる』っていう能力を貰ったんだっけ……あんまり期待はできないか。


「もう決めてあるんだ〜!」
「早く!」
「はい! 『千里眼』!!」


 千里眼!? な、なんか便利そうな名前が出たな。


「詳しく」
「これはね、遠くの景色を見たり透視したりできる能力! 例えば、自分の部屋から誘拐されている君の友人の居場所を見たり!」
「おぉっ! それ凄い便利だな!」
「ちなみに千里眼を使っている間、目に魔力が集まるから青くなるよ」


 いやその説明は必要ない。


「早速試してみていいか?」
「あぁ待ってね。今からプレゼントするから…………はい、見たい場所をイメージして」
「よし……」


 俺はすぐにリグの姿をイメージした。


「おっ……?」


 神様しか写っていない視界が切り替わり、完全に別の場所にいるかのように景色が見えた。
 どうやら学園の庭で昼寝をしているようだ。……寝顔が可愛いな、犬の癖に。


 ん、起きたぞ。……何か周りをキョロキョロして……また寝た。
 なんじゃそりゃ。


「どうかな?」
「使い方次第では便利だけど、基本的に使い道は少ないな」
「でも透視能力だってあるよ? 簡単に相手の服の中を見れたり」
「それは神様の趣味だろ。とりあえずありがとう」
「どういたしまして!」


 この能力があれば平和教を見分ける手段にも使えるだろう。

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