女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

54話 ソフィに告白!?

「リグ、ああ見えても勇者は私より強いんだからな? 下手な事するなよ」
「クロアより強い?」
「そう。全部の属性魔法も使えるし」
「ぜ、全部!?」


 部屋でリグに勇者の事について話しているのだが、驚きすぎだ。外まで声が漏れてるんじゃないか?


「とにかく。威嚇はしないように」
「してるつもりはないんだけどなぁ……」
「笑うと威嚇してるように見えるんだよ」
「狼って辛い……」
「……私はその姿好きだけどな」
「おっ」


 なんだよ。おっ、て。


「ちょっ……くっつくなって」
「んだよ〜可愛い奴め〜」
「ふんっ!」
「こぉ゛っ……〜〜〜!」


 思いっきりセクハラしてきたから、腹パンした。手加減はしてるからそこまで痛くはない。ほとんど衝撃だけだ。


ガチャッ 「たっだいま〜! あ、クロアちゃんとリグさん帰ってきてたんだ!」
「おかえり〜」
「お、おかえり……」


 能天気なソフィが帰ってきた。


「ねぇねぇ聞いて! 私告白されちゃった!」
「おぉおめでとう」
「良かったな」
「驚かないの? 私、告白されたんだよ!」
「うん。おめでとう」
「誰からだ?」
「そう! それを言ってほしかったの!」


 誰から告白されたのか、聞かれるのを待ってましたとばかりベッドの上に乗ってポーズを取った。


「誰からは分からない! でも、今日私のポケットに紙が入ってて告白された! もし返事をするなら261号室に来てって!」


 261号室……知らないな。


「っていうか、ポケットに物入れられるほどガード薄いんだな。ソフィは」
「だって普段からポケットに物入れられる事無いでしょ?」
「そんなに接近されたって事だろ? ポケットに入れた人物が誰か分かったかもしれない」
「あっそっか」


 やっぱりソフィはアホだ。胸だけは大きいのに頭は残念。


「返事する他に部屋までいかないとダメなのか」
「面倒な事させる人だな。ソフィア、俺がその部屋まで行ってどんな人物か確かめてやろうか」
「リグさんは目立っちゃうよ」
「あぁそれなら大丈夫。リグ、気配消せるから」


 以前部屋の中で気配を消してもらった時は本当に凄かった。少し目を離しただけで見失う。


「じゃあ行ってくる。261号室だな」
「行ってら」
「行ってら〜!」


 リグが部屋から出ていってから、俺はベッドの上で横になった。


「クロアちゃ〜ん」
「だから、抱きつくなって……」


 特に理由もないのに抱きついてくる。


「私、もしクロアちゃんみたいに彼氏が出来たらどうしよう……」
「ん〜。とりあえず景色の良い場所に2人で行ったり……楽しい事すればいいんじゃないか?」
「楽しい事……私が楽しいって思う事は、勉強してる時とか……クロアちゃんと一緒にいる時、抱きついてる時、話してる時かな」


 俺がいないとダメじゃないか。


「私ね。クロアちゃんといる時が1番楽しいの」
「ふぅん……でも彼氏作った方がいいぞ」
「261の部屋の人がどんな人かによるかなぁ……私クロアちゃん以上に好きになれる人いない気がする」


 まさか、ソフィは完全に同性愛に目覚めてしまっているのか? 11年前の監禁事件の日からそんな感じはあったけど……まさかな。


「ソフィは男の人と女の人。どっちと付き合える?」
「そりゃ基本的には男の人だけどね。クロアちゃんは特別。頼れるし可愛いし……もう私の理想の女の人!」


 まあ中身が男だからそうか……。


「じゃあ私が他の女の人みたいな人になったら、ソフィはどう思う?」
「ん〜……悲しい気分になる。でも、クロアちゃんだからいいかなって」


 あぁ〜……どうやら俺は、ソフィをダメな方向に成長させてしまったようだ。ちゃんとした恋愛をさせてあげないと大変だぞ。
 よし……ソフィに告白してきた人物と、何としてでも付き合わせてやろう。これで少しはまともになると良いが……。


ーーーーー


ーーーーー


 しばらくしてリグが帰ってきた。


「どうだった?」
「まあそれなりに良い見た目してるな。好青年って感じで、悪い印象は全くない」
「だってさソフィ」


 そんな人と付き合えるなら、ソフィも恵まれてるんじゃないか。


「本当に付き合うの……?」
「それはソフィが決める事だよ」
「実際に会わないと、相手の事も分からないしな。261号室に行ってから返事を決めるといい」


 相手も知恵の働く奴だな。部屋に行かないと返事を決めることができないし、しばらく2人きりで話すことになる。
 こちら側が警戒心を持って話していると、吊り橋効果で恋に落ちてしまいそうだ。


「まあ気楽に行きなよ」
「ん〜……でも……」
「でも?」
「やっぱりクロアちゃんがいい」
「……ん?」
「私の好きな人は、261号室の人でもないし勇者様でもない。クロアちゃん」


 これは……難しくなったな。


「……分かった。じゃあ261号室に行って、しっかり話して断るんだよ?」
「うん。行ってくる」


 ソフィは何かを決心したような表情で部屋から出ていった。


「……良かったのか?」
「大丈夫。ソフィは馬鹿だから、話してる内に好きになるよ」
「馬鹿だからって……まあそうなると1番嬉しいよな」


 後はソフィが帰ってきて、結果を聞くだけだ。


「青春だなぁ」
「学生だからな」
「……俺達も青春するか」
「今は嫌だ。変態め」


 お前は発情期の犬か。暇になったらムラムラするのやめろ。


「息が荒いぞ」
「狼って本能が強いから大変なんだよ……抑えるの大変なんだから」
「知らん。頑張れ」
「興味無さそうに見えて密かに応援してるクロア……あぁ可愛い」


 こっちもこっちで大変だ。

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