女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

50話 チートって本当にチートだからやめようね!



 いやぁ……驚いた。勇者だから程々に強いんだろうな、と思ってたら……まさか身体の100%を魔力と同化できるなんてな。
 俺でさえ20%くらいが限界なのに、勇者は100%だぞ。光の速さで動けるレベル。
 やっぱりチートだな。


コンコン 「アルだ。失礼する」


 来た……クソ王子。俺の魔力を無くなるまで使い切って、後は寝かせるだけ。俺を道具のように扱いやがって。


「おぉクロア、もう魔力が回復したのか。流石だね」
「……」
「勇者様。状況の整理は出来ましたでしょうか」


 アルが俺とは違う態度でサトウに接するのが、かなりイライラする。


「ま、まぁ整理はしたけど……まだ実感は湧かないかな」
「勇者様といっても、やはりまだこの世界には慣れない物ばかり。そこで、そこにいるクロアと同じ学園に通ってください」


 ……は? 聞いてないぞ?


「分かりました。クロアさん、よろしくお願いします」
「え……? な、なんでそうなるんです?」
「クロア。王国騎士団の1人として早く勇者様に居心地の良い環境を作ってやるんだ」
「すみません……俺なんかの為に……」


 えぇ……いつの間にかアルとサトウの間では確定していたようだ。


「あぁ〜……分かりました。では勇者様、明日学園長に話して……いや寮長……?」
「学園には私から連絡する。明日の朝には部屋が用意されているだろうから、今日は2人でゆっくりしてるといい。では失礼する」


 そのまま何も言わずにアルが出ていった。


「すみません……」
「いえいえ。勇者様程の実力があれば、少し知識を得るだけでこの国に永遠の平和が訪れますよ」
「あはは……」


 悪い印象を与えてしまわないよう、なるべく下から接した方が良い。


ーーーーー


──俺の実力を知ってから、クロアさんの態度が急変した。
 最初は男らしい人って印象だったけど……今は清楚系美少女になっている。やっぱり俺ってそんなに凄いのかな。


「明日から学校かぁ〜……」


 ハ*ーポッターみたいな場所なのだろうか。魔法の杖とか……秘密の部屋とか。


「何か心配な事があったら何でも聞いてください」
「あ、じゃあ関係ない質問だけどいいかな?」
「はい。どうぞ」


 ニコニコと有効的な笑顔を見せてくれる女性は、母親とクロアさんだけだ。……あ、もう母親には会えないのか。


「クロアさんは……俺と友達になってくれますか?」


 これが質問と言えるのか分からないけれど、俺はクロアさんと友達になりたい。それを伝えるチャンスだ。


「友達……いいですよ。他にも友達紹介しますし、勇者様なら沢山出来ると思います」


 違う……そうじゃないんだ。


「俺はクロアさん"と"友達になりたいんだ」
「……私と……?」
「クロアさんと」


 そういうと、クロアさんは少しだけ顔を赤くした。


「どうして私限定……なのですか?」
「それは……限定というより、クロアさんじゃなきゃダメなんだ。俺、こんなに優しくされた事ないし……それに元々女の人と話すのは苦手だったんだ」
「は、はい……」
「でも、クロアさんと話してるとなんだか安心するっていうか……あはは、何言ってるんだろ俺」


 自分で言ってて恥ずかしくなった。


「私と話してて……安心?」
「う、うん……クロアさんと一緒にいたいっていうか……好きになったっていうか……」
「え……」


 ん? 俺今なんて言った? 一緒にいたい……す……。


「あぁあぁあ! 違う! そ、その! あれ! クロアさんに好意を抱いてるっ……て同じだ!」


 自分でも口に出すとは思ってなかった言葉で慌てた俺は、少し落ち着けようと喋るのを止めた。
 そしてチラリとクロアさんの反応を見ると……。


「男の人に好かれるのは嬉しいです。でも、恋愛の相手はもう居るので……」


 恋愛の相手がもう居る。


「その人は……」
「24歳……年上なんですけど……」
「24歳と16歳……?」
「……はい」


 そんなに年の差があるのに?


「それは両想いなんですか?」
「そうです」
「そう……なんですか。年の差とか……大丈夫なんですか?」
「年の差……」


 クロアさんの表情が暗くなった。
 しまった……嫉妬心からつい、キツめの事を言ってしまっただろう。


「ごめんなさい……」
「い、いえ……でも友達としてなら、これからもよろしくお願いします」
「はい……あの、本当にすみません」
「いえ、気にしてませんから」


 女性の 気にしてない 発言は、かなり気にしてる証拠だ……。


ーーーーー


 年の差か……確かに16歳と24歳って8歳も違うよな。将来的に考えて、リグが先に死んだら俺が大変になる。
 サトウの言ったとおり、この年の差は大丈夫じゃない気がする。


 最初サトウに好きだと言われた時は、つい乙女の反応をしてしまった。見た目も性格も悪くないし、俺よりも強くて頼れる。
 でも……リグ以外の男にこんな反応をしてしまうなんて……自分でも思わなかった。


 恋愛……リグと考え直した方が良いのだろうか。
 それとも、好きという気持ちさえあれば年の差なんて……。


「はぁ…………」
「あの……本当にごめんなさい」


 年の差問題を考えさせてしまった。と思ってサトウが俺に謝ってくる。


「やっぱり……年の差より同年代の方が良いんですかね……」
「え……?」
「いや。何でもないです」


 俺とリグ。ずっと一緒だって約束したじゃないか……こんな簡単に離れるなんて駄目だ。


ーーーーー


 な、なんか……クロアさんって24歳の方にするか、俺にするか悩んでる?
 もしかして俺……可能性ある?


 いや……待て。前世で女に全くモテなかった俺が、異世界に来て早速モテるなんて話があるか。小説なるあると思うけど、これは現実だ。


──ステータス


ーーーーー


職業 : 勇者
称号 : 召喚されし英雄
取得能力 : 【鑑定】【自動翻訳】【全属性魔法】【時間操作】【再生】【全ステータス2倍】【魔力武装】【モテモテ(new)】


ーーーーー


 なんか増えてるぅぅぅぅううう!?!?


「どうしました?」
「なっ、何でもないです……」


 な、なんで【モテモテ】なんて能力が?


 ──鑑定


 【モテモテ(new)】──女性と接した事で能力を手に入れた。この能力は、全ての女性を対象に好意を寄せられる能力。これで君もハーレム作れるね!!(ちなみに、この能力の対象を指定して効果を高める事も可能)


 作らなくていいから! いや、最初はそう願ったけど……やっぱり1人がいいじゃん。
 しかし、対象を指定する事が可能かぁ……これなら、俺もクロアさんと付き合えるのだろうか。


 いやっダメだ! こんな能力で人に好かれて……それが本当の幸せと言えるのか。否!  俺は自分で幸せを掴み取るんだ……。
 でも……。


 【モテモテ】対象 : クロア・バルロッテ (16)


 男は欲に弱いんだ……ごめん。


ーーーーー


 ん……? なんか急にサトウの事を意識してしまうようになった……なんだこれ。


「……っ!」


 チラッとサトウを見ると、目が合ってしまった。これはどうなってるんだ? 何故かサトウの事を……リグと同じ、いやそれ以上? 好きになって……違う。俺はリグが好きなんだっ……。


 突然やってきた思考を振り払おうと、自分の頬を叩く。
 熱くなっている。冷静になろう。


ーーーーー


 あぁ……クロアさんが戦ってる……ごめん。


 たまに俺の方を見ては、顔をブンブンと振っている。可愛い……。


 だっ、ダメだ! チート能力に頼って……クロアさん本人は辛い思いをしてるじゃないか!


「あの……」
「ひゃいっ!?」


 クロアさんに話しかけると、おかしな返事が帰ってきた。
 目を見開いて俺を見ている。


「な、なんかごめんなさい」
「なっ何がですか!?」


 このまま【モテモテ】の能力の対象をクロアさんに絞っていたら、クロアさんがおかしくなってしまいそうだ。


 【モテモテ】対象 : 全女性


 こ、これで少しはマシになっただろうか。

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