女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

48話 学生の勇者サトウが召喚された!



「アル様、準備が整いました」


 アルが立ち上がった。早速向かうようだ。


「どうぞ」


 座っている俺に左手を出してきた。握れ、という事なのだと思うけど、俺は掴まずに立ち上がった。


「ふむ……気の強い女性も嫌いじゃない」
「早く行きましょう」
「おっと、そうだね」


 アルが扉を開けて、右側に避けた。今度も俺が先に通れということだろう。レディーファーストなんだろうけど、気まずいな。
 仕方なくアルよりも先に外へ出ると、執事のデニートが俺にお辞儀をした。


「これから勇者召喚の場に向かいます。何をするかはその場で説明するので……では、アル様参りましょう」
「クロア。心配しなくても血が必要だとかそんなんじゃなく、ただ魔力を借りるだけで大丈夫だ」


 何をするか先に言われたのだが、執事のデニートさんが後で説明するはずじゃなかったのか。


ーーーーー


「どうぞ」


 城の中庭へ出る扉が開かれた。
 そこには、大きな魔法陣を中心に大勢の人間達が囲んでいた。


「君達、王国騎士団のクロアが手伝ってくれる。くれぐれも失敗するなよ」
「「はっ!」」


 統率はしっかりされているようだ。どうしてこんな王子に忠誠なんて誓えるのだろうか……まあ俺も王国騎士団の1人なんだからそんな事言えないんだけどな。


「さぁ、私に着いてきてくれ」
「はい」


 そのままアルの後ろについていくと、魔法陣のど真ん中……の少し横に立たされた。


「君はここに立っているだけでいい」
「立っているだけ……?」
「ああ。君の魔力を使うからね、もしかすると気絶するかもしれないけど……その時はその時だ。まあ、頑張りたまえ」


 気絶!? まさか俺の魔力全てを使う訳じゃないだろうな?
 しかし何か反対しようと言葉を考えている隙に、アルは遠くに離れていた。既に召喚術士達が魔力を練っている。


 本当に大丈夫なのか……。


「「勇者様! どうか我らに力をお貸しください!!」」


 周りの召喚術士達が大声で叫んだ、と思ったその瞬間、魔法陣が眩い光を放った。その時に、俺の身体から一気に魔力が吸い取られていくのが分かった。


「っ……うぅっ…………」


 いくら魔力量が多いとはいえ……流石にこれはまずい。もう底を尽きてしまう。
 身体に力が入らなくなり、俺はその場に倒れる。


 意識を失う寸前、目の前に1人の男が見えた……気がする。


ーーーーー


ーーーーー


──俺は普通の男子高校生! 佐藤って言うんだ!
 特技は皿洗い! 趣味は人間観察! そんな俺がいま、飛んでもない状況に立っている。


 自動販売機の前で何を買おうか迷っていた時だ。突然下が光出して、ビックリして見てみたら魔法陣! 俺はいま、光る魔法陣の上に乗っている!!


 その光が段々と強くなり、気づいたら……全く知らない場所に来ていた。
 なんだか怖そうな人達が鎧を着て俺を囲んでいる。コスプレ大会かな? なら俺は学生服だから学生のコスプレ……。


「ぅ……」


 足元から何か声が聞こえた気がして、今日2度目。ビックリして足元を見てみると、綺麗な制服を着た可愛い女性が苦しそうにして、気を失っていた。


「大丈夫ですかっ!?」
「こんにちは。勇者様」


 女性に触れようとした直前、横にイケメンの男性が現れた。


「勇者様……?」
「そう、突然召喚してすまない。我々は……いままで君がいた世界とは異なる世界の住民だ」
「召喚……お、俺ってつまり……異世界に召喚されたって事!?」
「話が早くて助かります。勇者様……どうか我々に力をお貸しください」
「力を……ってその前に、この女性をどうにかしないと!」


 ずっとここに倒れてるよ……まさか死んでないよね? 俺が異世界召喚される為に代償としてこの人の命を奪ったとかそんなんじゃないよね?


「大丈夫ですかっ! 息っ……してる……」


 とっさに息を確認しようとして、柔らかい唇に手を触れてしまった。神様……どうかこの女性のファーストキスが俺の手じゃありませんように!


「流石勇者様……早速人を救おうと……。ですが、その女性はただの魔力切れによる失神です。時間が経てば意識を取り戻すでしょう」
「魔力切れ……そうか、この世界には魔力があるのか……」


 魔力。つまり魔法が使えるということ……もしかして俺、ラノベみたいに凄いチート能力貰えちゃったりして?


「遅れました。私はこの国の王子をしている、アル と申します」
「ア、アルさん……俺はサトウ。一応……学生してました」
「ほう学生……では、そこの方と同じ学園に通うといいでしょう。年齢は?」
「16……」
「その方と同い年。良かったですね」


 同い年……? それにしてはこの女の人、凄く大人っぽい雰囲気で……可愛くて……。


「はっ! と、とりあえず……俺はどうしたらいいんですか?」
「この城の一室をお貸しします。デニート! 案内してやれ!」
「分かりました」


 いつの間にか俺の後ろに男の人が立っていた。


「部屋に案内します」
「あっ……と。この女性も一緒にいいですか? このままここに寝かせる訳にはいきませんし……心配ですから」
「勇者様がそういうのなら分かりました」


 デニートと呼ばれる男の人は、気を失っている女性を肩に担いで歩き出した。とりあえず俺も後ろに付いていく。


 ──部屋に到着して、女性はベッドに寝せられた。俺はとりあえず近くの椅子に座る。


「では、今日のところは状況の整理のためにもごゆっくりとどうぞ。失礼します」


 デニートさんが出ていって、部屋には俺と可愛い女性だけとなった。


「……っ!」


 ふと女性の方を見ると、白いパンツが見えていた。すぐに目を逸らす
 ……あんな可愛い子のパンツ……タダで見るなんてできない!

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