女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

41話 クロアの乙女心が芽を出した



「そうですよねぇ……まだあれからそんなに経ってないし」
「いきなりでビックリしたのよ」


 ん? 何か聞こえる。ここは医務室だろうか……そんな匂いがする。俺はどうなったんだ……?


「最近のクロアちゃん、たまに女の子らしい顔するんですよ。誰かを思ってるような」
「最近……。やっと乙女心が芽生えてきたってところかしら」
「だから急に来たんですねぇ」


 急に来た? 何が来たって言うんだ……まさか平和教? 俺はいつの間にか平和教に襲われていたのか!?


「っ……!」


 まだ動くと少しだけ痛い。傷が塞がっていないのか……?


「あ、クロアちゃん起きた?」


 カーテンが開かれると、そこにはティライと学園長がいた。


「私……大丈夫なんですか?」


 あまりにも穏やかな顔をしているティライに、少しイラッとしながらも訪ねた。


「大丈夫だよ。それは女の子には誰でも訪れるものだから。クロアちゃんは……結構遅かったけどね」
「誰でも……?」
「月経っていうの。そっか……クロアちゃんでもまだ性知識には詳しくないのかな」


 月経……女の生理現象か。それが俺にやってきた、という事……?
 …………あぁ、なるほどな。俺が意識を取り戻してからもうそろそろ1ヵ月……まだ経ってないけどそれくらいか。俺についに生理が来たのか……。


「大丈夫? ボーッとしてるけど……あ、水飲んで」
「ボーッとはしてないけど……」


 貧血気味が頭が上手く回らない。なんとかコップを手に取って水を飲み干す。


「ついにクロアちゃんも立派な女の子だねぇ」
「そうね。これから大変になると思うけど、私達がいるわ。何でも相談して」
「……はぁ……」


 あんなのがこれから続くのか……。


「あっリグ君。クロアちゃん起きたよ」


 リグッ!?


 俺はその言葉に、何故かドキッとしてしまった。どうしてだろうか……足音が近づいてくる程、俺の鼓動が早くなる。


「大丈夫か?」
「っ……」
「顔が赤いぞ?」
「だっ、大丈夫だから……はいコップッ」
「あっ落ちちゃう」


 自分でもよく分からない感情に戸惑いを隠せず、俺は適当にコップを置いて布団の中に潜った。


「っ〜〜!」


 咄嗟に動いた為、腹痛が更にキツくなった。ゆっくり動かないと刺激が強い。まるでお腹全体が締め付けられるような……ピリピリと麻痺している感覚だ。


「本当に大丈夫か?」
「っ……大丈夫」


 肩に触れられただけで、俺はビックリしてしまった。
 本当に俺はどうしたのだろうか。リグを見ただけで、声を聴くだけでこんなにもドキドキするなんて……。


「まあリグリフ君、しばらくゆっくりさせていよう」
「あぁ……そこに座って話そう」


 ティライと学園長、そしてリグが何やら話し始めた。


「……うるさい……」


 こんなにも苦しんでいるというのに、3人は俺を無視してお話かよ。ゆっくりしたいんだから静かにしてくれ……落ち着けない。


 またカーテンが開かれて、誰かが入ってきた。


 俺は横を向いている為、誰が来たのかは確認出来ない。が、その人は俺の横腹を触って、優しく撫でてくれた。


「っ…………」
「大丈夫よ。安心して」


 その声は学園長だった。
 撫でられていると、ほんの少しだけ楽になったような気がして、そのまま眠くなった。


ーーーーー


ーーーーー


ーーーーー


「っ……ん……あれ……」


 気づけば部屋は暗くなっていた。
 腹痛も無くなり、なんとが動けるようになったのでベッドから降りる。
 そのままカーテンの外に出ると、机に向かって何か書いているティライがいた。


「あっ、クロアちゃんおはよう。まだゆっくり寝てていいよ」
「いやもう大丈夫。何してるんだ?」
「今日から日付を記録していくの。これでクロアちゃんの生理周期が分かるようになるから、少しは対応できるようになると思う」


 なるほど。この世界だと経過した日数で決めるのか。


「……飲む?」
「ありがとう」


 コップに入った飲みかけのお茶を貰ったので、ティライの横に小さな椅子を持ってきて座って飲んだ。


「もう夜中だよ」
「さっきまで寝てたから眠れそうにない」
「あはは、そうだよね」


 ティライが羽のペンを置いて、ゆっくりと背筋を伸ばした。


「最初ビックリしたでしょ」
「ああ……うん。なんかみっともない姿見せちゃった気がする。ソフィとか……リグに」
「良かった……」
「何が?」
「クロアちゃんが問題なく育ってくれて」
「……親じゃあるまいし」
「でも私にとってクロアちゃんは子供みたいなものだよ」


 まあ1歳からの付き合いだもんな。それに、今じゃ親より付き合いは長いかもしれない。


「いつでも私のこと頼って」
「……分かった」
「……あ、そうそう。これ」
「これ……?」


 ティライが丸まった包帯を取り出した。


「これを……説明するの難しいから実際にやっていいかな?」
「何するんだ?」
「いつ血が出ても大丈夫なように……これを巻くんだけど……恥ずかしいよね」
「……いや、方法教えてくれ」
「難しいから実際にしないといけないんだけど……」
「ああ、頼む」


ーーーーー


「──、後はこれをここに入れるだけ。これで固定されるから、この上からパンツ履けば大丈夫だよ」
「分かった。ありがとう」


 包帯の巻き方を教えて貰った。
 その上からパンツとスカートを履いて、隠す。


「……あっ、別に毛が生えてる事は普通だから心配しないで」
「別に気にしてなかったんだけど……」
「ごめん」
「そういえば血濡れたパンツ、どうなったんだ?」
「ちゃんと洗ってあるよ」
「そうか」


 気づいた時には汚れがなくなってたけど、なるほどそういう事か。


「……なんか……色々とありがとう」
「礼なんていらないよ」


 前世の女性達も、こんなに辛い体験をしていたのだろう。


「まだ眠れそうにない?」
「眠れそうにないな」
「じゃあ眠くなるまで付き合うよ」
「……いいのか?」
「うん。暇だしね」
「ありがとう……」


 その後、俺とティライは昔の事や、ティライの恥ずかしい思い出、そして恋バナを聞かされた。
 日が登るまでには眠くなり、俺は医務室で寝させてもらった。また腹痛が来そうで怖い。そんな気持ちがあったが、ティライが俺の傍にずっと居てくれたので、安心して眠ることが出来た。

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