女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

40話 ついにやってきた恐怖



 とりあえず、これから俺がする事は学園での勉強をしっかりとして、無事に卒業する事だ。
 卒業から成人になるには、あと3年。この世界では18歳で立派な大人として迎えられる。


「クロア先生〜教えてくださ〜い」
「は〜い」


 今は魔力コントロールの方法を、先生と一緒に教えているところだ。
 新入生と先輩達、それぞれ大勢いるので教えるのが大変だ。こんなのを今まで1人で教えていた先生には驚きである。


 ちなみに、先生として生徒の前に立つ時も制服を着ている。まだ生徒だからな。


「うぅ〜できねぇよぉ〜……」
「まだまだ時間かかるから、少しずつ出来るようになるよ」


 新入生にはなるべく優しい口調で話しかける。以前、普段通りに説明していたら「できない」 といって泣き出した子がいた。あまり急かすと不安になるらしいからな。


「ほら、あそこ。先輩でもまだ出来ない人がいるんだよ」
「ほんとだ。俺先輩より早くできるようになるかな〜?」
「きっとできるよ」
「クロア先生来てくださ〜い」
「いまこの子に教えてるから待ってろ!」
「早く〜っ!」


 意外にも俺は生徒達に人気者だ。特に男子生徒。男友達が出来るのは嬉しいことである。ただ人気過ぎるのもどうかと思うな。
 一部の女子からも人気があるらしいのだが、そういう人は基本的に暗い人物が多い。男らしくて頼れる、という安心感と同性という安心感があるからだろう。


 授業は基本的にキリの良いところで終わる。大勢の生徒に教えて、少し疲れてきたところで先生の声が上がった。


「はいっ! 今日の授業は終わり! またクロア先生に会いたいなら授業受けに来ることだな!」


 以前は女の先生だったのだが、今は男の先生に変わっている。


「クロア先生お疲れ様でした!」
「「お疲れ様でした!」」


 このように、授業が終わると俺を見て挨拶するのが生徒の間で決まっている。


「今日も助かったよ」
「いえ、優秀な生徒を育てる為です」
「5歳で先生になれるようになったんだろ? 凄いよな」
「そんな事ありませんよ」
「もっと自信を持て! 凄いからこそ人気があるんじゃないか」


 そういって背中をバンバンと叩かれた。やはり男のコミュニケーションというのはやる気が出る。


「ありがとうございます、また授業がある時は呼んで下さい。もしいなかったら図書室か学園長室、それか、王城にいます」
「ははは……王国騎士団の人と一緒に先生出来て嬉しいよ。この後予定とかあるかい?」
「特に無いですが……リグに会いたいので」
「一途だなぁ〜」
「では失礼します」


 リグに会いたいというのは、別に寂しいからとかそういう女々しい理由ではない。単純に楽しいからだ。
 教室を出て向かったのはA-975号室。いつもこの部屋に友人が集まるので、鍵の意味が無い。


「クロアちゃんお疲れ〜」
「おぉっす」
「ただいま〜……はぁ疲れた」


 ソフィとリグがゴロゴロしていた。


「生徒一人一人に気を配らないといけないから疲れるわ……」
「大変だな……」


 リグは唯一愚痴を話せる友人。前世から友達、なんて面白い関係だから何でも話せる。


「そういや、リグは冒険者の仕事しなくていいのか?」
「ああ、それなりに金貯めてたからな」


 そういって大きな袋をユサユサと振った。ジャラジャラとした音からして硬貨。つまり金だ。


「私の給料日いつだろ」
「ん? もうすぐじゃないか?」
「そうなのか?」
「ああ、全国民の給料日は基本的に一緒だからな」
「へぇ〜……じゃあそろそろ学園長から呼び出しあるか」


 なんて金の事を思い浮かべながらベッドで横になると、ソフィが上に乗っかってきた。


「寝るのは良いけどなんで体の上?」
「ここが私のベッド。枕も気持ち良い」
「人の胸を枕にするな。痛いから」
「じゃあちょっと下がる」


 最近ソフィの甘えてくる方法が多種多様になった気がする。以前は身体を密着させてくるだけだったけど、今はとにかく俺でリラックスしようとしてくる。
 まるで足に敷かれてるみたいだ。


「ソフィは奥さんに向いてるな」


 リグが変な事を言い出した。


「クロアちゃんは誰と結婚するの?」
「しないよ」
「しないの?」
「うん。男に興味無いし」
「え? でもリグ君の事好きなんだよね? リグ君と結婚するんでしょ?」
「ぶっっ! ……する訳ないだろ。男は好きだけど、そこまでの感情は抱かない」


 リグと結婚なんて……結婚したら子作りする訳だろ。そしたら……。


「どうした? 顔赤いぞ」
「なっ、何でもない! 少し寝る!」


 変な事を考えてしまった……最近自分でも様子がおかしいと思う。


「じゃあ私も寝る〜」
「……っ!」
「どしたの?」
「い、いや……あんまりお腹抑えるのやめてくれ」
「分かった」


 な、なんだ今の。ただの腹痛? しかし……俺が腹痛なんて珍しいな。
 ……まあ問題ない。寝たら治るだろう。


ーーーーー


──眠れない……。


 あれから段々と腹痛が酷くなってきた。腹痛というか……何といえば分かりやすいのか……とにかく痛くて苦しい。


「……っ!?」


 何か異常があるのかと、布団の中のスカートをめくって確認すると大量の血が出ていた。


「ど、どうしたクロア!」
「クロアちゃん大丈夫!?」


 俺はパニック状態に陥った。どうしてこんなに大量の血が出ているのか。怪我、痛み、死。様々な思考が一瞬で思考を埋め尽くし、過呼吸状態になった。


「血!! やばい! クロアちゃん死んじゃうよ!!」
「血!? ま、待て……とりあえず落ち着け。あまりクロアを刺激するな。ティライを呼んでくる」
「う、うん。……クロアちゃん? クロアちゃんっ!?」


いつの間にか俺は、失神していた。
 パニックに陥ると、人は何も出来なくなるのだ。

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