女嫌いの俺が女に転生した件。
38話 リグに対する感情の変化
「おぉクロア。なんか雰囲気変わったな」
「それソフィにも言われた」
制服に着替えて図書室に行こうとしていたところ、丁度リグと出会った。
「王城、どうだった?」
「まあ意外と普通だった」
「アーガスさんに会ったんだってな」
リグもその事知っていたのか。
「羨ましいな……」
「羨ましい?」
「実は俺、アーガスさんのファンなんだよ」
「あ、あぁそう……」
どうでもいい事を聞いてしまった気がする。リグ──颯太は昔から、自分好きな事になると熱く語り出す癖がある。
「国同士の戦争を、1人で戦況ひっくり返したとか……マジで何者だよ……っておい、どこ行くんだ」
ちっ、話している隙に図書室に行こうとしたのに気づかれてしまった。
「図書室に行くから、邪魔だけはしないでくれ」
「あ、あぁ……一応俺も着いていっていいか?」
「この学園の生徒じゃないのに?」
「良いじゃないか。一応生徒じゃなくて学園に居る事は許されてるんだから」
まあ邪魔しないなら大丈夫か。俺はとりあえず、王国騎士団の過去について色々と調べたい。
「じゃあ転移で送ってくれ」
「おう」
リグを有効活用して図書室に転移で送ってもらった。俺も転移魔法使えるようになりたいんだけど、学園長教えてくれるかな……。
俺はとりあえず、歴史の本が置かれている本棚までやってきて、王国騎士団について書かれている本を探す。
「やっぱお前、有名人になってるぞ」
「ん?」
リグに言われて周りを見ると、生徒達が俺を見ていた。
王国騎士団に入ったんだし、それだけ注目されるのも仕方ない事だ。人に見られながら本を読むのは苦手なんだが、どこか個室を探す必要があるな。
「あ、あった」
10年前とは違って、高い位置にある本も自分で取れるようになった。あの時は……エミルさんに取ってもらったんだ。今は自殺してしまったけど……。
「どうした?」
「何でもない。どこか個室ある?」
「あぁ〜……個室……本借りて自分の部屋で読んだらどうだ」
「借りれるのか?」
「そんな事も知らなかったのか?」
いままで図書室の使い方知らなかったから借りれる借りれないなんて知るはずがない。
「じゃあ俺が借りてくるから、待ってろ」
「任せた」
リグに本を渡して、俺は適当な椅子に座って天井を見上げた。
「懐かしいなぁ……」
天井には、10年前にも見ていた学園の地図が描かれている。10年前より少しだけ線が薄くなっているが、それもまた良い。ワビサビという奴だ。
図書室の天井にワビサビを見出すってのもどうかと思うけど、今の俺はちょっとした事でもポジティブに考えれる思考になっている。
王国騎士団に加入したからだ。
「待たせたな」
「……」
「どうした?」
「何でもない」
どうやら俺は、王国騎士団に入った事で余裕が出来ているのだろう。生まれて最初に決めた夢が叶った。後は俺自身が頑張るだけだ。
「なぁリグ」
「ん?」
「人生っていうのは、明確な目標が決まってるとこうも充実した生活が出来るんだな」
「そうだな。俺は前世で気づいたぞ」
俺より何十年も生きているのだから当たり前だろうな。それなのにこの世界で何の才能も持ってないリグって……。
まあいいや。
ーーーーー
誰もいない部屋に戻って、俺はベッドの上に座った。
「……リグはなんで私と一緒に?」
「嫌か?」
「別に嫌じゃないけど……」
「なら良かった」
なんだろう。リグと一緒にいると自分のペースが乱されてしまう。
「…………」
全然集中できない。ずっと心臓の音が聞こえてくる。息が苦しい。
「……リグ……」
「ん?」
「なんかずっとドキドキしてて集中出来ないんだけど、リグがいるからだと思う」
「お、それって俺が好きだからか?」
「違うから。とりあえず部屋から出ていってくれ」
「あぁ〜分かった。気配消しとくから、それでいいだろ」
すると突然、リグの雰囲気が変わった。
リグの姿を目で捉えていないと存在を認識できないような。本当に気配というか存在感が無くなった。
「ずっとそうしてて」
「おう」
これでやっと集中が出来る。どうして俺はリグ相手にドキドキしてしまうんだ……。
ーーーーー
パタン「ふっ……〜〜〜〜っ!!」
王国騎士団についての本を読み終えて、大きく背伸びをした。
「読み終わったか」
「あっ、いたのか」
すっかりリグの存在そのものを忘れていた。
「何か分かったか?」
「ああ。王国騎士団ってのは元々5人で結成された小さい騎士団だったらしいんだけど、そこに1人の魔女が現れて大きな騎士団にしていったとか。それが王国騎士団になったって」
その魔女というのが学園長と何か関係あるのかは分からないが、かなり昔の話らしいし知ったところで意味は無い。
とりあえず今俺が入ってる王国騎士団は、その魔女のお陰で作られたグループという事か。
アーガスさんならその魔女について何か知ってそうだな。
「……」
「クロアって時々考え込む事あるよな」
「……そうか?」
「右手の親指と人差し指を擦り合わせながらどこか遠くを見つめてるんだよ」
自分でも気づかなかった。俺にそんな癖があったのか。
「リグに人を観察する趣味なんてあったんだな」
「いや、クロアの動き見てると楽しいんだよ」
「私限定かよ」
「好きだからな」
「っ……」
最近リグ相手に酷く動揺する事が増えた気がする。
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