女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

24話 クロアは先生になれるよっ!



 それから、俺はただひたすらに光の玉を持ち替える練習をした。右手に出したら左手へ……これがなかなか難しいのだ。
 魔力を送る右手から離れると、光の玉の魔力が空気中に分散されるのはなんとなく分かった。ただ、どうやって右手に繋がっている光の玉を、左手へ移すかだ。
 どうしても魔力が途中で途切れてしまう。まるで長い髪の毛を引っ張り、プツッと切れるように。


「クロア、調子はどうだ?」
「未だに分からない……」


 そろそろ授業が終わってしまうというのに、どうしてこれが出来ないのだろうか……。


「まあ初日で俺達を超えたんだ。明日には出来るようになってるだろうよ」
「そうかなぁ……」
「焦りすぎなんだよお前は。時間はまだまだあるんだ」


 そう……だよな。一応先輩達を追い越す事は出来たんだし、追いつかれる前にこの課題をクリアしたいとは思ってるんだが……難しい。


「……何が難しいんだ?」
「いや、魔力が途中でプツッと切れるんだよ」
「あぁ……俺そもそもイメージを込めることすら無理だから何も教えられないわ。先輩ヅラして悪い」


 なんじゃそりゃ。
 しかし……これ本当に出来るのか? 魔力が切れないように太く、とか糸みたいにできねぇかな……。


「あぁ無理……」


 魔力の流れを太くする、とか何がなんやら……細い糸は細いまんまだもんな。
 細い糸を頑丈に……!


「いやっ……出来るかなぁ……」
「お?」
「いや、今から試すんだけど……多分無理っぽいなぁ……」


 光の玉に魔力を送る細い道。それを何本かに分けて、それを拗じるように……目には見えないけど、なんとなくのイメージでグルグルと……そのまま左手へと移動……切れるなよ……切れるなよ…………。左手から魔力の道を伸ばして……光の玉に……繋げ……れた!
 そのまま右手から魔力を止める…………。


「で…………出来た!!」
「おぉっ!!」
「「マジかよ!!」」
「先生!」
「こいつやるなぁ!」
「天才だ!!」


 よっしゃぁあぁああああ!!! ってやばい……イメージが複雑すぎて頭痛してきた……。


「クロアちゃん出来たのか!?」
「は、はい」
「凄い!! これもう先生レベルッ!」
「えぇっ!?」


 せ、先生レベル!?


「どういう事ですか?」
「先生になるには、これが出来ないとダメなんだ。クロアちゃんは、もう先生になれるよ!」
「そ、そうなんですか……」
「私と一緒に、生徒達に教えてくれないか?」


 そ、そう言われても……他に受ける授業もあるし……。
 チラッとリグを見ると、目が合った。


「俺もお前に教えてもらいたいし、頼む。この授業がある時は必ずここに来よう。
 その代わり……他の授業で教えれる事があったらなんでも手伝う」
「わ、分かった……」
「よしっ!! じゃあこの授業がある時、先生が呼びに来るからな! 部屋はどこだ?」
「A-975です」
「覚えた!」
「「俺も覚えたぞ」」
「「俺もだ」」


 やばい……先輩達に俺の部屋を知られてしまった。


「じゃあ……もう授業は終わり! 授業の予定表は寮塔のそれぞれの階に1枚ずつ貼ってある紙があるから、それ確認してきてね!
 あ、先輩組が連れてくるから大丈夫か。じゃあ次の授業は私とクロアちゃんで教えるので、楽しみに! 解散!!」


ーーーーー


「先生テンション高かったなぁ」
「良かったな。先輩達を見下せるぞ」
「やめろ……恨まれる」


 自分の部屋、A-975号室に戻っているが、先輩達も後ろからこっそりと付いてきている。
 それに、俺の授業での成績を知った不良グループのメンバーが俺とリグの周りを囲んで、ドヤ顔で歩いている。


「俺らのサブリーダーに近づくんじゃねぇ!」
「クロアさんは天才なんだぞ!」


 このように、周りの生徒にガン飛ばして歩いている。リグは 「仕方ない」 だそうだ。リーダーだろ何とかしろ。


「クロアさん! ソフィアさん来ました!」
「クロアちゃ〜んっ!」


 ソフィだけは不良グループの輪の中に入れる。不思議だなぁ。


「クロアちゃん凄かったんだって?」
「うん、何か次の授業から先生の役割になった」
「凄い! クロア先生だね!!」
「あはは」


 そんな会話を、不良集団は微笑ましく見守っていた。お前らそれでも不良か。優良じゃねぇか。


「私ね! 1と1は2って分かったよ!!」
「1+1だね……凄いね」
「えへへ〜先生にもクロアちゃんにも褒められちゃった」


 5歳でまだ1+1習ってるのか……心配だな。


「3+2は?」
「えっ? えっと3……と2……」


 俺が問題を出すと、指で数えて計算している。


「っと……4!」
「5だよ」
「ご……? 習ってない」
「えぇ……」


 ……まあそれも無理はないか。俺も家にいる時に数字なんて数えたことなかったしな。


「部屋に戻ったら教えてあげるよ」
「やったぁ! ありがとうクロア先生!」
「天才だ」
「5歳なのに凄い」
「流石クロアさんだ」
「クロア先生に教えられたい」


 勉強できるだけでこんなに褒められると調子狂うな。前世の記憶っていうチートがあるからか……だからリグもリーダーになれたんだな。不良だけど。


「クロアさんおかえりなさいませっっ!!」
「「おかえりなさいませっっ!!」」


 部屋の前に着くと、まるでヤクザの頭が通るような道が出来ていた。このままだと俺の評判が悪くなってしまいそうだ。
 少しでも早く、このグループの印象を良くしていかないとな。


「じゃ、じゃあクロア……次授業行く時、また呼びに来る」
「分かった、またな」


 部屋の扉を閉じて、平和な空間に帰ってきたという実感をヒシヒシと感じる。


「クロアちゃん人気者だね」
「ありがた迷惑な話だよ」
「ありがた迷惑……ありがたいけど迷惑……その言葉いい!」


 ソフィに勉強を教えるのも大変そうだ。

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