女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

15話 変な部活動集団もいるもんだ

 結局、昨日の夜のアレはなんだったのか分からない。本当にお化けなのだろうか……。


「クロアちゃんおはよう……」
「……おはよう」


 俺と同じベッドで眠っていたソフィが目を覚ました。二人とも明るくなってから眠りについたので、多分今は昼だろう。


「リグリフの所に行くけど、ソフィはどうする?」
「まだ寝る……」
「そ、そう。じゃあおやすみ」
「んふ〜……クロアちゃんの匂い……」


 お化けも怖いけど、ソフィは何か他とは違う怖さがあるな……。


ーーーーー


「リグリフ君……まだ目を覚まさないの」
「そうか……」


 ティライの仕事場である医療室。ティライは魔法の中で治癒魔法が得意らしく、専門の資格を持っている。
 リグリフは、右腕の方から腰にかけて包帯が巻かれている。息はしているようだが、目を覚ます気配がない。


 リグリフが目を覚まさないと、今回の事件は謎のままで終わってしまう。早く目を覚まして、と願うしかない。


「こんにちは。クロアさんとティライさん」
「あ、学園長。こんにちは」
「こんにちは」


 学園長が俺の隣にやってきたので、今まで座っていた椅子ごと距離を離した。
 それでも学園長は俺の真横にやってきた。……怖い。


「そう怯えないでいいわよ」
「じゃあなんで横に来たんですか」
「話があるの」
「話……?」


 学園長直々に話……リグリフについての事だろうとは思うが、何だろう。


「実は、後は4日後に新入生歓迎会があるの」
「4日後!? 先生達何も聞かされてませんよ!?」


 ティライが驚きすぎてベッドの角に膝をぶつけている。


「でね、歓迎会の時に先輩達と一緒に学園探検をするのよ」
「……それで、その先輩をリグリフさんにする……という事ですか?」
「それはまだ分からないわ。だから、学園探検は私と一緒にしましょう?」


 が、学園長と……一緒に!?


「嫌です」
「そうキッパリ断られると胸が痛いわ」
「他の人は先輩方と行動してるんですよね? そんな中 ──学園長と行動している生徒がいる──。なんて話が広まれば目立ってしまいます」
「クロアちゃん……貴女はもう学園内では超有名人よ?」
「……え?」


 俺なんかが有名人? 何言ってるんだこの人は。俺は5歳の生徒だぞ。


「新入生に、守護七戦士(7人のガーディアン)候補が現れた。ってね」
「守護七戦士!?」
「……なんですか? それ」


 守護七戦士って……まるで海外アジアのゴミ映画みたいな名前だな。


「この学園で……私の次に偉い生徒達。と言ったら分かるかしら」
「よく分からないです」
「まあ、簡単に言うなら学力と戦力が学園トップ。7人で学園の平和と明るい未来を作り出す……部活みたいなものね」


 それ部活っていっていいのか。学園トップの人間達ってかなり凄いんだよな? よく前世の漫画なんかでも、そういう集団が現れたら全員動きを止める、みたいな話あったし。
 ん……待てよ……?


「待ってください……なんでそんな人達がいるにも関わらず、リグリフはこうなってしまったのですか?
 」


 そんな人達がいるからには、俺が監禁される事も、リグリフが傷だらけにされる事も無いはずだ。


「謎よね。……もしかすると守護七戦士が犯人なのかも……ふふふ」
「えぇ……」
「皆、自分の地位を守る為に必死なのねぇ……」


 それもし本当だったらこの学園やめたい。……何故平和を守る集団が生徒襲ってんだって話だ。


「その人達に会うことってできますか?」
「私でも無理ね。この学園のどこかに部室持ってるらしいんだけど、どこにあるか分からないの」


 いい加減部活みたいな言い方やめてあげよ?


「学園を作った人に聞けばいいじゃないですか」
「それが、その子達が勝手に部室を作ったのよ。どれだけの権力と金を使ったのか知らないけど……まあ、それで平和が保たれるのだから気にしてないわ」


 学園長が最も気にするべき問題だろうが。
 今後は守護七戦士とかいうニダ国で作られそうな臭い名前の部活動集団の情報を集めた方がいいな。


「……あれっ? 今、リグリフさん動きませんでした?」
「そうかしら?」


 ずっとリグリフの様子を見ていたティライが、急に立ち上がって、リグリフの手を触った。


ピクッ
「う、動いてる! リグリフさん!!」


 指が少しだけ動いたな。


「無理に起こすのは良くないわよ。自分の意思でゆっくりと起きさせなさい」
「は、はい……起きるかな……」


 しかし、指が動いた以外には何もなかった。


「……まだ時間がかかりそうね」


 いつになったら目を覚ますのだろう……。


ーーーーー


「また明日、会いに来るわ」
「はい……」


 いつ来るか分からない、ってのはかなりのストレスになる。そんなストレスを学園長に与えられたのを最後に、別れた。


「私は部屋に戻るけど、ティライは?」
「私はリグリフ君の様子を見てる。気にしないでいいよ」
「分かった」
「ソフィアちゃんの対応、頑張ってね」
「う、うん」


 あの監禁事件からソフィアは俺に懐いてしまっている。余計に対応が大変になってしまった。


 部屋に帰ってくると、早速ソフィが俺に抱きついてきた。


「おかえりっ!」
「うん」


 抱きしめられたままベッドに座ると、ソフィも俺の横に座ってきた。隣のベッドは荷物が置かれている。


「……ん? ここ湿って……」
「あっ……」


 枕が湿っている。
 ソフィの顔を見ると、真っ赤にしている。


「……次からヨダレ付けたらベッド移動ね」
「ヨダレじゃないけど…………うん」


 ヨダレじゃない……? …………。


「何これ」
「……我慢出来なくて……」
「お漏らし……?」
「違う……うぅ……聞かないで!」
「……」


 駄目だ。ソフィが俺の枕で何をしていたのか、考える度に夜眠るのが怖くなる。無心になれ……南無南無。


「……はぁ。後4日で新入生歓迎会があるから、その間くらいは大人しくできる?」
「で、出来る……クロアちゃんと一緒なら」
「他の子達と仲良くできる?」
「……頑張る……」


 俺からのお願いならそれなりに聞いてくれそうだ。前よりは少しだけ扱いやすくなった……のか?


「あっちのベッドで寝るのは?」
「嫌だ」


 それだけはバッサリと拒否されてしまった。

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