女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

11話 我が儘同居人ソフィア



「多分、今日も明日も何の予定もないと思うの」
「そうだな」


学園長ベリアストロさんがレズだっていう衝撃な告白のイベントはあったけどな。


「今日はゆっくり休むとして……明日、一緒に学園体験しない?」
「えっ……でもティライは先生なんじゃ……?」
「大丈夫よ。私は治癒魔法を教える先生で、基本的に生徒達が怪我しない限り仕事は無いから」


それって……大丈夫なのか。
まあ学園内の施設を把握する事は大事だしな。ここは素直に感謝するか。


「ありがとう。明日……朝から?」
「いつでもいいよ?」
「じゃあ……」


この世界に時計がない不便さが苦しいな。


「昼からで」
「分かった!」


久しぶりにゆっくり眠れそうだし、昼まで寝てもいいよな。


「じゃあ私は仕事があるから、今日はここで!」


そういって部屋から出ていった。
生徒怪我してたんかい!


ーーーーー


部屋に残った俺は、改めて制服の着心地を確認する。
クローゼットを開けた時に、扉に大きな鏡が付いていたので、それで自分を見る。


「ん〜……」


まあ、5歳にしては可愛い……というかカッコいい? 方だろう。学園長が俺を気に入るのも分からなくない……けど同性愛ってのは分かりたくない。


ガチャッ


突然部屋の鍵が開いて、誰かが入ってきた。
咄嗟に布団の中に入ったのだが……。


「もう先に来てたんですか」


俺と同じ年代の、小さな女の子だった。


「えっと……」
「ソフィアって名前。ソフィって呼んで」
「あ、私はクロア。よろしく、ソフィ」


この部屋の鍵を持っているという事は、これからこの子と一緒に過ごしていくことになるのか。
 見た目は……ショートカット銀髪に蒼目。身長は俺とそんなに変わらない。


「クロアちゃん」
「ん?」
「ベッド」
「……ん?」
「こっち嫌だ」
「そ、そうなんだ」


めんどくせぇぇぇええ!! 一言にまとめて話してくれねぇかな!? まぁ5歳だから仕方ねぇけどっ!


「変わって」
「でも、私が先に選んだんだし」
「変わらないと殴る」
「えぇ……」


何だよコイツ。


「先生に言う」
「そ、それは困る……」


先生に対して評価を上げてある今、それを下げられると今後の対応が変わってしまうかもしれない。
 そんな俺の様子を見て、悪戯っ子のような顔をしてドアに手をかけた。


「分かった! ベッド変えてあげる!!」
「ありがと」


はぁ……嫌な奴と同居人になったなぁ……。
 折角馴染みつつあった荷物を、隣のベッドに移動させる。
 さっきまで俺が使うはずだったベッドとテーブルの上に、雑に荷物を置いていくソフィ。何か嫌だ。


「もっと綺麗に並べないと駄目だよ」
「そんなの誰にも言われてない」
「……心が綺麗な人は荷物の整理も得意なんだって」
「…………綺麗にできるもん」


チョロッ。こいつ我が儘な癖に意外とチョロいんだな。ってことは……上手く会話で誘導すれば我が儘も切り抜けれるかもしれない。


「いやぁ〜……出入口に近いベッドはすぐに外に出れるから便利だなぁ〜……」チラッ
「……何?」


どうやらベッドの位置を変えるつもりは全くないようだ。


 ソフィが荷物を綺麗にしたつもりで、満足そうにベッドで横になったので、俺も布団に入った。


「クロアだっけ」
「うん、名前な」
「私はソフィア。ソフィって呼ばれてる」
「知ってる」
「クロって呼んでいい?」


なんだその野良猫みたいな名前は……。


「できればクロアのままが嬉しい」
「そっか……クロア」
「うん?」
「嬉しかった?」


……馬鹿なのかこいつ? 自分の名前を呼ばれる度に 「嬉しい!」 ってなる奴がいるか。


「……嬉しかったよ」


でも、ここで嬉しくない。なんて言えばクロって呼ばれそうなので嘘をついた。


「えへへ……嬉しかったんだ。私に名前呼ばれて……」


ソフィは嬉しそうに笑った。


「今日から友達だね」
「……そ、そうなるのかな」
「そうだよ」
「ああ……そうだね」


こんな奴と友達なんて嫌だぁぁぁああ!!


「よろしくね」
「うん、よろしく」
「……おやすみ」


え、寝るの?


「おやすみ」


ティライと大人の会話をしていた俺にとって、小さな子とのコミュニケーションがこんなにも大変な事だなんて思いもしなかった。
 さっさと寝て、明日と昼にティライが来るのをまとう。


ーーーーー


ユサユサ


な、なんだ……体が揺さぶられて……。


ユサユサ
「なんだよ〜……」


眠い目を擦りながら、目を開く。


「トイレ」


ソフィが真っ直ぐと俺の寝顔を見つめて、「トイレ」と呟いた。


「トイレ……?」
「トイレ」
「……そ、おやすみ」
「トイレ!! 連れてって!!」


トイレに連れてって欲しかったのかよ。


「怖いの?」
「こ、怖く…………怖い……から来て」


あ、なんだ。可愛いところもあるんだな。


「分かったから……一緒にトイレ探そうね」
「ありがと」


部屋の外はとても暗い。俺の後ろから、ソフィが腕を握りしめている。
はぁ……大変だなぁ……。


暗い廊下を歩いて、トイレがどこにあるか探す。


コーンコーン
「ひっ」


どこからか足音が聞こえて、ソフィが怯えるように俺に抱きついてきた。


「大丈夫だって。先生が見回りしてるんだよ」
「お化けだよ……」


お化けなんて信じてるのか。


「あっ、トイレあったよ」
「一緒に来て」
「えっ?」


その後、俺はソフィの下半身から温かい液体が流れるのを近くで見ることとなった。
腕を掴まれて逃げられなかったんだ。仕方ない。

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