女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

6話 化け物1歳クロアちゃん



「これで気を緩めたら駄目よ。今後も更に厳しくしていくからね!」
「分かったよ」


魔力コントロールのコツを完璧に理解した俺は、達成感と共にこれから先の訓練が楽しみになった。


「騎士たるもの人事に尽くせ。人の為に何かを達成することが大事」
「なるほど」
「といっても……まだクロアちゃん1歳だから。ははは」
「ははは……」


1歳で才能開花しちゃったよ。


「ま、大きくなるまでに庭で筋トレだね」
「筋トレ……」


つまり外での運動だ。
 前世での俺は運動は苦手で、基本的に頭を使う事は好きなのだが体を動かすとなるとまるっきり駄目だ。
 しかし諦めるのは早い。この身体の運動神経が完璧なら……俺はあっという間に弱点無し!


「早速筋トレしよう!」
「その前に……」
「……?」


ティライさんがバッグの中から何か取り出した。
 これは……スポーツブラに短パン? それにサイズも小さい物から大きな物まである。
他に、ダンベルや体に巻く重りなど。様々な道具が用意してあった。


「いつの間に?」
「そろそろかな〜と思って、三日前から持ってきてたのよ」
「そんなに前から……重かったでしょ」
「そりゃ勿論!」


凄いな……大量の重りを持ってきても平気なのか。


「早速着替えて」


そういってスポーツブラと短パンを渡された。


「あ、パンツも脱ぐんだよ」
「へ……?」
「パンツなんて必要ないわ。少しでも軽くするのよ」
「重りを使うのに?」
「っ……いいの!」


そ、そうか……じゃあ着替えるか。


「部屋から出てって」
「ふふ、恥ずかしがり屋さんね」
「うざっ……」


人の着替えを見る暇があるなら庭に出て準備してろ。


ーーーーー


「うっ……キツイなぁ……」


体にフィットするように作られているようだ。


「着替えた〜?」
「着替えた」
「じゃあ庭においで〜」


部屋を出ると、ミリスが俺の姿を見て目を見開いた。


「かぁぁんわぃぃぃぃぃい!!!」
「ちょっ!!」


抱きついてこようとしてきたので、何とか足の間を通って庭へ向かう。


「あぁっ! そんなっ……」


後ろで抱きつけなかったミリスがガッカリしている。俺は早く筋トレしたいんだ!


庭にやってくると、ティライさんも俺と同じように着替えていた。胸それなりにあったんだな。


「さて……早速だけどこれ持ってくれる?」
「ダンベルか」
「ダンベル?」


ん? この重りの名前知らないのか?


「知らないの?」
「う、うん。異世界から転移してきた人が持ってきた技術で作ったから……名前はよく知らない。
どうして分かったの?」


ギクッ……この世界に来て初めて見た物の名前を知っている……となるとバレてしまう。


「ほ、本で見たからね〜……ははは」
「本? ……あぁ! クロアちゃん本が好きだもんね!」
「うんっ! 大好き!!」
「私もちゃんと覚えなきゃ……ダンベル、ダンベル……」


何とか誤魔化せたようだ。
ふぃ〜もう汗が出てきた。


「早く筋トレしないのか?」
「あっ、そうだった。このダンボル? 持って」
「ダンベルね」


早速忘れてるじゃないか。


「うん、剣より軽いね」
「それは無意識に腕を強化してるからでしょ。魔力を抜いて」
「魔力を……えっと…………重いっっ……」


魔力コントロールは楽勝にだな。
しっかしこんな重いのか……何キロあるんだ?


「これ重さ何キロ?」
「キロ……?」


も、もしかして……重さの単位も存在してないのか!?


「確か2キロだった気がする」
「に、2キロかぁ……って2キロ!?」
「そっ。よく持てるね」
「は!?」


これが2キロ!? 重すぎるだろっっ……1歳に持たせるもんじゃねぇって!!


「無理っ……持てないっ!!」


地面にドスンと落とした。


「そ、そうだよねぇ……じゃあ0.5キロから始めましょう」
「うん」


ピンク色の可愛いダンベルを渡されて、両手に持つ。


「これくらいなら行けそうだ」
「じゃあ私は2キロ使おっと」


軽々と2キロのダンベルを両手で持ち上げた。やっぱ大人は違うなぁ……。


「あ、お母さんがあそこで見てるよ」
「え?」


後ろを振り返ると、笑顔で手を振るミリスがいた。
見られるなら真面目に取り掛からないと駄目だな……。


「せ、先生! お願いします!」
「良かろう! ではまずは、ダンベルを交互に、自分の息に合わせて上下させるのだ! こう!」
「こうっ!」
「こうっ!」
「こうっ!」


果たしてこれが真面目と言えるのだろうか。


ーーーーー


「はぁ……はぁ……腕がパンパン……」
「1歳で15回も上げれたら化物だよ」
「化物って言うな!」
「凄いわよ〜クロア! 天才!!」


しかし、ちょっと1歳にしては怪しすぎだろう。それに、頑張りすぎたせいで既に腕が痛い……。


「っ……」
「あっ、大丈夫?」
「痛いから休んでいい?」
「筋肉痛ね。良いわ……よく頑張ったね」


ふぅ……。俺はすぐにミリスの横に座って、腕を休める。


「クロアは凄いわね」
「そうかな……」
「他の家の子はダンベルを持とうともしないんだって」
「……そうなんだ」


やっぱ俺って異常だわ。


ーーーーー


それから毎日、ダンベルを使った筋トレ。全身に重りを巻き付けてのウサギ飛びを行った。
普通の1歳なら不可能であろう行為も、俺も強い精神があれば楽勝……とまではいかないが、それなりに出来る。


腕の筋肉や、腹筋も綺麗に付いてきて父親のバルジには褒められる。そしてミリスにはセクハラ。ティライには化物だと言われる。


なんだかんだで、俺も2歳になった。
誕生日が来ると、魔力が膨れ上がるらしい。理由は分からないが、それで誕生日だと認識して祝うのだそうだ。


そして、初めて両親からプレゼントを貰った。
ミリスからは本。バルジからはいつでも魔法の練習ができるようにと、ドーム型の置物を貰った。
ミリスに貰った本は、この国 "フロンガード王国" についての本だ。俺の為に買ってきてくれたのだろう。ありがたい。


そしてなんと、ティライからもプレゼントを貰った。


「……これって……」
「クロアちゃん専用のダンベル! 重さを魔力で調節できて、見た目も可愛くしてみたの」


ピンク色で、花柄模様のダンベル。


「ふざけてんの?」
「可愛いじゃん?」
「真面目にしなよ」
「うっ……」
「……でも、ありがとうな」
「っっ! ツンデレ萌えっ!!」
「うぐっ……」


悲しそうな顔をしたから、一応お礼を言ってみたところ変な勘違いをされて抱きしめられた。どうして女の子はすぐに抱きしめたくなるのだろうか。


「くっ、、くるしっ……!!」ペシペシ
「あっ、ごめん! 大丈夫!?」


危うく窒息するところだった。
貰ったダンベルを最も軽い状態にして、ティライの頭を殴っておあいこだ。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品