女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

3話 クロアは天才なのかもしれない

毎日のように、ミリスに本を読み聞かせしてもらって色々と分かったことがある。


今俺達が住んでいる場所は、ジスミン大陸の中にある "フロンガード王国" と呼ばれる場所らしい。
俺達の家族はバルロッテ家と言われて、この本にも名が乗っていた。貴族というのはそれなりに地位のある事なのだそうだ。
クロア・バルロッテ。これが俺の名前だという事だ。


フロンガード王国では、5歳から学園に通うことになっているらしい。後4年くらいだ。
そしてこの世界の時間というのは、基本的に誰も数えてないそうだ。
太陽が登れば起きる。暗くなったら眠る。寒い時もあれば暑い時もある。
その程度の認識らしい。


「クロア。今日からしばらくお父さん休みだから、沢山遊んでもらうのよ」
「はい、遊びたいです」


誰に対しても敬語で話すのが貴族の嗜み。らしいので、ちゃんと敬語で話すようにしている。


「クロア。外に出て遊ばないか?」


父親のバルジがニコニコと話しかけてきた。


「家で遊べる事がいいです」
「じゃあ……おままごとするか?」
「いえ、出来れば勉強がしたいです」


子供の時の時間を無駄にしたくないんでな。


「そ、そうか……クロアは大人だな」
「私とバルジの娘よ? きっと将来は一流の騎士になるわ」
「……騎士?」
「私達バルロッテ家は、先祖代々有名な騎士の家系なのは本で読んだでしょ? バルジのおじいちゃんのおじいちゃんが、この国の王様の護衛をしてたの」


へぇ……だから俺も騎士を……か。


「騎士は何をする仕事なんですか?」
「魔物っていう怖い生き物を駆除したり、悪い人から皆を守る立派な仕事よ。お父さんは傭兵っていうちょっと違う仕事なんだけど、覚える事は一緒」
「じゃあ騎士について学びたいです」
「……バルジ、貴方の判断よ」
「そうだなぁ……危険じゃない範囲で教えよう」
「よしっ!!」
「クロア。言葉」
「あっ……ありがとうございます」


今の内に将来の仕事を決めて、早めに長所を作ることで後後楽になる。
 あの時こうしていれば……なんて後悔はしたくない。


「そうだ。5歳になるまで家庭教師を雇おうか!」
「あらいいわね」


うっ……家庭教師……。癒しの空間であるこの家に、教師が入ってくるのか……。


「クロアの将来が楽しみねぇ……」
「そうだな」


とりあえず俺の目標は決めたぞ。
 体が女になってしまったのは仕方ないとして、せめて男らしい力を持った騎士になる。他の女とは違うって事を証明するんだ。


「そういえばクロア。あまり下半身を弄るのは良くないわよ。聞こえてるから」
「っ〜!!?」


何っ!! 俺の毎晩の楽しみが……バレてただと……!


「はっはっはっ。女の子だから仕方ないさ、性について知る事も大事」


"女の子だから"……。


「ダメよ! 騎士になるには誠実な心が必要なの! やましい心を持っていては騎士になれないわ!!」
「まあまあ、そんなに声を出すとクロアがビックリするだろ」
「あっ……ごめんなさい、クロア。別に貴女に怒ったわけじゃないの」
「はい」


これだから女は……すぐ感情的になるんだ。
いくら母親だからって、感情的に喚き散らすのは嫌だな。


「じゃあ今日はお父さんが読み聞かせをしてやろう」
「私はちょっと……部屋でゆっくりしてるわね」
「ああ、任せてくれ。この本でいいんだよな?」
「ええ。クロア、面白い本を読むでしょ?」
「やっぱりクロアは天才なのかもしれんな! はっはっはっ!」


そういってバルジに頭を撫でられた。綺麗な黒髪が乱れるからやめてほしいが……父親の優しさと力強さが合わさった手に撫でられると、なんだか恥ずかしい。


「じゃあ椅子に座ってご覧。父さんが文字を教えながら読み聞かせてやろう」
「っ! ありがとう!!」
「はははっ! クロアなら喜ぶと思ったよ!」


流石だ! 俺が喜びそうな事を考えて行動してくれる! やっぱり男は違うな。


ーーーーー


「……」
「何だ、眠くなったか?」
「はい……」


脳が活発に動きすぎて疲れた……チョコが欲しいな。この世界には無いのだろうけど。


「じゃあ一緒に寝るか」
「……うん……」
「よいしょっ」


バルジに抱っこされて、俺の部屋のベッドに寝かされた。
その横にバルジが寝てくれるだけで、安心感がある。


「おやすみ」
「おやすみなさい……」


きっと俺が寝た後、バルジはすぐにミリスの場所に向かうのだろう。多分いまのミリスは生理が来ているだろうからな。


ーーーーー


ーーー





「やぁ」
「は?」


気がつくと、あの白い空間でワンピースを着た神にあった。これで2度目だ。


「順調に成長してるみたいだね」
「あぁ……まあそうだな」
「むふふふふ……私の計画も順調に……むっふっふ」
「計画ってなんだ?」
「まだ秘密! でも、今のところ順調だし君にご褒美をあげよう!」


ご褒美? だったら世界で一番強いチートの能力が欲しいんだが。


「えっとね……えっと〜……どうしようかな」
「早くしてくれ……」
「あっ! これでいいや! 頭の回転が早くなる!」
「なんじゃそりゃ……」
「よく分からないんだけど、とりあえず良いみたい!」


はぁ……自分で作ったんだろうが。そこらへんしっかり調べてきて欲しいものだ。


「これがご褒美?」
「試作段階を試してみたんだけど、かなり良かったよ!」
「あっそ。気に入らなかったら、次あった時殴るからな」
「神様だぞ!!」
「叫ぶな煩い……早く休ませてくれ」


気持ちよく寝ていたいんだ。


「は〜い。また会おうねっ!」


嫌だ。

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