幼女に転生した俺の保護者が女神な件。
103話 朝から
朝食を食べに食堂にやってくると、あの少年達が椅子に座って周りをキョロキョロとしていた。
「あっ! シンシアちゃんだ!」
1人がシンシアを見つけると、一斉にシンシアの元へ駆け寄ってきてワーワー話し始めた。
「後で一緒に遊ぼうよ!」
「サッカーしようぜ!」
「うっ、えっ」
シンシアが囲まれてあたふたしていると、サラの顔が曇りがかってきた。不味いと思ったシンシアはすぐにその場から逃げようとしたのだが。
「おい皆、シンシアちゃんが困ってるだろ。ゆっくり朝ご飯食べさせてやれよ」
この少年グループのリーダーが、カッコつけた風に椅子に座ったままそう呟いた。
「朝からごめんなシンシアちゃん。俺はアマデオだ」
「アマデオ……ありがとな!」
シンシアは軽くお礼を行って、サラと一緒に奥の個室の部屋に入っていった。
ここの食堂はオープンな場所と個室があり、個室は許可を貰ってからじゃないと入る事ができない。しかしサラのお陰で簡単に入れるようになっている。
個室に入った2人は、朝から何を食べるかメニューを見ながらリラックスした。
「ふぅ〜……助かった」
「あの子達本当に反省してるの?」
サラは女神の癖にまだ怒っているようだ。
いや、俺に関わる話になると女神の事なんて忘れて完全な素が出てくるんだけども。
「そんな事はもういいんだよ。……しかし、なんかここの施設って色々と充実してるよな」
昨日から思っていた事をサラに話した。
「確かに今までの生活とは全然違うくらい充実してるよね」
「やっぱり一流の魔法使いを目指す人達の施設だからそういう技術も発達してるのかもな。よし、俺はこれ食う」
シンシアはのんびりと朝食を取った。
◆◇◆◇◆
「シンシアちゃん朝ご飯食べたら遊んでくれるかな?」
「おい、シンシアちゃんだって都合があるんだからすぐ誘おうとするな。それに俺達だって魔法の練習しないといけないんだぞ」
「とかいってるリーダーもしかしてシンシアちゃん好きなの?」
「なっ!? なわけないだろ!」
アマデオはメロンジュースを一気に飲み干して席を立った。
「い、行くぞ。魔法の練習だ」
「えぇ〜! 待ってくださいよリーダー!!」
そんな少年達の様子を、食堂に来ていた人達はニコニコと笑いながら気持ちの良い朝を迎えていた。
◆◇◆◇◆
「ふぃ〜食った食った!」
お腹をポンポンと叩きながら個室から出ると、食堂に来ている魔法使いを目指す人達がニコニコとこちらを見つめている。
「な、なんだ?」
「シンシアさんおはようございます」
「ん? あっ、セシリータさんおはようございます」
「おはようございま〜す」
──ガシッ
「へ?」
丁度通りかかったセシリータさんが近くにやってくると、シンシアの手をガシッと握った。
「今日お姉ちゃん風邪だから、私がシンシアさんに色々教えますよ!」
セシリャさんでも風邪引くのか。というか久しぶりに風邪という言葉を聞いた気がする。
「サラさんも一緒に来ます?」
「はいっ! 暇なのでっ!」
あれ……サラって管理の仕事があるんじゃ……まあいいか。
「では外に行きましょう。かなり寒いので防寒コート持ってきますね! この前の玄関で待っててください!」
そういってセシリータさんはパタパタとスリッパの音を立てて走っていった。
窓の外を見ると、雪は降っていないようだが木に積もった雪なんかで一面真っ白だ。確かにコートを着た方が良さそうだな。
「外で何するんだろうね〜」
「まあ魔法しかないだろうな。それか普通に体力作りか」
「よし! じゃあ行こっか!」
サラはシンシアを抱き上げて歩き始めた。
こういう風に扱われるのは慣れたもんだ。今更抵抗する気にもならない。
◆◇◆◇◆
しばらく玄関で待っていると、フワフワの防寒コートを持ってきたセシリータさんがパタパタとやってきた。
「それじゃ行きましょうか!」
防寒コートを渡されて広げてみると、フードの部分が毛むくじゃらになっている懐かしいコートだった。中には綿が入っていて、前はファスナーもしっかりあって暖かそうだ。
「凄いな……こういうのって作ってるのか?」
「いえ、街に行って買ってるんです」
街か……って事はこの外にも街があるって事か。
シンシア達はコートを着て玄関の外に出て、改めてその寒さを実感した。風が吹いていないのは幸いだったが、立っているだけで凍りそうだ。
これならセシリャさんが風邪を引くのも納得である。
「へぇ〜ここって結界が張られてるんですね」
「ん? 結界?」
「そうなんです! さすが女神様ですね。ここは結界の外からだと見えないようになってるんです」
確かにうっすらと結界が見えるな。周りから見えない結界なんてあるのなら透明人間が出来るじゃないか。最高だな。
どうやらここでは学ぶ事が沢山ありそうだ。
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