幼女に転生した俺の保護者が女神な件。
81話 顔写真
「おぉぉっ!!」
シンシア今、都市マリーネの中心街にやってきて大興奮していた。
水色を主体とした綺麗な街は建物の屋根が丸く作られており、中心街では陽気な音楽を演奏しているグループがいたりして、とても雰囲気の良い場所だ。
海を方を見れば綺麗な海岸を見ることができて、街の中には興味をそそるお店も沢山あった。
「行く所は沢山あると思いますが、私はこれ以上お邪魔にならないよう海に行かせてもらいます」
コリンさんはシンシア達に頭を下げて海の方へと向かっていった。
「もう少し一緒に居ればよかったのにな」
「そんな事よりシンシアちゃん! あのおっきくて紫っぽい屋根の建物! あれ図書館じゃない?」
サラの言う方向を見ると、確かに他の建物の屋根とは違う色と大きさの建物があった。その横にも同じ建物があるのだが、多分学校だろう。
「じゃあ最初はあそこに行くか」
「行こう!」
2人は綺麗な街並みを見て楽しみながら、図書館へ向かった。
◆◇◆◇◆
図書館の入り口。そこでシンシア達は1人の男性に呼び止められた。
「身分を証明できる物はお持ちですか?」
多分この仮面で怪しまれているのだろう。
「サラ、何かあったっけ」
「ハンターカードくらいかな〜」
「ではハンターカードをお見せください」
仕方なくシンシアはポケットからハンターカードを取り出しサッと渡す。
「っ!」
するとその男性の顔が赤くなった。
なんだ? と思い自分のハンターカードを見て思い出す。自分の顔写真が貼られているのだ。これでは仮面をする意味がない。
「もしかして……有名な方ですか? このSとか……SSは……失礼しました! どうぞお入りください!」
その男性はシンシアのハンターカードを見ただけで、2人を図書館の中に入れてくれた。
これから有名になる予定なのだが、どうやらどこかの有名人だと思われたらしい。
「おぉ〜中も綺麗だな」
図書館の中に入ると、透明感のある装飾と沢山並ぶ本。そしてゆっくりと本を読む為の個室まで。とても広い図書館である。
「人も沢山いるね」
「とりあえず今日はこの図書館で好きな事調べたいから、サラは自由行動でいいよ」
するとサラはシンシアの手を握ってきた。
「私はシンシアちゃんと一緒に行動するよ! こう見えても集中力高いから!」
「そうだと良いんだがな……」
そうして2人は広い図書館の中を歩き回って、魔法関連の分厚い本を3冊持って個室の中に入った。
「部屋も綺麗だな」
「この部屋防音室になってみるみたい」
この部屋の中に入った途端に静かになった。
「じゃあ集中して読めるな」
「よし! 集中しよっと!」
◆◇◆◇◆
凄い。サラが物凄く集中して本を読んでいる。
あれから俺は2冊目の本を読み始めたのだが、その間サラは一切喋らず真面目に本を読んでいる。
前髪を耳にかけてテーブルに肘を付きながら本に顔を近づけて読んでいる。猫背になりそうだが、それでもサラがこれ程までに集中している姿を見るのが初めてシンシアは話しかける事ができなかった。
「ん〜〜〜〜っっっ……ふぅ〜」
サラがやっと一冊を読み終えると、背中をグッと伸ばして背もたれに倒れて楽な体勢になった。
「集中できるんだな」
「あははっ、だって私女神だもん」
今までどれだけ女神らしくない事をしてきたと思っているんだろう。そもそも女神らしさが何なのか分かっているのだろうか。
「シンシアちゃん何か魔法について学べた?」
「まあ色々と魔法陣のアイデアは思い浮かんできたよ」
そうして思い付いた組み合わせや、応用法なんかを自分が以前作った教科書に記入していく。手帳、メモ代わりにこの本を使っているのだ。
「あ、シンシアちゃんごめんね。私ちょっとトイレに行ってくる」
「ああ行ってらっしゃい」
「シンシアちゃんは行かなくて大丈夫?」
「俺はまだ大丈夫」
「分かった。すぐ帰ってくるね」
そういってサラは個室から出ていった。
サラが帰ってくるまで自分も少し休憩しようかと背中を伸ばして、一度仮面を外し上を見上げる。
「っ!?」
「あっ、ごめんなさいっ!」
上から知らない男の子がこちらを覗き込んでいた。すぐに男の子は顔を引っ込めたが、場所的に隣の部屋だ。
まあこういう子供なんてよくいる。そう考えてシンシアは気にすることなくのんびりとしていた。
「ごめん遅くなっちゃった」
「いいよいいよ。それで、本読み終わったら宿でも借りに行こうと思ってるんだけど、良いかな」
「海が見える場所がいいね!」
「買い物ついでに探すか」
2人は再び魔法についての本を、休憩を挟みつつ読み進めていった。
◆◇◆◇◆
本を読み終え図書館を出た2人は、海の近くに丁度良い宿を見つけて入った。丁度残り一部屋しか空いてない人気の宿らしい。
「ハンターカードの提示をお願いします」
「っ……はい……」
シンシアはハンターカードを受け付けのテーブルに置くために、軽くジャンプして置いた。結構高いのだ。
「シンシアさん…………っ!? えっ!? も、もしかして大魔道士の方ですか!?」
「ん、いや、まだ目指してるだけで──」
「なんだとっ!?」
「大魔道士!?」
「あの子供がかっ!?」
たまたま周りにいたハンター達が一斉にシンシアに注目してきた。
「と、とにかくもう手続き終わった?」
「はい……だ、大丈夫です。是非良ければ……この後中心街にあるハンターギルドのギルドマスターに会ってください」
「分かりました。サラ行こう」
シンシアは鍵を貰って、その場から逃げるように部屋に入った。
部屋の中も物凄く綺麗な装飾だらけだったのだが、今のシンシアはかなり疲れて特に感動することもなかった。
「はぁ……ハンターカード見せたら顔写真見られるじゃねぇか……」
「でも一般の人々には見られないから大丈夫だよ」
さっきもう少し逃げるのが遅かったら、きっとハンター達に囲まれて顔写真をバッチリ見られていただろうな。
「綺麗な都市だけど俺にとっては居ずらい場所かもな」
シンシアは一つしかないベッドに横になって、そう呟いた。
「今日は久しぶりに一緒のベッドで眠れそうだね!」
「……そうだな」
シンシアはいつハンターギルドに行くか考えながら、眠くなってきた目を擦って布団を顔まで被った。
「この国が魔物にでも襲われれば大魔道士として活躍できるのに……」
「そ、それはダメだよ。少なくとも被害は出ちゃうんだから」
「知ってる」
どうしたらハンターカードを見せずに大魔道士として有名になるか考えるシンシアだが、この国では厳しそうだ。
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