幼女に転生した俺の保護者が女神な件。

フーミン

74話 キャラ作りと協力者



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「やめろっ! 来るなっっ!!」
「誰か〜っっ!!」


 う……うん……? 何か聞こえたけど、夢?


「シンシア、あそこに山賊に襲われている人がいる。従者は既に殺されて、あとは姫様らしき人と女騎士1人。それに対し山賊は12人いるが。どうする?」
「う〜ん……? ちょっと待って」


 ベネディが詳しく状況説明してくれたが、肝心のその人達がいる場所がここからかなり離れている。
 というのも、今シンシア達がいるのは大きな崖の上。そこから下を見下ろしたところに道があり、その道に馬車と多数の山賊がいる。


「よし、じゃあ俺が山賊達を追い払うから。下に下ろして」
「分かった」


 寝ているサラを起こさないよう、なんの衝撃も無く高い崖から下に飛び降りたベネディ。シンシアは仮面を付けて山賊達の前に転移する。


「なっ、なんだお前っ!!」
「どこから現れた!」
「おい落ち着けお前ら。ガキだ」


 山賊達はすぐにシンシアの小さな身体を見て、脅威ではないと判断したのだろう。武器を構えて一斉に襲いかかってきた。


「大地よ──」


 シンシアは白魔術の短縮させた詠唱を唱え、山賊達の足を地に埋めた。


「何が起きてるっ!」
「足がっ……抜けねぇっ!!」
「水よ 凍てつく竜となり 汝を喰らえ」


 すると、何も無い空間から竜の形をした水が現れ、山賊達を飲み込んだ。
 その竜が通り過ぎ、濡れた地面から足が抜けた山賊達はブルブルと震え始めた。


「寒ぃっ!!」
「か、かえっ、逃げっ、逃げろ!!」
「ひぃぃ〜〜!!!」


 山賊達は凍えたまま山奥へ逃げ帰っていった。


「……うっ……死体だっ……」
「すまない。私達を助けてくれて感謝する。お礼をさせてくれ」


 シンシアが馬車の前で首を切られて死んでいる従者らしき人物を見て吐きそうになっていると、女騎士に呼び止められた。


「ん?」
「っ……な、何者だ?」


 不気味な仮面を見て、女騎士は分かりやすく驚いた。


「通りすがりのハンターだ。王都ドラグーンを目指している」
「っ……女?」


 やはり声で警戒を解かれるか。もう少し怖い雰囲気を出してみても良いかもしれない。


「我は大──」
「こんにちは! もしかしてお2人も王都ドラグーンに向かってるんですか? 私はこの子の保護者のサラで、この子はシンシアちゃん! もし宜しければ、馬車に載せていただけませんか?」


 サラが目を覚ました。終わりだ……。


「あっ、ああ。この方は王都ドラグーンの姫、ヘレン姫だ。我々はこの馬車で王都へ向かっていた所なのだ」
「っ! 王都のお姫様!? じゃ、じゃあこの馬車は?」
「サラ。もういいだろ……これ以上は迷惑になる」
「いや、構わない。助けてもらったお礼に王都まで送る。その子がいれば力強い、是非一緒に来てくれ。馬車の操縦は私がする」


 あぁ……もう完全にサラのせいで俺が小さな女の子だと思われてる。……いや小さな女の子ではあるのだが、もう少し怖がってほしかった。


◆◇◆◇◆


「お姫様気を失ってますけど……」
「山賊達に襲われてビックリしているのでしょう。少ししたら目を覚ましますよ」


 シンシア達を乗せた馬車が出発した。
 ベネディには森に帰らせておいて、しばらく自由にさせている。


「ぅ〜ん……っ! だっ、誰ですか!?  アルバッ! アルバッ!!」
「お姫様、私はここですよ」


 目を覚ました茶髪の美しいお姫様は、シンシア達を見るなり助けを呼び始めた。しかしすぐに護衛の女性が馬車の布から顔を見せると、お姫様は安心したように胸に手を当てた。


「この状況はなんでしょう……」
「御二方は私達を助けてくれた者です。白魔術を要いた見事な魔法で山賊を追い払ってくれました」
「まぁ! という事は、貴女方は味方なっ……ひっ!」


 お姫様がシンシアを見た瞬間、ビクッと身体を震わせて恐怖の顔を見せた。


「あぁ……シンシアといったか。姫様は怖いものが苦手でな、良ければその仮面を取ってはくれないか?」
「……この仮面は……その……」
「ほら外そうよっ!」
「あっこらっ!!」


 サラがシンシアの意思など関係なく、仮面を外してきてシンシアの隠していた素顔が姫様と女騎士に見られる。


「美しい……」
「……とても可愛いですわね」
「このっっ!!」


 シンシアはすぐに仮面を奪い返して顔に付けるも、時既に遅し。素顔を見た二人は何も言わずにこちらを見つめていた。


「……サラ……俺は素顔を隠してるんだから次からはやめてくれっ……それと、サラは俺の旅に付いてきてるんだから俺の指示に従えっ……」
「えぇ〜っ!!!」
「静かにっっ!! じゃないとサラだけ家に帰すからな」
「うっ……分かったよ」


 そんな二人のやり取りを見た姫様は、まるで親に我儘を言う娘を見ているようで微笑ましく思ってしまった。優しい笑顔をシンシアに向けている。


「っ……次我の素顔を見た物はい、命は無い……と思え」
「あらあら。分かりました」
「……」


 くそっ、完全に姫様に心を許されているじゃないか。
 仮面を少しズラしてサラを睨むと、ごめんごめんと両手を合わせて頭を下げた。
 その皆にバレる動きや反応をするからダメなんだと俺は言いたい。


「……ふんっ」


 可愛いと思われない為に頑張って口調を変えているのだが、シンシアはその口調すらも可愛いと思われている事に気づいていない。
 1度素顔を見てしまえばシンシアの全てが可愛く思えてしまうのだ。つまり、1度素顔を見られたシンシアはこの時点で負けである。


「サラさん……でよろしいですか? 私とアルバを助けていただき本当にありがとうございます」
「……っ?」


 サラはシンシアの方を見て、何を言えばいいのかと頭を傾げた。


「今は普通に話していいって!」


 そう耳元で周りに聞こえないように伝える。


「助けたのはシンシアちゃんですよ」
「そうなんですか? 先ほどアルバが申しておりましたが、本当にシンシアさんは魔法が得意なのですね」
「ま、まあな……この仮面は…………いや、何でもない」


 シンシアの頭の中で中二病的なセリフが思い浮かんだが、後悔する前にやめた方が良いと思い発言を取り消した。


「そうか。その仮面は強力な力を抑える為に付けているのだな。仮面を外すとただの魔法でも周りを巻き込んでしまうのだろう?」
「っ……」


 姫様からアルバと呼ばれている女騎士が、シンシアが言おうとしていた事を代わりに言ってきた。


「まあっ! そうだったんですね!? ではその仮面はとても大事な物……」
「そうだったのっ!? シンシアちゃんさっきはごめん!!」


 姫様が信じた。いや、それどころかサラまで信じた。
 おいサラ、それ本気だと思ってるのか?


「へぇ〜……シンシアちゃんの仮面にそんな事が……クラリスさん凄いなぁ〜」


 どうやら本気で信じているらしい。


「そうなのだろう? シンシア殿」
「あっ……ああ。よく分かったな」


 アルバを見るとこちらにウインクをしてきた。
 どうやらシンシアが仮面を外したくない理由が分かって、フォローしてくれているようだ。


「シンシア殿、実は私も昔同じ気持ちでした。私も皆から可愛い可愛いと言われて、髪を短くしたり口調を男らしくしたりしていたんだ」
「そ、そうだったんですか……っだったのか」


 こっそり耳元でアルバの過去を話されて、ビックリして口調が戻ってしまった。


「私も協力しよう。どうしたらいいんだ?」
「と、とにかく俺の可愛い部分を隠したい。顔とか……今後もそういうフォローしてくれるか?」
「任せろ。姫様の護衛を務めているが、悪知恵は働くのだ」


 アルバは悪戯っ子のような笑顔を浮かべて、再び馬の操縦に集中した。
 アルバって元から男らしい所があるのではないのだろうか……。しかし、良い協力者が現れた。このまま王都の中でもサラに邪魔されなければ良いのだがな。


「こら、アルバ。私に隠し事ですか?」
「そんな事ありませんよ。でも姫様は私と隠し事を──」
「っっ〜〜〜! こっ、この方達の前でそういう事は言わないでくださいっ!!」
「?」


 姫様は顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに顔を隠した。


「冗談ですよ」
「もうっ!!」


 一体姫様とアルバにどういう隠し事が……?
 シンシアが気になってアルバにこっそり聞こうとすると、子供にはまだ早いと言われてしまった。
 余計に気になる……。


「もうすぐ王都に到着します」
「あっ! サラさんとシンシアさん! 是非助けてくれたお礼をしたいのでお城まで来てください!」
「やったぁっ! シンシアちゃんいいよねっ!」
「まあいいけど……」


 王都の姫様からのお礼なんて気になるじゃないか。
 シンシアは自分のキャラを忘れて答えた。

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