幼女に転生した俺の保護者が女神な件。

フーミン

29話 いざダンジョンへの準備



「今日は強化旅行の目的であるダンジョンに行きます!」


 俺達の部屋でサラが大きな声を上げた。
 どうやら今日は班ごとにダンジョンに行って、魔物と戦うようだ。


「3人とも眠そうだけど、頑張れる? 私は先生だからダンジョンの中着いていけないんだけど」
「ん〜……ま、なんとかなるだろ」
「シンシアちゃんがそういうなら問題ないね」
「俺が守ってやるからな!!」


 アデルが眠そうなのはいつもの事だが、今日はかなり気合入ってるみたいだな。女に良いとこ見せたい、とでも思ってるのだろうか。


「ダンジョンで実際に魔物と戦って、自分の戦い方を見つける事も大事だからね」
「じゃあ俺は剣術か魔術、どっちか選べって事か」
「うん」


 俺は外の景色を見ながらしばらく考えた。
 剣術の方がカッコイイし、魔力切れの心配がない。筋肉も付くし見た目的に可愛い卒業できそうだ。
 でも、何故か魔術も大事だと思う。剣術だと至近距離で攻撃を食らうことがあるし、もし剣を使えない状況に陥ってしまったら。そう考えると魔術も良い。


「戦ってみないと分からないな」
「それじゃあ私は先生達のとこに行ってくるから、準備が整ったら呼びに来るね」


 サラは部屋から出ていった。
 部屋に残った俺達は、サラが呼びに来るまで特に話すこともなくボンヤリしていた。


「……あっ、そうそう。昨日夜中にトイレ行ったら幽霊見た」
「シンシアちゃんって幽霊信じてるんだ」
「本当に見たのか?」


 幽霊だと断定はできないが、アレは今思い出しても幻覚とかじゃない。
 俺は2人に昨日の事を詳しく説明した。




「足音がない、って事は隠密魔法でも持ってるのかも」
「白い足ってのが謎だな。そんなに白かったのか?」
「ああ、もう真っ白だったよ。絵が描けそうなくらい」


 いや、もしかしたらそこまで白くないのかもしれないが確かに白かった。


「白くて人間の足を持つ……つっても、そんな種族聞いたことないもんな」
「そうね。吸血鬼は実際白くないし……本当に幽霊の可能性も?」


 うっ、今になって寒気がしてきた。
 じゃあ俺はあの時本当の幽霊を見たって事になるのか。確かにこっちの世界には魔法とか魔物とかいるし、幽霊がいても不思議じゃない。


「シンシアちゃん達〜! ホールに集まって〜!」


 幽霊について考えていたらサラが戻ってきた。


「なぁサラ、ちょっと足見せてくれないか?」
「えっ? ……もしかして私の身体に興味が!」
「違うから」


 サラが足を見せてくれたが、昨日の夜見たほどの白さではない。そもそもあの時サラは一緒に寝てたから可能性はないだろう。


「ありがとう」
「好きなだけ見たり触れたりしていいからねっ!」
「早く行こう」


◆◇◆◇◆


「よし、特別クラスの方達も集まったな。これから戦闘訓練をする為にダンジョンに向かう。一般生徒達は特別クラスの班と組んで向かうので足を引っ張らないように」


 何っ? 一般クラスは特別クラスの班に入ってくるのか?
 サラの方に目をやると、すぐにこちらに駆けつけた。


「えっと、シンシアちゃんの班に数十名入ってくるの。それで、その後も何回かに分けてダンジョンに向かうから特別クラスは忙しいかも……大丈夫?」


 特別クラスで……約800人分ダンジョンを行き来しないといけない。という事……? 流石にそれは馬鹿じゃないか?
 いやしかし、100人規模でダンジョンに攻め込んだところで個々の成長効率が悪くなってしまう。


「ってことは、今日一日かけてダンジョン往復?」
「う、うん……ちょっと先生にお願いしてみる」


 そういうとサラは話している先生の元に向かった。
 何をお願いするつもりだ?


「────。よし、分かった。特別クラスの方達がいなくても頑張ってみる! という奴は手を挙げてくれ!」


 するとそれなりの数の手が上がった。
 自分の成長に真面目な人は、特別クラスのような心強い味方がいるとスリルが無いと考えているのだろう。
 他には単純に特別クラスが嫌いな者。ただ挑戦してみたい者くらいだ。


「これなら早めに終われそうだな」
「そうね。私達の班にはどのくらい人が来るのかな」


 手を挙げた生徒の数を数え終えた先生は、手元の紙を見て色々と考え始めた。先生も大変だな。
 しばらくすると、先生同士の話がまとまったのかこちらを向いた。


「よし! とりあえず特別クラスのどこの班と一緒に行きたいか確認する! それぞれの班の場所に集まれ!」


 そういうと一般クラスの生徒達はゾロゾロと動き始めた。


◆◇◆◇◆


「多過ぎないか」


 かなりの数の生徒が俺達の班の方にやってきた。


「シンシアさんだ〜!」
「可愛い〜!」
「こっちの方が優しそうだもんな!」
「お前もこっち来いよ!」


 なるほど。どうやら特別クラスの殆どが怖いという印象を持っている中で、俺が優しいという印象が広まっているせいでこちらが人気なのか。


「シンシアちゃん目当て、ね」
「目当てって言い方はよせ」


 そりゃまあ、俺を見て可愛いと言う男と女がいる。俺目当てというのも間違ってはいない。


「じゃあ今から人数調整するからな!」
「「えぇ〜!!?」」


 人数調整する、と言った先生に対し生徒達のブーイングが集中砲火された。


「人数調整しないと特別クラスの方が大変だろ! 特別クラスの方は往復するんだ。我が儘言うな!」


 これは……今日はかなり忙しくなりそうだな。




 それから全生徒に剣を渡され、他にも色々と準備をしていよいよダンジョンへ向かう事になった。


「特別クラスの方々は先生達に着いてきてください。一般クラスは特別クラスについてくるように!」


◆◇◆◇◆


 そうしてダンジョンに到着した訳だが、見た目的にただの洞窟。
 それに重い剣を初めて持って歩いている為、体力の消耗がそれなりに激しい。


「はぁ〜……疲れた」


 その場にしゃがみ込むと、一般クラスの方からコソコソと「可愛い」なんかの声が聞こえてきた。


「頑張るか」


 可愛いと言われない為にもなんとか立ち上がって気合を入れる。がしかし、立ち上がっただけなのにまた 「可愛い」 の声。


「……お前ら可愛いって言うな!」
「「キャ〜!」」
「声も素敵!!」
「ツンデレ……!」


 くそっ、俺は何をしても可愛いと言われ続けてしまうのか。

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