幼女に転生した俺の保護者が女神な件。

フーミン

24話 観光地区へ



「ん……あれっ……」


 随分と眠れたようだが、誰にも起こされていない事に気づいてすぐに部屋を見渡す。


「あ、シンシアちゃんおはよう。無理に起こすのも悪いかなと思って」


 部屋にはサラが座っていた。


「どのくらい寝てた……?」
「安心して。時間を止めてるから外に出ればすぐアイリちゃんとアデル君に追いつけるよ」
「そっか……」


 凄いなぁ、時間を止めれるのか。じゃあまだ寝てても大丈夫かな。
 再び目を瞑って布団に潜ると、サラが近づいてくる音がした。


「体調悪いの?」


 と、心配そうな顔で額を触ってきた。


「いやただ眠いだけ」


 サラはちょっとした事で心配し過ぎだ。これ以上心配かけない為にもさっさと起きた方がいいか。
 身体を起こして目を擦ると、サラは俺の寝癖を手で整えてくれた。


「ありがとう」
「最近シンシアちゃん素直になったね!」
「最初から素直だよ。もう行こうと思うけどサラは何かする事とかあるのか?」


 そういうとサラは何かを思い出すように顎に手を当てた。


「ん〜……あっ、生徒達と一緒に行動して安全を守るって事しないといけない。私シンシアちゃん達に着いていっていい?」


 別に断る理由も無いし、それにサラが居てくれた方が心強いから良いだろう。


「良いよ。じゃあ行こう」


 最後に大きく欠伸をした後、外に行く準備をして旅館を出た。


◆◇◆◇◆


「お〜い! アイリちゃん達〜!」


 少し離れた所を歩いている2人にサラが手を振って呼び止めると、2人はこちらに気づいてすぐに戻ってきた。


「シンシアちゃんおはよう!」
「サラ先生も着いてくるのか?」
「シンシアちゃんを守る為にね!」


 あくまでも俺を守る為、か。サラはブレないな。
 そういや今から何するんだっけ。


「観光とお土産とかを買うんだっけ?」
「そうだよ。ここの国で今私達がいる方はお店が沢山ある地区なんだけど、自然が沢山ある地区も少し離れたところにあるみたい」


 太陽の位置的にまだまだ時間はありそうだし、しっかり観光することができそうだ。


「位置的に観光が先か? それともお土産買ってから?」


 アデルがそう聞くと、アイリはサラを見た。


「サラ先生の転移で観光地まで行こうよ。そうすれば移動時間は無駄にならないと思う」
「アイリちゃん頭良いね! じゃあ早速転移で自然がある方の地区に行こっか!」


 俺達はあっという間に別の場所へと移動した。




「おぉ〜川だ」


 周りが木々に囲まれて、整備された道の横には流れの早い大きな川が流れている。ボコボコと出た石に当たって跳ねる水の音が心を落ち着かせる。


「魚とかいんのか?」
「こんな流れの早い所にいるわけないだろ」


 知らないけどな。


「ここから道のりに進んだら川を渡る橋があるみたいだよ」


 サラは持ってきた観光マップを見てそういった。するとアイリもマップを開いて現在地を確認する。


「橋を渡って真っ直ぐ進むと花畑があるんだって、とりあえずそこに行ってみる?」
「観光目的だし良いんじゃないか?」


 こっちの世界の花はどういう色をしているんだろうな。今まで緑の雑草くらいしか見たことなかったからとても気になる。


「な、なぁ! 川の水触ってみてもいいか!?」


 アデルが馬鹿な事を言い出した。


「もし足滑って川に落ちたら流されるぞ」
「そこの看板に"川には入らないでください"って書かれてるでしょ」
「あ、そうなのか」


 でもこの川冷たそうだな。


「流れの弱いところなら入れるかもな。探しながら観光しよう」
「よっしゃ!」


 俺達はマップの通りに川を渡るための橋へ向かった。


「シンシアちゃん、おてて繋ぐよ」
「……はいはい」


 相変わらずサラと手を繋いでだが……。


◆◇◆◇◆


 大きな木製の橋の上にやってきた俺達は、そこから下を流れる川を見下ろしていた。勿論俺は身長が足りない為、アイリに抱っこをしてもらいながらだけど。


「本物の川だね〜」
「ま、まさかアイリって川すら見たことなかったのか?」


 いくら都会っ子だからって川くらいは見たことあるだろう。


「全然。大雨の時に出来た川は見たことあるけど、普段から流れてる川は初めて見るよ」
「そうなのか」


 それは逆に凄いな。人生で1度も川を見ずに生きろって言われても難しい。


「ここはさっきより流れは遅いみたいだよ!」


 でも誰よりも川を見たことがあるであろう女神のサラが、この中で一番はしゃいでるのはおかしい。


「こんにちは〜可愛い娘さんですね〜!」


 と、川を見下ろしていると後ろから話しかけられた。振り向くと、綺麗な長い黒髪の女性が立っていた。こっちの世界では珍しい黒髪。そして黒いローブのような服を着ていてとてもクールだ。


「そう! 可愛いでしょ? シンシアって言うんです!」
「おいサラ」


 ったく、サラは俺が褒められるとすぐ乗せられるんだから大変だ。


「へぇ〜シンシアちゃん、こんにちは」
「こっ……こんにちは……」


 こんな俺好みの女性を前に、俺はなんで抱っこされたままなんだ……。恥ずかしい。目を見れない。


「うふふ、もしかして観光ですか?」


 綺麗な女性は俺の頬をプニプニ触りながらサラに聞いた。


「そうなんです。この先のお花畑に行こうと思ってて」
「だったら私が色々と案内してあげるわ」
「いいんですか!? ではよろしくお願いします! シンシアちゃん好きなだけ撫でていいですよ!」
「やったね」


 くっ……この女性に撫でられるのは嫌じゃない……。こんなクールな見た目で綺麗な人なのに、拳握って 「やったね」 なんて……可愛すぎる。


「私クラリスっていうの。よろしくね」


 クラリスさん可愛いです。是非俺の保護者に変わってください。

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