幼女に転生した俺の保護者が女神な件。
12話 オシャレなんて嫌いだ
「シンシアちゃ〜ん! 今日は休みだから一緒におでかけしよ?」
「ん〜……まだ寝させて……」
「も〜」
サラはいつでもテンションが高い。というより俺の前だとどうしてもテンションが高くなるようで、普段の教師としての仕事は真面目しているらしい。女神なのに。
「ほっぺぷにぷに〜」
「ん〜〜〜……やめろぉ〜……」
なんでこの女神はこんなにデレデレなんだっけ……。最近あんまり一緒に居れる時間が少ないから、折角の休みだからって流石に俺の体力が持たない。
「今日はシンシアちゃんのお洋服とか買いに行こうと思うの」
「服なんて今持ってるもんで十分足りてるよ……」
「えぇ〜? 女の子なんだからオシャレしないと」
オシャレとか興味無いんだよなぁ〜……そもそもオシャレってなんの意味があるんだ? 見た目より機能性を重視しないのはこの街が平和だからだろうか。
「平和だな」
「私がこの国を結界で守ってるからだね」
ふぅ〜ん結界……待て。
「まさか常に結界を貼ってるのか?」
「そうだよ?」
まあ女神なら広範囲に常に結界を貼るなんて簡単か……アイリと一緒に図書室で身につけた知識が役立つ時は来るのだろうか。
常識外なサラの力に頭を抱えながら身体を起こすと、ウキウキした様子のサラが何やらピンク色の何かを持ってこちら見つめていた。
「ま、待て……それで何をする気だ?」
「ふっふ〜ん、買いに行く為にオシャレ!」
◆◇◆◇◆
「可愛いぃぃいいいいっっ!!!! んはぁぁぁぁぁぁあああっっっっ!!」
「……」
ピンク色でフリルの付いたワンピースを着せられ、髪の毛はツインテールにされた俺のプライドはズタボロにされていた。
「ね、ねぇっ! ちょっとそれでサラお姉ちゃん大好きって言って!」
「なんで……」
「お願い!」
「サ、サラお姉ちゃん……大好き」
「んほぉぉぉぉぉぉおおおおおおっっっ!!!!!」
それからサラはしばらく興奮を抑えきれないようで、外に出てからも俺を人形のように抱きしめながら服屋へと向かった。
俺はとにかく、この恥ずかしい姿を同じ学園の奴らに見られない事を神に願っていた。この目の前にいる女神にはそんな願い届いていないのだろうけど。
それなりに大きな服屋に入ると、3人の女性店員がすぐさま俺の周りを囲んで色んな服をオススメしてきた。
「この可愛いスカート似合うと思いますよ!」
「ボーイッシュなこの服も似合いそうですね」
「セクシーな部分も出してみますか!」
「はいっ! 全部お願いします!!」
計4人の大人に着せ替え人形にされた俺は、人生で最も「可愛い」と言われる瞬間を迎えている。
他の女性客も集まってきて、俺が新たな服装に着替えさせられるのをまだかまだかと待ちわび、更衣室から出てくると甲高い声が店内に響き渡る。
折角の休みのはずがいつも以上に疲労感を感じるのだが、俺はいつ開放されるのだろうか。
◆◇◆◇◆
「「お買い上げありがとうございましたっ!!」」
コスプレかと思うような服を両手いっぱいに抱えるサラ。俺もその服の中に入り込まされ、まるでこれが一つのファッションのように周りから注目を集めている。
「この後どうするんだ?」
「一旦家に荷物を置いた後に昼食食べに行きましょ。たまには外で食べるのもいいと思うの」
「俺は着替えるのか?」
「勿論!!」
当たり前だと言わんばかりのドヤ顔で答えるサラは、もう俺をどう変身させるかという事しか頭にないようだ。
神様、どうか今日だけは同じ学園の生徒全員家に引きこもっててくれ! 俺は今から潜伏ミッションを開始する!
家に帰ってきてすぐ、逃げようとする俺の服をあっという間に脱がせられてパンツ一丁にさせられた。
「今日はこのお姫様風のコーデで行こうね」
笑顔で服を選んだサラを断ることなんてできず、俺は無表情のまま可愛くなっていく自分の姿を眺めていた。
本当にお姫様風の服を着せられ、更には日傘なんて持たされて完全にサラのオモチャだ。
「完璧ね!」
「そうですか……」
「それじゃあ行きましょうお姫様っ?」
どうやら本当にこの姿のまま外に出なきゃいけないようだ。
外に出ると、やはり注目の的になった。周囲に人集りが出来て 「どこかの国の姫様か?」 なんて言われる始末。
こんなに人が集まってしまえば同じ学園の奴らに出会うのは確実だろう。とにかく顔を見られないよう下を向いて、日傘で死角を作ろう。
「かぁわぃ〜……」
そうですか。
「アレは天使なのか!?」
そうだな……今の俺はサラの天使的な何かだ。
「あれっ!? サラ先生とシンシアちゃん!?」
んっ……この声どこかで聞き覚えが。ま、まさか……いきなり出会ってしまうとは……。
「あ〜アイリちゃん! 奇遇だね!」
「先生! この可愛いのシンシアちゃんですよね!?」
「ち、違います……」
「そうだよ! シンシアちゃんったら照れちゃって顔を上げてくれないの」
クソがぁぁぁぁあっっ!!!
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