手違いで勝手に転生させられたので、女神からチート能力を盗んでハーレムを形成してやりました

如月勇十

第四十話 神の力

 念のために俺もここまで転移してきたが、どうやら防壁だけで十分だったみたいだな。
 ただの身体強化をしただけの俺の拳でまさかここまで吹き飛ぶとは……。ざまぁねぇ。


「ゴホッ!! ゴホッ!!」


 もしかしたらそのままくたばっていたのではないかと心配したが、どうにか生きていてくれたらしい。
 今にも死にそうな、文字どおり満身創痍となって、奴はなお、立ち上がり、俺に向かう。
 だが、吐血し、左腕を折り、身体中を強打した奴は、すぐには戦闘を再開できないだろう。


「栄一! 来んのが遅いわよ!」
「お前、それが命を助けてもらった者のセリフか!?」


 と、そこで、ようやく事態を理解したらしいアミラがいつも通り・・・・・噛み付いてきた。
 さっきまで死にそう顔をしていたというのに、立ち直りが早すぎはしないか?


「それで、どうやってやつの居場所を突き止めたのよ? 私の結界が破られてから来たにしては速すぎよね?」
「あぁ」


 やはり聞かれると思っていたが、その前にもっと大事なことがあるだろう。


「それよりお前、その傷は大丈夫なのか?」
「これくらい、中級の治癒魔法で一発よ」


『ヒーリング』
 詠唱もなしに、アミラがそう言うと、途端に傷跡が塞がっていく。


「おぉ……!! でも、無事で良かったよ!」


 思わずその不思議な現象に俺は感嘆を漏らした。
 確か俺が帝国のスパイにやられた時、アミラが俺を治癒魔法で治療してくれていたと思うが、あの時は意識がしっかりとしていなかったし、あまり覚えていないのだ。なので実質、治癒魔法を見るのはこれが初めてになる。
 それにしても帝国の国定魔術師というのは一体どれほどのバリエーションの魔法を使えるのだろうか。これが終わったら聞いてみよう。


「……」


 と、そこで、怪我も治癒して良くなったはずのアミラが、どこかバツの悪そうな顔をしていた。


「どうした? やっぱりさっきの傷がまだ——」
「違うわ……。いや、でもそうね。あんたには言っておかないとね。仲間なんだし」
「ん?」


 そして、アミラの軍人時代の話が語られる——。


 昔、アミラの軍内での権力が最も高かった頃、彼女には1人の有能な部下がいたらしい。
 有能といっても、アミラからすれば、またまだ未弱なところも多く、彼女は日々、上官として彼に指導をしていたのだが、彼には、目標を絶対達成しようという信念と、それに見合った努力をする能力があり、アミラもそれを見込んでいた。


 普通、アミラの同僚、ないし同輩は、全員、彼女よりも力が劣っていて、年下の女の子に負けているという意識もあったのだろうが、アミラを恐怖し、憎むものはいても、彼女を女の子として心配する人など、皆無だったのだ。


 だが、彼だけは違った。
 アミラが傷つきそうになれば全力でかばい、滅多にないことだがもし、実際に傷付いたもんなら全力で心配したらしい。


 言うなれば、唯一、アミラを女の子として認識していた存在だ。
 当然、アミラも徐々に彼には心を開いていた。


 しかし、そんな時にある事件が起きる。


 事件というには些細な出来事すぎるとアミラは言っていたが、アミラの〝心〟には大きな影響を与えた話が。
 きっかけなどというものもなく、なるべくして起こったもの。


 どうして自分をかばってくれるのか。


 アミラにとっても強敵と言える使い手と対峙した際、アミラをボロボロになって守り抜いた彼に、アミラはその疑問を解決せずにはいられなくなったのだ。
 そして彼は言う。


『自分が強くなるためです! アミラ隊長の技術を盗んで、強くならねばならぬのです! そのためには、隊長には長生きして頂かないと!」


 彼は大真面目な顔をしてそう伝えたらしい。
 そこでアミラの中で何かが崩れた。


「——結局は、私のために私を助けてくれていたわけじゃなくて、私を女の子として認識していたわけでもなくて、ただただ、自分の利益のために動いていただけなのよ。まぁ、人間なんだしそりゃあそうよね」
「……」


 俺は言葉が出てこなかった。


「それでその後、彼は戦場で命を落としたわ。それも、もちろん私を助けるわけではなく、それどころか、帝国を裏切って敵の魔術師と共闘を始めたもんだから、私が殺したの」
「アミラ、安心しろ。俺は俺のためにアミラを仲間として助けるんだ」


 きっとアミラがさっきあんな顔をしたのも、俺が消えてしまわないか、アミラを裏切らないか、心配しているのだろう。
 だが、それなら心配ご無用だ。


 俺のその言葉に、アミラは抜けた声を発した。


「は?」
「俺はアミラがいなくなったら悲しいからアミラを助けるんだ。アミラが辛いと俺も辛いから、アミラを助けるんだ。だから安心しろ。俺はアミラを裏切らない」
「…………」


 まるでやかんが急に沸騰したかのように、アミラは顔を真っ赤に染める。


「な、何それ!? ばっかじゃないの!? あんた、そこは嘘でも、『お前のためにお前を守る』くらい言ったらどうなのよ?!」
「いや、俺は……」


 そこで、今まで顔を伏せていたアミラとふと目線が交わり、そして、その気恥ずかしさに、互いに顔をそらしてしまった。


「……で、結局。透明化したやつの居場所をどうやって見つけたの?」


 アミラは咳払いを一つし、そう俺に問うた。
 まぁこの件に関しては、今の俺が言えるのはこれくらいで、結局はアミラの気持ち次第なのだから、これ位以上は任せるしかないのだ。
 俺はそう考え、気持ちを切り替える。


「やつの居場所を知るのに使ったのは、ただの転移魔法だよ」
「は?」


 アミラはさらに眉を上へと上げた。
 確かにこれでは点と点が繋がらないだろうと、ヒントを考える。
 念のために断っておくが、別に俺はアミラに意地悪をしているわけではなく、いつも簡単に答えを教えてしまうため、たまには自分で考えさせようとしているだけなのだ。
 俺におんぶに抱っこじゃ、俺がいない時に困るだろう。


「俺が女神のいる天界へと転移した時、そしてその前に転移の実験を何度かしていた時、転移先は指輪の近くの広い空間が自動的に選ばれただろう?」
「えぇ。私はあっちへは行ってはないけれど、確かにそう言っていたわね」
「だから俺とフィオーネは、女神のいた風呂場ではなく、ましてや脱衣所や廊下でもなく、廊下を挟んでその隣に面していた広めな部屋に転移した」
「でも、女神の持っていた転移先を自由に選べる魔法具のおかげで、完全にどこにでも飛べるってわけではないけど、遠目や水晶玉の能力によって、行ったことのあるところと、目で見えるところへは自由に飛べるようになったんじゃなかった?」
「あぁ、その通りだ」


 さらに頭上にクエスチョンマークをいくつか増やしたアミラに、再度問われる前に俺はヒントを増やす。


「だが、それも、どこにでも転移できると言うわけではない。例えば、当たり前ではあるが、地面や壁、物や人があるところには飛べない。正確に言うと、そこを転移先として指定しようとすると〝失敗〟する。転移魔法の杖でも指輪同様に、転移先はある程度、自動的に選別されていて——」
「……っ!」


 驚いたようなそのアミラのリアクションに、ようやくわかったようだなと思ったが、そのリアクションは違うものへ向けられていた。
 そう、先ほどまでそこで、生まれたての子鹿のように必死にもがいていた金髪タキシードが姿を消したのだ。


「逃げたわけでは……ないか。意外と良い根性をしてやがる」


 アミラがやつの消失に気がついて6秒後、やつは再び姿を表す。
 俺の裏拳で吹き飛ばされる形で。


「ガッ!?」


 今度は手加減の要領を得ていたので、やつが数度の回転の後に、十メートルほど後ろで倒れこむ程度の衝撃で済んだ。
 だが、自らこちらに接触しに来てくれるとは。手間が省けたな。


「…………ふ、ふざけやがって。なぜてめぇには俺様が見える……?」


 さすがのやつも、二回も吹き飛ばされれば、立ち上がる力も気力も失ったようで、地面に這いつくばっている。
 これでようやく、腰を下ろして会話ができる、と俺はひとまず安堵した。


「しょうがないから冥土の土産に教えてやろう——って、死亡フラグじゃねーか! まぁ、やつが死ぬことは確定・・しているしもう良いか」
「っけ!! 抜かしてんじゃねーぞ! 俺様はまだ負けてねぇ……」


 威勢だけは良い金髪タキシードは、その言葉とは裏腹に、再度、血反吐を吐いた。
 だがこれも、アミラに傷つけた代償にしては安い方だ。


神代遺物アーティファクトを使ってお前の居場所を突き詰めたのさ。と言っても、それは転移用の魔法で、そのためのものじゃなかったもんだから、数千回とその魔法の発動を繰り返したんだがな。転移先に障害物があるかどうか、どうやって識別しているかわからないが、それを識別して、障害物、つまりお前がいたら、転移の魔法が発動できない。そんな簡単な理屈さ。例え目で見えなくても、魔力を感じなくても、それは正確に発動するのは、お前が消えた瞬間に時差なく発動したから確認済み。しかし、一度転移先を指定した場所は、念じたらすぐにその場所を調査できるから、苦労すんのは最初だけだったとはいえ、いやいや、全く、骨が折れたよ。まぁ、お前のお得意の気配操作魔法も、神の目は誤魔化せないってことだな」
「…………」


 最初は、信じられないと言ったような顔を見せていたが、俺が話終わる時には、やつの意識はどこか他のところに向いていた。
 そしてやつが自身の気持ちと頭を整理するには十分の時間が流れたあと、突然にやつは笑い始める。


「かっかっかっかっか!」

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